藤浪晋太郎「開幕2軍」の深刻すぎる理由 「ブルペンでは目を見張る投球。でも打者が立つと…」 DeNAが誇るAI解析でも制球難は改善せず
長年の課題を修正するのは難しい。その現実を突きつけられているのが、先発ローテーションを勝ち取れず、開幕をファームで迎えることが決まった横浜DeNAベイスターズの藤浪晋太郎だ。DeNAは自慢のAI活用による再生に自信を持っていたものの、現実は成功しているとは言い難い。
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本人が一番悩んでいる
藤浪は、オープン戦初登板となった2月22日の楽天戦(宜野湾)では3回を投げて無四球1失点に抑えるなど順調な仕上がりに見えた。が、3月5日の中日戦(横浜)で一転、2回を投げて4四球1失点の乱調。2イニングス目は先頭の鵜飼航丞に150キロの直球が抜けて左肘付近に死球を与えると、その後も2球連続暴投と制球が定まらず球場は騒然とした雰囲気に。ストライクゾーンから外れる球が多く、当初予定の3イニングを投げ切れずに降板した。先発登板した11日の広島戦(横浜)も左打者9人を並べた相手打線に対し、直球の制球が定まらない。初回に3安打と1四球で2点を先制されると、2回以降はカットボール主体の投球で粘ったが、4回に2死満塁のピンチを作って降板した。

「広島戦は140キロ台後半の直球が多く、出力を抑えて丁寧に投げようという意識が見られましたが、それでも制球が安定していたとは言えなかった。春季キャンプのブルペンでは目を見張るほど状態が良かったんです。腕が振れていてストライクゾーンに力強い直球を投げていたし、カットボールやスプリットの精度も高かった。でも打者が立つと良い球を投げる再現性が大きく下がってしまう。本人が一番悩んでいると思いますけどね」(DeNAを取材するスポーツ紙記者)
メジャーでも速い部類の速球
ファームに落ちた後もピリッとしない。18日のイースタンリーグ・西武戦(横須賀)で先発して3回2安打2失点。6三振を奪ったが、4四死球と制球が定まらずマウンド上で首をかしげる姿が見られた。
結局、オープン戦は8回3分の2を投げて7四死球、防御率は4.15。ファームでも3回4四死球、防御率3.00に終わった。
阪神で高卒1年目から3年連続2ケタ勝利をマークした藤浪だが、17年から投球回数が100イニングをクリアしたシーズンが一度もない。大きな原因は制球難。直球が右打者の方向に抜けてしまうため、阪神の首脳陣や春季キャンプで臨時コーチを務めた球界OBたちが改善に向けて助言を送ったが、状況は好転しなかった。メジャー挑戦した23年はアスレチックス、オリオールズで計64試合登板したが、24年はメッツでメジャー登板なしに。
「常時160キロ近い直球はメジャーでも速い部類に入る。投手コーチは『フジはストライクゾーンに投げれば連打はなかなか出ない』と力説していました。制球難で悩んでいる投手はマイナーで少なくありません。各球団の指導プログラムで改善する投手がいますが、藤浪の場合は思うようにいかなかった。メジャー移籍1年目で凄い投球を見せていた時期がありましたけどね。つかみかけたけど、モノにできなかった」(米国で取材する通信員)
これまでの投げ方が体に染みついている
翌25年はマリナーズとマイナー契約を結んだが、メジャー昇格の機会がないまま6月中旬に自由契約に。このタイミングで熱烈なラブコールを送ったのがDeNAだった。球団の“売り”であるAIやメカニクスのデータ班がサポートすることで制球力が改善し、もう一度輝きを取り戻せると判断。3年ぶりの日本球界復帰が話題になったが、6試合登板で1勝0敗、防御率4.09に終わった。先発で起用され、シーズン終盤は救援に配置転換されたため調整が難しい部分はあっただろう。だが、22イニングで11四死球と制球力が改善されたとは言えない。先発ローテーション入りを狙った今年もオープン戦に登板してストライクゾーンで勝負できていない。
阪神時代にチームメートだった球界OBは「AIを駆使して制球力が改善されるとしても時間はかかると思います。これまでの投げ方が体に染みついていますし、意識を変えるのは容易ではない。阪神も科学的な見地からフォーム修正に取り組んでいましたし、メジャーだって同じように投球のメカニズムを分析していたでしょうから」と指摘する。
メカニックの力だけで簡単に改善できるほど、藤浪の制球難は簡単で単純な課題ではなかったようだ。
ビシエドの成功
もっとも、これをもってAIを駆使して選手の能力を伸ばすDeNAの取り組みが上手くいっていないと結論づけるのは早計だ。例えば、竹田祐、吉野光樹両投手はデータを分析する球団スタッフやコーチの助言を基にトレーニングに取り組み、球速が大幅にアップしている。また、藤浪と同様に昨年のシーズン途中に加入したダヤン・ビシエドはオープン戦で30打数11安打、打率.367、2本塁打、10打点の好成績を収めた。14日のソフトバンク戦(横浜)では同点の7回2死一塁で代打起用されると、オスナの内角高めに食い込む151キロ直球を叩き込んだ。
「中日時代は苦手なコースだったので驚きました。ビシエドはDeNAに入団してスイング軌道が明らかに変わりました。中日では立浪和義前監督に打撃スタイルの変更を求められて出場機会が激減しましたが、移籍して状況が好転している。持ち味のコンタクト能力を維持しつつ、打球の角度を上げるスイングに変化して長打が増えている。体を絞った本人の努力は当然ありますが、球団サイドの分析を基に打撃の修正に取り組んだことが好調の要因になっていると思います」(他球団のスコアラー)
復活してもらわなければ困る
ビシエドと藤浪は現時点で明暗が分かれる形になっているが、まだシーズンは始まっていない。DeNAの先発陣を見ると、シーズンを通じて計算できる投手は東克樹しかいない。阪神から移籍したジョン・デュプランティエは移籍1年目の昨年にシーズン制覇の立役者となったが、後半戦は故障で投げられない時期が長かった。リリーバーから先発転向した入江大生も故障が多いのがネックだ。先発陣の層が厚いとは言えないチーム事情で藤浪は復活してもらわなければ困る。球団のAI解析で判明した課題と向き合い、制球力の改善に取り組んでいる日々が報われる時がくるか。
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デイリー新潮編集部
