「ビールで痛風になる」は嘘だった! 生活習慣にまつわる“健康迷信”を東大卒医師が解説

「ビタミンCで風邪が治る」「ブルーベリーで視力が回復する」……。「健康」をうたった、真偽不明の情報があふれる日本。そんな現状を憂うのは、医師の大脇幸志郎氏だ。
大脇氏は東京大学医学部を卒業後、医療IT会社などに勤務しながら2017年に医師免許を取得。医療情報サイトの運営を経て、現在、医療現場の最前線に立つ。氏が翻訳した『健康禍』(生活の医療社)が話題となっている。
「健康を最優先に考える思想が、世の中全体を支配しています。いわば『健康』を強制する圧力。そういった現象を、『健康禍』と呼んでいます」
いわゆる健康法に限らず、患者として受ける「医療」も含め、絶対ではないと大脇氏は語る。
「生活習慣に気をつけて、脳疾患や心臓疾患を防ごうというのが予防医学ですが、気をつけても効果はたかが知れている場合が多いんです」
以下で、予防医学にまつわる嘘と真実について、大脇氏に検証してもらった。
(1)高血圧
日本では、上(収縮期血圧)が140以上、下(拡張期血圧)が90以上で高血圧と診断される。だが、基準値に振り回されることはないという。
「血圧が170、180でも、脳卒中や心筋梗塞を起こさない人もいます。統計的には、血圧を下げたほうが病気になる人数が減るのですが、個々人の運命は予測できません。
肝心なのは、急に倒れた場合に備えること。自分に意識がないとき、以前どんな病気にかかったか、どんな薬を飲んでいるか、緊急連絡先は……といったことを、どう医師や看護師に知らせるか。かかりつけ病院の診察券や、お薬手帳に書いた情報がカギになることも」
(2)痛風
痛風は、体内で結晶となった尿酸が引き起こす。尿酸のもとはプリン体だから、プリン体が含まれる食品を摂らないように……というのが、よく語られる。とくに槍玉に上がるのがビールだが、大脇氏は「これこそ迷信」と切って捨てる。
「ビールにプリン体は、わずかしか含まれていません。同じ重量で比べると、肉や魚のほうが10倍から100倍も多いんです。しかも、もともと体内で作られるプリン体の量は、食品から摂取する量の数倍です。ビールをやめて焼酎にしても意味はありません。
尿酸値が高いと薬を処方されますが、薬で初発の痛風を防げるという証拠はなく、薬によっては、重大な副作用のリスクが疑われているのです」

大脇医師
(3)血糖値
血糖値が高い状態が続く病気が糖尿病だ。食事制限、運動、投薬治療などで、生活が大きく制限される。
「血糖値を厳しく下げても、ほどほどに下げても、脳卒中や心筋梗塞の発症数は変わらないという結果が出ています。それどころか、理由は不明ですが、血糖値を厳しく下げたグループのほうが、死亡する人が多いというデータも出ています。
日本糖尿病学会の診断基準では、血糖値の指標であるHbA1cは『6.5%未満』となっていますが、治療目標は個人ごとの様子に合わせて緩くしてもよく、8%未満などにすることもあります」
(4)肥満
「メタボリック・シンドローム」という言葉が日本でも流行したのち、メタボ健診が始まったのは2008年。
「最近は、医学誌で『メタボリック・シンドローム』という言葉を見た記憶がありません。メタボ健診についても、それによって寿命が延びるというエビデンスはないんです」
肥満の程度を示す数値として有名なのがBMIだ。計算式は「体重÷(身長の2乗)」。
「これも気にしすぎです。日本でBMIが30を超える人は、2016年時点で人口の4.4%しかいません。アメリカでは、1日に1人あたり3682kcalが供給されていますが、日本では2726kcal。日本人は、食べすぎてはいません」
大脇氏の主張に賛同するのが、医師で武蔵国分寺公園クリニック院長の名郷直樹氏だ。
「健康のため食事を制限して、頑張って運動して、薬をきちんと飲んで……と厳しくやるのと、できる範囲で適当にやるのとでは、じつは、それほど決定的な差はありません。病気になるのが1〜2年先送りされるだけです。
どちらを選ぶかは本人の自由です。患者の立場では『健康第一』が正しいわけではないのです」
大脇氏が、あらためて訴える。
「人には、『不健康になる権利』があると思います。自分の思うような生活を維持する際、病気がそれを邪魔しないよう手助けするのが医者の仕事。医者が、健康を名目に患者の生活を邪魔するのは、仕事をはき違えているのでは」
医者まかせにするのではなく、自分の健康は自分で守りたい。
(週刊FLASH 2021年4月13日号)
