『伊藤家の晩酌』〜第十七夜2本目/“時間”が酒をおいしく変化させた「七本鎗 山廃純米 琥刻 2014」〜
弱冠23歳で唎酒師の資格を持つ、日本酒大好き娘・伊藤ひいなと、酒を愛する呑んべえにして数多くの雑誌、広告で活躍するカメラマンの父・伊藤徹也による、“伊藤家の晩酌”に潜入! 酒好きながら日本酒経験はゼロに等しいというお父さんへ、日本酒愛にあふれる娘が選ぶおすすめ日本酒とは? 第十七夜は、福岡発の酒と食のセレクトショップ〈住吉酒販〉から特別ゲストを迎え、奥深い熟成酒の世界をご紹介。2本目は琥珀色したコク深いヴィンテージ酒。(photo:Tetsuya Ito illustration:Miki Ito edit&text:Kayo Yabushita)
第十七夜2本目は、穏やかな酸、きれいな熟成感をしみじみ感じる「七本鎗 山廃純米 琥刻 2014」。
滋賀県長浜市にある冨田酒造の「七本鎗(しちほんやり)」のヴィンテージ酒「琥刻(ここく)」の2014年。蔵付き酵母による山廃仕込みの純米酒。杯を重ねるほどに、深まるコクと余韻に浸る。
「七本鎗 山廃純米 琥刻 2014」720ml 2639円(税別・ひいな購入時価格)/住吉酒販有限会社
娘・ひいな(以下、ひいな)「今回は滋賀県の冨田酒造さんの『七本鎗』です!」父・徹也(以下、テツヤ)「滋賀県のお酒って初めて紹介するんじゃない?」ひいな「魯山人が愛したお酒なんだって」テツヤ「出たー!」ひいな「魯山人って名前に弱いよね(笑)」テツヤ「うん、なんか無条件にうまそうに感じちゃうよね」ひいな「山廃純米で『琥刻』っていうシリーズを出してるんだけど」

テツヤ「ここく?」ひいな「“時を刻む”と“琥珀色になっていく”という2つの意味から言葉を取ったみたい」住吉酒販 飲食事業部 部長・早乙女 彬(以下、早乙女)「2010年から造られていて、ヴィンテージ違いであるんですが、今回は2014年のものになります」テツヤ「あ、だからラベルも『二〇十四』を表してるんだね?」ひいな「ほんとだ! 知らなかった!」早乙女「このお酒は、熟成って言葉からイメージされる味わいに近いと思います」テツヤ「なるほど。ちょっとコクのある感じで、琥珀色してるのかな? 色、見てみたいね」早乙女「山廃仕込みなので酸がしっかりあるタイプになりますね。だから少し空気に触れさせたほうがやわらかく、温度も高いほうがまろやかな酸が感じられると思います」テツヤ「絶対、好きな味だよな」ひいな「酸って言葉に弱い、伊藤家だからね」早乙女「この琥刻シリーズは冨田酒造さんが初めて地元のお米を使って山廃仕込みで造ったお酒になります」
琥珀色した美しい液色が熟成酒の証!
テツヤ「おぉ、いい色してるねぇ。琥珀色っていうだけあって美しい!」ひいな「おいしそうな色!」
では、色を堪能したら、さっそくいただきましょう!
おちょこで、いただきます!
さて、お味はいかに?
一同「いただきます!」テツヤ「あぁ〜(言葉を失う)」 ひいな「好き」早乙女「穏やかな酸味ときれいな熟成感を感じますよね。ゆっくり熟成してるからこの色ができあがるんですよね」ひいな「5日前に開けた同じお酒も飲んでみようか」テツヤ「あ、こっちが好きだな。まろやかで、やわらかい感じがする。う〜ん、余裕がある感じ?」早乙女「常温で置いておいたら、もっと開くと思います」テツヤ「まだまだ若い感じがするよね。開けたては。僕はしばらく開けておいた方が好きなんですけど、早乙女さんはどうですか? これは好みなんですか?」

早乙女「僕もこういう落ち着いたお酒のほうが好きなので、常温でしばらく置いておいてゆっくり楽しみたいですね。ゆっくりと飲める一升瓶のほうが、開けたてと飲み終わりで味の違いが楽しめるんですよね」テツヤ「一升瓶は、そういう飲み方ができるのがいいですよね」早乙女「時間をかけて、味の変化を楽しんでほしいですね」テツヤ「ゆるゆる飲み推奨!」ひいな「温度を変えて、おつまみも変えながらずっと飲んでいられるって最高だね」テツヤ「ね。これは沁みるおいしさだよ」
「七本鎗 山廃純米 琥刻 2014」に合わせるのは「ピータンの味噌漬け」

テツヤ「ここまで特徴があるお酒だと合わせるものが気になるねぇ」ひいな「ね。今回も、早乙女さんは何を合わせてくれるんでしょうか?」早乙女「ピータンを京都の蕎麦屋が作った鯉の辛味噌に漬けてみました!」テツヤ「ピータンをさらに味噌に漬けちゃったんですか?」早乙女「はい。そこに奈良漬けも加えて。福岡の日本酒『繁桝』を造る酒蔵『高橋商店』さんの奈良漬けになります」
まさに酒が喜ぶおつまみ!
父・テツヤも喜んでいます!
テツヤ「なんですかこれ!? うますぎる!」ひいな「発酵食品のうまみがね、もう」テツヤ「うん、次から次へうまみが襲ってくるね(笑)。濃厚なんだけど、この熟成酒にバッチリ合う。さらに奈良漬けの食感もたまんないね」早乙女「滋賀県といえばうまみの塊みたいな鮒寿しがありますからね」テツヤ「うん、このピータンのねっとりした感じと熟成酒を合わせると、お酒のまろやかさが流してくれるね。お酒を飲んで、食べて、またお酒飲みたくなる」ひいな「誘ってくるよね、このおつまみは」テツヤ「ピータンすごいな」ひいな「うまみをお互いに伸ばしあってるよね」テツヤ「ピータンって紹興酒のイメージだったけど、このお酒が抜群に合うね。もう交互に無限ループ!」ひいな「いままでさ、ちょうない? あれ? ちょうない……?」テツヤ「口内調味のこと?」ひいな「そうそう(笑)。口内調味ってよく言ってたけど、これはもうそういう次元じゃない感じだよね。“しゅきそうざい”って言葉があってね」テツヤ「どんな字を書くの?」ひいな「酒喜惣菜。酒が喜ぶおつまみってこと」

早乙女「うちは、料理とお酒を角打で出してるんですけど、『酒屋が作る料理ってなんだ?』って考えると、最後にお酒がおいしいなって思ってもらえるような味付けや料理だなと考えていて。だから、うちのお店には揚げ物とか焼き物ってないんですよ。揚げ物を食べた時って、お酒よりも揚げ物がおいしいじゃないですか」テツヤ「なるほど。それは〈住吉酒販〉さんの造語なんですか?」早乙女「そうですね」テツヤ「お酒が喜ぶ味って、どんな味なんだろう?」早乙女「たとえば、砂糖と醤油をほとんど使わないんですよ。この2つがあるとどうしてもごはんが食べたくなるので」テツヤ「あぁ、なるほど」早乙女「甘辛い煮付けとか照り焼きとかの味付けってごはんを想像するんですよね」テツヤ「白米じゃなく、酒を呼ぶつまみってことですね。醤油よりは味噌とか塩になるのかな?」ひいな「勉強になるなぁ」テツヤ「この間、おつまみに出てきたハンバーグも塩味だったしね」ひいな「デミグラスだと違うよね」テツヤ「なるほどなぁ。酒が喜ぶっていい言葉だなぁ」
燗酒にして、さらに旨さ倍増! 酸味もまろやかに、味わい深く。
早乙女「山廃仕込みのお酒は、冷たいまま飲むよりは、温度を上げたほうがより酸を楽しめると思います。赤ワインを冷たくして飲まないのと同じ感じですかね」テツヤ「なるほど」ひいな「42度くらいのぬる燗にしてみました」

テツヤ「あったかいのも、しみじみとおいしいねぇ」ひいな「このうまみの広がり方は、熟成酒の醍醐味って感じだねぇ」早乙女「とがっていた酸が丸くなりますよねぇ」テツヤ「ほんとうに角が取れた感じ。でも、5日前に開けたのと、いま開けたのなら、いま開けた方が燗酒には合うよ。断然!」ひいな「え、そうなの?」テツヤ「不思議なんだけど」ひいな「うん、確かに。何でだろう? 断然おいしいね」早乙女「これはなかなかマニアックな飲み比べですね(笑)」ひいな「こういう飲み方ができるのも家飲みだから、ですね」テツヤ「そうだよね。これぞ、伊藤家の晩酌! 〈住吉酒販〉さんではできないですよね(笑)」早乙女「はい。買っていただいて、ぜひご自宅でお試しを!」
次回:10月11日(日)更新予定

【ひいなのつぶやき】お料理と温度の組み合わせで、熟成酒のさらなる魅力が感じられます!ひいなインスタグラムでも日本酒情報を発信中
【お店情報】〈住吉酒販 東京ミッドタウン日比谷店 〉住所:東京都千代田区有楽町1-1-2 東京ミッドタウン日比谷B1F電話:03-6205-4172営業時間:11:00〜21:00休日:施設に準じるホームページ:https://sumiyoshi-sake.jp/

