【玉ノ井親方 視点】綱獲り狙う安青錦が早くも2敗目…率直に言って、この黒星は痛い
◇大相撲春場所4日目 ○美ノ海士(寄り倒し)安青錦● ○高安(寄り切り)琴桜● ○藤ノ川(はたき込み)豊昇龍●(2026年3月11日 エディオンアリーナ大阪)
大の里が休場し、横綱の看板が一つ欠けた4日目は、波乱の1日となった。まさに“荒れる春場所”である。
綱獲りを狙う安青錦が序盤で早くも2敗目を喫した。率直に言って、この黒星は痛い。美ノ海が良い相撲を取ったことは間違いないが、大関もいつもの動きではなかった。今場所は少し体が大きくなった。体重を増やして重さを出そうとしているのかもしれない。ただ、私も経験があるが、体を大きくすると、その分、動作が重くなり、反応が悪くなるときがある。
この日は、美ノ海に横からいなされた時に脇が空いてしまう場面があった。低い姿勢を保って上体を起こさないのが大関の持ち味だが、美ノ海に下から攻められ最後は右を上げられて中に入られた。今までの大関には見られない動きだったので、少し心配になる相撲内容だった。
豊昇龍は完全に作戦を誤った。立ち合いで張って、差しにいったが、藤ノ川のようにどんどん動いてくる相手には、自分から先手々々で攻めいかないと駄目。まわしにこだわるのではなく、突き放して前に出て勝負を決めるくらいの気持ちで取った方がまだ良かった。初挑戦の相手に豊昇龍らしい気迫満点の相撲で“どうだ”といわんばかりの取り口を見せてほしかった。逆に挑戦者の引き立て役になってしまったのは残念だった。
物足りない横綱、大関陣とは対照的に36歳のベテラン高安が良い相撲を見せてくれた。琴桜に下手を取られたものの、腰を振ってまわしを切って、出し投げで崩して終始主導権を握って攻めた。これで初日から4連勝。今場所は、いつもにも増して状態が良さそうだ。経験と実力を兼ね備えた高安のような力士が頑張ってくれると、場所が盛り上がる。今後の相撲に期待したい。
話は大の里に戻るが、肩鎖関節脱臼はしっかり治さないと長引く。初場所は十分に治り切っていない状態で出てきて、悪化させた可能性もある。いくら立ち合いの当たりが強い大の里といえども、左からのおっつけができないと、やはり右手だけでは相撲にならない。
横綱になって、対戦相手も今まで以上に研究してくるし、簡単には自分の相撲を取らせてもらえなくなる。しかも横綱として負けるわけにはいかないという重圧も大きくなる。
早く戻ってきたいという気持ちはよく分かるが、まだ若いのだから、ちゃんと治して戻ってきても、遠回りした遅れは十分に取り戻せる。(元大関・栃東)
