リアル「ロロノア・ゾロ」? 両手と口に包丁をくわえた男性が逮捕…「三刀流」は一刀流より罪が重いのか
令和のロロノア・ゾローー? 両手に刃物を持ち、さらに口にもくわえた「三刀流」の男が1月25日銃刀法違反で逮捕されました。三刀流というと、人気アニメ「ワンピース」の主要キャラ「ロロノア・ゾロ」を想起した人も多かったのか、SNSでは、「リアル ロロノア・ゾロ」「令和にロロノア・ゾロがいた」などと話題になっています。
唐津署によると、1月25日午前8時ころ、佐賀県唐津市二タ子の駐車場で、同市在住の無職の男性(47歳)が刃物3本(刃体約18センチ、同17.5センチ、同13.5センチ)を、両手で持ち、口にくわえて歩いていたとして、銃刀法違反の疑いで現行犯逮捕されたとのことです。無職男性は「知り合いの家に野菜を取りに行く途中」と話していたそうです。
「野菜を取りに行く」ために包丁を持ち歩いても逮捕されるのか?3本だと1本より罪は重くなるのか?と思う方もいるでしょう。本記事では、銃刀法22条の「正当な理由」の判断基準について、詳しく解説します。
●この記事のポイント
・刃体の長さが6センチを超える包丁は「刃物」に該当し、携帯が原則禁止
・複数の刃物を同時に携帯しても罪は1つだが、量刑に影響する可能性
●包丁は「刃物」にあたる
まず、本件の包丁は銃刀法22条の「刃物」に該当します。
銃刀法22条は、業務その他正当な理由による場合を除いて、「刃体の長さが6センチメートルを超える刃物」の携帯を禁止しています。包丁は、刀剣類以外で、人を殺傷する性能を有する鋼製の器物として、「刃物」に該当します。本件の包丁は、刃体の長さが13.5センチから18センチであり、いずれも6センチを超えています。
また、両手で持つほか、口にくわえて持ち歩く行為も、「携帯」に該当します。銃刀法上の「携帯」とは、手に持つ、身体に帯びる、その他これに近い状態で現に携えている場合をいいます。
ただし、「正当な理由による場合」であれば銃刀法22条には違反しないため、正当な理由があれば携帯することは可能です。
●「近所に野菜を取りに」行くことは「正当な理由」になるか
では、「知り合いの家に野菜を取りに行く途中」という目的は、正当な理由にあたるのでしょうか。
結論からいえば、「近所に野菜を取りに」行くという目的だけでは、「正当な理由」と認められない可能性があります。
銃刀法22条の「正当な理由」とは、社会通念上正当な理由が存する場合をいいます。判例では、特定の用途に供するため市販されている刃物をその用途に供する場合や、購入して自宅に持ち帰る場合などが正当な理由として認められています(水戸地判平成23年(2011年)7月29日)。
一方で、業務用の刃物を翌日の仕事のために用いる予定があるとしても、前日夜に酒屋やパチンコ店に立ち入る際に携帯することは正当な理由とはいえないとされています(大阪高判昭和37年(1962年)2月2日)。
これらの裁判例からすれば、今まさに「近所に野菜を取りに行く」ために包丁を持ち歩いていたのであれば、「正当な理由」あり、といえそうに思えてきます。なぜ本件の場合、「正当な理由」と認められない可能性が高いのでしょうか。
まず、「正当な理由」の判断では、目的だけでなく、刃物を携帯しているときの様子(どういう風に持っていたのか。たとえば柄に入っていたり、布で巻いていたりするのか)を総合的に判断する必要があるという点が重要です。
最高裁平成21年3月26日判決(軽犯罪法1条2号の事案)では、仕事や生活上の必要性があって、相当と認められる場合には、「正当な理由」があると考えられています。
これにあたるかどうかは、刃物の使いみちや、刃物の形・性能、持ち歩いた人の職業や日常生活との関係、持ち歩いた日時・場所、持ち歩いたときの様子、周囲の状況などの様々な客観的要素と、持ち歩いた動機、目的、認識等の主観的要素とを総合的に勘案して判断する、とされています。
学説上、この判断基準は銃刀法22条の「正当な理由」にも同じようにあてはまると考えられています。ただし、軽犯罪法の規制する器具と銃刀法22条の刃物では危険性に差があるため、刃物の場合には正当な理由が認められるのは限定的な状況に限られるという考え方もあります。
本件の場合、「野菜を取りに行く」という目的自体は、日常生活上の必要性があると認められる可能性があります。しかし、3本の包丁を、両手と口にくわえて持ち歩くことが、この目的のためにはたして必要だったのか、という点が問題となります。
また、3本の包丁が鞘(さや)などに入っていたり、刃が露出しないように布で巻かれたりしていたのか、それとも刃がむき出しの状態だったのかも問題となります。
仮に3本とも刃がむき出しの状態で持っていたのであれば、目的のために必要ではないと評価される可能性が高まります。
これらの点を総合的に考慮したうえで、社会通念上相当とは認められない可能性があります。
このように、「近所に野菜を取りに」行くという目的だけでは、「正当な理由」と認められない可能性があります。
●3本持ち歩くことの評価
容疑者は3本の包丁を同時に携帯していたとされています。複数の刃物を携帯した場合、複数の罪が成立するでしょうか。
たしかに、日時・場所が異なる場合には、複数の携帯行為はそれぞれ別の罪となる可能性があります。
しかし、本件では同時に3本を携帯しているため、1つの罪として評価されると考えられます。
また、量刑への影響ですが、1本の時よりは、3本持ち歩いているほうが危険性の程度が高いと判断される可能性はあります。
なお、銃刀法22条違反の刑罰は、2年以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金です。
(参考資料)
「注釈銃砲刀剣類所持等取締法(第3版)」(辻義之、大塚尚/立花書房、2022年10月)
監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)

