“外国人労働者”と向き合う カンボジア人ドライバーが日本の物流を救う:ガイアの夜明け
人手不足の解決策として期待されている外国人労働者は257万人を超え、過去最高に。製造業から農業、介護の現場まで、人手不足に悩む多くの産業で欠かせない存在になっている。
そんななか、物流業界でも「2024年問題」による深刻な人手不足に対応するため、外国人の在留資格「特定技能1号」に自動車運送業を追加。外国人ドライバーを最大2万4500人受け入れる方針となった。
外国人ドライバーは、日本の物流を守る救世主となるか。カンボジアでドライバーを育成し、日本での担い手を増やす、新たな取り組みを取材。教育にあたる日本人と、家族を支えるために来日したカンボジアの教習生。そして、受け入れる日本企業に密着した。
日本の物流を救う!外国人ドライバーを現地で発掘

東南アジアのカンボジア。人口は約1700万人で、平均年齢は約27歳と若い。
2025年10月、小林良介さん(46)は首都・プノンペンから100kmほど離れた田舎町を訪れ、次々と飛び込み営業を行っていた。
「日本でドライバーをしたい人を探している。給料は月2000ドル(約30万円)くらい」。
カンボジアの平均月収の7倍ほどの額を売り文句に、トラックドライバー募集のビラを配る小林さん。
「日本の運送業界でドライバー不足が深刻になっているので、カンボジアでドライバーを育成して、日本で働いてもらう。カンボジアは、日本の支援で道路交通法などがつくられているので、ルールも近い。教育すれば、必ず日本でドライバーとして戦力になる」。
小林さんは、福岡で自動車学校を運営する「ミナミホールディングス」の社員。
ミナミホールディングスは、少子化で日本人の教習生が減るなか、外国人ドライバーを育てる事業に乗り出していた。

プノンペンの街中にはミナミホールディングスがつくった自動車学校「ミナミカンボジア」があり、小林さんはその社長を任されている。
学校では、カンボジア人に日本語と日本の交通ルールを4カ月以上かけて教育する。学費は、渡航や就労にかかる手続きを含め3000ドル(約47万円)から。

「外国人ドライバーの力を借りないと、日本の物流は回っていかない。我々が培ってきた教育のノウハウをカンボジアの人たちに提供することで、日本を助けてもらえる」(小林さん)。
今、日本で働く外国人の数が急増し、2025年に初めて257万人を突破した。
一方、トラックドライバーは、2030年度には約21万人が不足する見通し(出所:NX総合研究所)で、2024年、外国人が働ける資格「特定技能1号」の対象にドライバー職が加えられた。

熊本・宇城市にある運送業者「アップライン」は深刻な人手不足に陥っていた。
そこに、4カ月前、2人の新人ドライバーが入社していた。カンボジア人のホール・ヴィリャックさん(38)とスン・キゴウンさん(27)。2人は、小林さんがプノンペンの自動車学校で育成したカンボジア人ドライバーの1期生だ。すでに大きな戦力となっている。
小林さんは「彼らの働きぶりや運転を見てもらって、『外国人だから』ということがないようになればいい」と話す。

小林さんは、カンボジアと日本を往復する日々を送っている。
10月中旬、プノンペンの郊外にある住宅街を案内し、「貧しい人たちの多いエリア。4畳半ぐらいの部屋に、4、5人が雑魚寝して住んでいる」と現状を伝える。
カンボジアの貧困率は徐々に減少しているが、国民の多くは、教育や医療にかけるお金が
足りていない。
「日本でドライバーとして働くことで、所得は必ず上がる。カンボジアの国全体が上がっていくことで、貧困を減らすことができる」(小林さん)。

そんな小林さんの自動車学校から、新たな卒業生が生まれようとしていた。
日本行きを控えているのが、2期生のチューン・チェットさん(44)とサー・サンディさん(30)。
チェットさんは2019年に技能実習生として来日し、栃木県で溶接工をしていたが、2022年に体調を崩して帰国。2人の娘の教育費を稼ぐため、再び日本に行くことを決断した。

チェットさんの仕事はトゥクトゥク(三輪タクシー)で、前回日本で稼いだお金で購入。
月の売り上げは約300ドル(約4万7000円)で、自動車学校の費用は、兄弟からの借金だ。
チェットさんは、もう一度まとまったお金を得るため、日本のトラックドライバーを目指す。

一方、サンディさんはこの日、技能教習の最終チェックを迎えていた。左側通行の日本とは違い、カンボジアは右側通行で、これが最大のネックに。

さらに問題なのが、通行量の多い交差点。赤信号でもおかまいなしの車や、逆走してくる車も。ルールを守っていては前へ進めないのが現状だ。
サンディさんは、カンボジアでは極めて少ない女性ドライバーを目指している。

小林さんは、プノンペンの中心部から車で30分ほどの場所に約4億円を投じて教習コースをつくり、年間500人のカンボジア人ドライバーを育成する計画を進めている。
小林さんのもとには、すでに日本各地、約30社の運送会社から「すぐにでもドライバーを採用したい」との依頼が。
「損益をいうと、年間100〜150人紹介できれば、そのラインを超えてくると思う。このスキームがうまくいかないと、会社もなくなる」(小林さん)。
物流業界の期待に応えるためにも、日本で活躍できる人材を1人でも多く育てなければならない。

10月27日、2期生のチェットさんとサンディさんが自動車学校の卒業式を迎えた。仕事を続けながら学んだ1年間は、決して楽な日々ではなかった。
自宅に帰ったチェットさんは、妻と2人の娘たちに別れを告げる。特定技能の資格では家族を日本に連れて行けないため、5年間は離れ離れで暮らすことになる。
「家族と離れたくない…でも他に方法がない」(チェットさん)。
そんな2人を、日本で大きな試練が待ち受けていた――。
運送業界の救世主となるか 外国人ドライバーたちの挑戦

小林さんが2期生のチェットさんとサンディさんの採用を推薦したのが、福岡・直方市にある運送会社「サンケイワークス」。
所属するドライバーは13人で、主に県内で食品や酒の配送を行っているが、代表の金沢亮さんは新たなドライバーを採用できず、頭を抱えていた。
同業者に比べ、2割ほど高い給料で募集しているが、応募はゼロ。金沢さんは、ドライバー不足を解消する最終手段として、外国人の採用を決めた。

11月12日、チェットさんとサンディさんが来日し、小林さんと金沢さんたちが笑顔で迎える。
まずは日本の自動車免許を取得するため、教習所に通うことになるが、2人には運転の他にも覚えなければならないことがたくさんある。例えば、住居として用意されたマンションでも、近所の人とトラブルにならないよう、「ごみ出し」など日本のルールを理解してもらうことが大切だ。
翌日、2人はミナミホールディングスが運営する「南福岡自動車学校」(福岡・大野城市)で、1週間後の運転免許試験に備え、練習を始めた。
2人が乗るのは最新のAI教習車。教官は同乗せず、AIなどが運転中の状況を瞬時に分析して評価する。ミスをすると、100点満点から点数が引かれていく仕組みだ。

この日、チェットさんは黄色信号で減速しなかったため、AIがブレーキを作動。その後もAIが次々にチェットさんのミスを検知する。
一方、サンディさんも一時停止場所での確認が不十分など、ミスを連発。2人は、日本の交通ルールに悪戦苦闘する。

11月21日、運転免許試験の当日。チェットさんとサンディさんは、1週間余りの猛特訓の成果が試されることに。
合格するには、学科で90点以上、技能で70点以上を取らなければならないが、果たして結果は?
受け入れるサンケイワークスにとって、初めての外国人社員。新たな時代の船出となるのか――。
この放送が見たい方は「テレ東BIZ」へ!
