朝日新聞は社説で東京五輪の2021年夏の開催中止を主張してきた

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東京五輪の日程が折り返し点を過ぎ、中止を求めてきた朝日新聞の社説の論調にも変化が出てきた。これまでは、開幕後も中断や中止の可能性を排除すべきではないとしていたが、折り返し後の8月1日付の社説では「中止」の文字が消え、「祭典を開催する側の姿勢と責任は、最後まで問われ続ける」などと訴えるにとどめている。

今回の社説では8月24日に開幕するパラリンピック開催の是非には触れていない。感染拡大が収まる見通しが立たない中、中止論に踏み切るかも焦点になりそうだ。

開幕時も「中断・中止の可能性も排除せずに」

朝日新聞が五輪・パラリンピックの中止を求めたのは5月26日付の社説だ。感染拡大を背景に

「この夏にその東京で五輪・パラリンピックを開くことが理にかなうとはとても思えない」

とした上で、

「冷静に、客観的に周囲の状況を見極め、今夏の開催の中止を決断するよう菅首相に求める」

と訴えた。

6〜7月の2か月間で、朝日新聞が社説で五輪をテーマにしたのは7回。この間、

「今後、感染状況がさらに悪化して医療が逼迫(ひっぱく)し、人の命が脅かされるようなことになれば、聖火がともった後でも中断や中止に踏み切る。それだけの覚悟を固めておく必要がある」(7月10日)
「国籍や属性を問わず、生命と健康を守ることを最優先課題と位置づけ、中断・中止の可能性も排除せずに大会に臨む必要がある」(7月23日=開会式当日)

といった具合に、開幕後であっても中断や中止を視野に入れるべきだとの主張を維持してきた。

問われる高校野球開催との整合性

7月23日の次に社説で五輪をテーマにしたのが8月1日。「五輪折り返し 安全・安心を見直して」の見出しで、活躍するアスリートにエールを送った。その上で、

「問題は、持てる力を存分に発揮できる環境を、主催する側が物心両面で用意しているかだ」

として、開幕後に起きている感染対策や酷暑対策の問題点を列挙。

「祭典を開催する側の姿勢と責任は、最後まで問われ続ける」

というで結ばれたが、「中止」や「中断」といった文言が登場することはなかった。

五輪は8月8日に閉幕する。翌9日から25日にかけて第103回全国高校野球選手権大会が行われ、8月24日にはパラリンピックが開幕。感染拡大が続く中、スポーツイベントが切れ目なく開かれることになる。

夏の高校野球は朝日新聞社と日本高校野球連盟が主催。試合は無観客で開催し、入場は学校関係者に限る。海外との往来の有無などの違いがあるとはいえ、五輪中止を主張しながら自社イベントを開催することの整合性は問われ続けることになりそうだ。

朝日の社説が最後にパラリンピックに言及したのは7月10日。この時点では、

「パラリンピックには選手の健康管理をはじめとして、五輪とはまた違った開催の難しさがある。これにどう臨むか。確かなのは、五輪と同じことを繰り返しては、人々の理解と支持は得られないということだ」

といった内容で、開催の困難さに言及するにとどめている。

(J-CASTニュース編集部 工藤博司)