Appleが、App Storeの「Best of 2020」を発表しました。世界中の人々がコロナ禍の影響を受けた今年、同社が選んだトレンドの言葉は「ヘルプフルネス」。Best of アワードには、コロナ禍の自粛生活を支援し、回復を助け、新しい暮らし方や働き方に貢献するアプリが多数選ばれました。

今年、初めてBest ofトロフィーを用意、素材はもちろん再生アルミニウム!


iPhone App of the Yearは意外なアプリ、iPadは今年躍進したあのアプリ

米国時間の12月1日、AppleがApp Storeの「Best of 2020」を発表しました。

「Best of アワード」では、App Storeのキュレーションなどを手がけるスタッフが、その年を代表するようなアプリ、人々の暮らしや社会にインパクトを与えたアプリを選んで表彰します。ダウンロード数や規模の大小を問わず、アイディア、創造性や革新性、デザインや品質に優れたアプリを讃えるアワードです。

2020年は、コロナ禍で多くの人が新しい暮らし方や働き方を取り入れ、社会、学校、コミュニティとの関わり方が大きく変わった年になりました。離れた人とつながる、心や体の健康を保つ、在宅で学ぶ、クリエイティビティを発揮する、リモートで働くといったことが求められたなか、アプリはこれまに以上に大きな役割を果たしました。今年のBest of アワードには、コロナ禍における新しい生活様式に関わるアプリが多数選ばれています。

○iPhoneアプリ:「Wakeout!」

体を動かすことは健康を保ち、メンタルヘルスや生活の質の改善に効果があります。でも、運動が苦手な人にとってスポーツやトレーニングは苦痛です。Wakeoutは、朝起きて枕でチェストプレス、キッチンカウンターで腕立て、オフィスのデスクでヨガなど、普段の生活の中で簡単に体を動かせるエクサイズを集めたフィットネスアプリです。ちょっと時間が空いた時に、その場所でできるエクササイズを選んですぐに始められます。体を動かすことが好きな人はもちろん、普段運動をしていない人にも適しているという点では“For the rest of us”なフィットネスアプリといえます。簡単な運動で気持ちよくなれる効果が口コミで広がり、コロナ禍の影響で自宅にこもることが多くなった今年、サービス契約者を大きく増加させました。

日常生活に運動の習慣を取り入れる「Wakeout!」


○iPhoneゲーム:「原神」

旅人になってテイワットという幻想世界を冒険していくオープンワールド型のアクションRPGです。自由度が高すぎてメインクエストからすぐに脱線してしまいますが、脇道にそれたちょっとしたクエストも面白く、自由に冒険を楽したいという人なら時間を忘れて楽しめるゲームです。チュートリアルも丁寧で、広大な世界と緻密なシステムにプレイしながら入り込めんでいける設計になっています。

「ゼルダの伝説ブレスオブザワイルド」やアニメの影響も指摘されるが、遊ぶ人を引き込ませる独特の魅力を備える「原神」


○iPadアプリ:「Zoom」

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う在宅勤務、在宅学習へのシフトで躍進したビデオ会議サービス。瞬く間に、メールやメッセンジャーに次ぐコミュニケーション手段の選択肢の1つになりました。急速なユーザー拡大から、一時はプライバシーやセキュリティの懸念が広がりましたが、すぐに対応して信頼向上につなげました。新型コロナ禍後を見据え、ニューノーマルにおける企業のワークスタイルを支援するためのエコシステムの構築にも乗り出しています。

Zoom


○iPadゲーム:「レジェンド・オブ・ルーンテラ」

「リーグ・オブ・レジェンド(LoL)」の世界を舞台にしたストラテジーカードゲームです。チャンピオン(キャラクター)を選び、それぞれが独自のスタイルや、戦略的な優位性を持つ異なる地域のカードを組み合わせながらデッキを構築して戦いに挑みます。MOBA(マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ)であるLoLとはゲームとして別物ですが、LoLのキャラクターを巧みに再現しており、異なったゲーム体験からLoLの世界を楽しめるゲームです。

レジェンド・オブ・ルーンテラ


○Macアプリ:「Fantastical」

1月にデザインを刷新したバージョン3.0をリリース。買い切りからサブスクリプション制に移行し、デバイスの違いを問わず、macOS、iOS、iPadOS、watchOSで1つのプラットフォームとして機能する統合的なサービスになりました。iOS優先ではなく、Macでのナビゲーションを重んじたデザインをiPadにもたらす手法をとっており、すべてのデバイスでバランスの良い操作性を実現しています。新型コロナ禍においては、在宅勤務へのシフトに対応して、ビデオ会議のリンクを検出してサポートする機能を強化しました。

Mac版Fantastical


○Macゲーム:「Disco Elysium」

時代遅れのディスコ音楽を愛する記憶喪失の刑事が殺人事件の真相を追うミステリーRPGです。2019年末に発売、さまざまなゲームレビューで高評価を獲得し、4月末にMac用が登場しました。主人公の頭の中で、思想や主義主張、知性といった様々なスキルが脳内会議を繰り広げ、プレイヤーの選択によってストーリーが進んでいきます。カオスな会話システム、切れ味するどいブラックユーモア、東欧風の街を描いた重厚なアートワーク、すべてがユニークな作品です。残念なのは、人の内面、政治・社会問題を絡めたブラックユーモアが大きな魅力の作品であり、ローカライズの難しさから多言語対応が進んでいないこと。日本語もまだサポートされていません。

Disco Elysium


○Apple Arcadeゲーム:「忍び足のサスクワッチ」

サスクワッチ(未確認動物)になってキャンプ場や街を動き回るゲーム。絵本のようなデザイン、こっそりキャンプに入りこんで食べ物を盗み食いするところなど、最初は「Untitled Goose Game」や「どうぶつの森」を思わせます。ところが、エンジンでソーセージを焼いたり、免許を取得してタクシー運転手になって稼いだり、埋蔵金を掘り当てたり、サスクワッチは予想外の行動を繰り広げます。その自由度の高さから、絵本のような雰囲気なのに「グランド・セフト・オート」を彷彿させるゲームでもあります。

忍び足のサスクワッチ


○Apple Watchアプリ:「Endel (エンデル) 」

サーカディアンリズム(体内時計)などに基づいた独自のアルゴリズムで、睡眠、リラックス、集中、お出かけの4つのモードで、パーソナライズしたヒーリングサウンドを提供します。開発者いわく「音のマイナスイオン」です。Apple Watchを使うことで、天気や時刻、そして心拍数といった要素から、ユーザーに最適化されたサウンドを得られるようになります。

Endel (エンデル)。ちなみにBest of Apple Watchアプリは今年初めて設けられたカテゴリーです


○Apple TVアプリ:「Disney+」

Disneyがワールドワイドで手がける定額制の動画配信サービスです。2019年11月に米国でスタート、欧州やインドに拡大し、今年6月に日本でもサービスが始まりました。急成長する動画配信サービス市場では、業界の綱引きにエンドユーザーが巻き込まれることがしばしば見られますが、Disneyは視聴者優先を徹底し、Apple TVを含むあらゆるデバイスで視聴できるようにプラットフォーム対応に努めています。AirPods Proの空間オーディオに対応するなど、視聴体験の向上につながる技術や機能のサポートにも積極的です。

Disney+


○Apple TVゲーム:「Dandara Trials of Fear」

ブラジルのスタジオLong Hat Houseが開発して高い評価を獲得したアクションアドベンチャーゲーム「Dandara」に、新エリアや新しいボスを追加したアップデート版です。抑圧された世界の中で、ヒロインが自由を取り戻すために戦うストーリー。ポイントを選びラインで結んで移動するという独特のアクションが特徴で、最初は移動に戸惑いますが、慣れたらそのスピード感とパズル的な要素にはまり込んでしまいます。

Dandara Trials of Fear


今年のトレンドとなった5つのアプリ

各部門のBest of 賞のほかに、Appleは「今年のトレンド」を選び、トレンドを作ったアプリにもBest of 賞を授与しています。2020年のトレンドは「ヘルプフルネス (helpfulness)」。コロナ禍において、これまで以上に人々がつながる瞬間がアプリの中で生まれた年になりました。受賞アプリは「Shine」「Caribu」「Explain Everything Whiteboard」「ポケモンGo」「ShareTheMeal」の5つです。

「Shine」は、不安やストレスを取り除き、日々の生活の中でメンタルや感情の健康を向上させるのを支援するサービスです。生活に瞑想を取り入れ、リラクゼーションや快適な睡眠をサポートする機能があり、また一日を前向きに過ごすのを後押しするメッセージやセルフケア・アドバイスなど、ユーザーが心の健康について理解し、それを向上させるサポートも提供しています。サービスを開始した2016年は、大統領選挙の混乱で人のつながりが薄れた時期でした。マインドフルネスのサービスが数多く登場する中で、Shineが高評価を得ているのはセルフケアに関心を持つ人達を結ぶコミュニティを構築できているから。マイノリティに対する差別問題が深刻化した今年、Shineはインターセクショナリティに関するセクションを立ち上げました。

Shine


「Caribu」は、子ども用のビデオ通話アプリです。FaceTimeやSkypeといった通常のビデオ通話ツールとの違いは、インタラクティブに利用できる絵本やパズル、ゲームなどを利用できること。例えば、離れた場所にいる祖父母と会話するだけだったら子どもはすぐに飽きてしまいますが、一緒にアルファベットを学んだり、読み聞かせや色塗りができたら一緒に長く楽しい時間を過ごせます。

Caribu


「Explain Everything Whiteboard」は、ホワイトボードに資料を貼ったり、手書きする感覚で説明動画やプレゼンテーションを作成し、広く共有してコラボレーションやミーティングに使えるサービスです。オンライン授業やリモートのグループ学習でも、オンライン会議ツールとExplain Everythingを使うことで、教室で黒板やホワイトボードを囲むように学べます。

Explain Everything Whiteboard


今年の春、外出自粛で“ポケ活”がままならない状況になった時、「ポケモンGo」はリモートレイドバトルを追加し、屋内の動きや運動でもタマゴを孵化できるようにしたり、プレイヤーの周りにポケモンを呼び寄せるアイテムを配布するなど、ポケモンGoでつながりながら自粛をサポートする機能の提供に舵を切りました。

ポケモンGo


「ShareTheMeal」は、約83カ国で食料支援を行っている国連世界食糧計画(国連WFP)の活動を支援するアプリです。飢餓問題を抱える地域では、わずか85円の寄付で食料を必要とする子供一人に一日分の食事を届けられます。飢餓は解決可能な問題です。それにもかかわらず今も世界が抱える大きな問題であり続けるのは、支援したい人とそれを必要としている人をうまく結びつけられていないから。ShareTheMealでは、支援を希望する人が今進行中の食料支援プロジェクトを知り、支援したいプロジェクトを選んでワンタップで寄付できます。コロナ禍は飢餓問題を深刻化させていますが、そうした情況を知った多くの人が食料支援に協力しており、ShareTheMealを通じて届けられた食事が9000万食に達しようとしています。

ShareTheMeal