安倍首相

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熊本地震は支持率アップ

 安倍内閣の支持率が急速に落ちている。新型コロナウイルスへの対応が「後手に回っているのではないか」と懸念する有権者が増えているのが理由だ。まずは全国紙と通信社の数字をご覧いただこう。

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 以下に6社の結果をご紹介するが、支持より不支持の割合が上回ったのは、時事通信、朝日新聞、共同通信、日経新聞、産経新聞の5社となった。

 一方で、支持率が勝ったのは読売新聞だけだった。また毎日新聞は共同通信の結果を報じた。(註:以下、本稿の引用は全てデイリー新潮の表記法に合わせた)。

◆時事通信【支持38・6%:不支持39・8%】
2月14日「内閣支持38%、不支持39% 1年半ぶり逆転―2月の時事世論調査」

安倍首相

◆読売新聞【支持47%:不支持41%】
2月16日「内閣支持47%、前回より5ポイント低下…読売世論調査」

◆朝日新聞【支持39%:不支持40%】
2月18日「政府対応『評価せず』50% 新型肺炎『不安』は85% 朝日新聞社世論調査」

◆共同通信(電子版)【支持41・0%:不支持46・1%】
2月17日「内閣支持率8ポイント急落41% 桜の会対応批判、共同調査」

◆日本経済新聞【支持46%:不支持47%】
2月23日(電子版)「内閣支持46%、不支持47%で拮抗 日経世論調査」

◆産経新聞【支持率36・2%:不支持46・7%】
2月25日「内閣支持率急落36・2% 本社・FNN合同世論調査」

 支持率が上回った読売新聞でも、内閣支持率が5ポイントも下落したことを見出しに取った。政治担当記者は「もちろん安倍晋三首相(65)は相当な危機感を抱いています」と指摘する。

「安倍政権は『危機管理に強い』ことが、1つの“セールスポイント”でした。“強いリーダーシップ”で自民党や官僚の求心力を高め、内閣支持率を維持してきたのです。しかし現在の有権者は、『安倍首相は新型コロナ対策に失敗した』と失望を強めています。また海外メディアが、東京五輪の延期や中止の可能性を報じるようになってきた影響も大きいでしょう。『安倍応援団』や『岩盤支持増』と呼ばれるコアな有権者も、安倍首相に対して批判的になっています」

イベント自粛要請でも後手後手

 熊本地震は2016年4月に発生したが、安倍政権の支持率は上昇した。世論調査を実施した時事通信が5月13日、「内閣支持47・6%に上昇=不支持は3割切る−時事世論調査」と報じたのが一例だ。

 政治担当記者は「熊本地震の時とは異なり、今の安倍首相は四面楚歌という表現がぴったりです」と解説する。

「財界は『自粛ムードで消費が落ち込んでいる。何とかしてくれ』と矢のような催促です。一方、会社員は『満員電車での感染リスクが怖い。なぜ在宅勤務を政府は後押ししてくれないんだ』と不満の声が上がっています。2月27日に政府は『小中学校の臨時休校』を要請しましたが、これも賛否両論です。一般的に言って、専業主婦は対応が可能でしょうし、兼業主婦は子供の世話に困り果てるはずです。安倍政権が遅まきながら方針を打ち出しても、必ず正反対の賛否が沸き起こってしまうところに悩んでいるようです」

 諺にも「彼方(あちら)を立てれば此方(こちら)が立たず」とは言う。しかしながら、それを乗り越えてこそリーダーシップというものだろう。

「孫氏は『兵は拙速なるを聞くも、いまだ巧久なるを睹(み)ざるなり』との言葉を残しています。『戦いは先手必勝、神速果断が重要であり、いたずらな慎重姿勢、対応の長期化は失敗を招く』という意味です。安倍首相が現在、これほどの四面楚歌に陥ったのは、対策が後手に回ったことが最大の原因です。それを教えてくれる名言でしょう」(同・政治担当記者)

 後手後手という批判をかわそうとしたら、更に後手という印象を与えたという事態も発生している。

 安倍首相が2月26日、大規模イベントを2週間、自粛するよう呼びかけたことは大きく報道された。

 PerfumeやEXILEが当日夜のコンサートを中止するなど影響も大きかったわけだが、前日の25日にまとめられた政府方針では「全国一律の自粛要請はしない」と決めていたのだ。

 毎日新聞が27日に報じた「新型肺炎:新型肺炎 政府一転、自粛呼びかけ 後手批判に危機感 大震災追悼式縮小へ」から引用させていただく。

《25日にまとめた政府基本方針では「全国一律の自粛要請」はせずに主催者に判断を委ねるとしていたが、感染が拡大する中で政府対応への「後手後手」との批判が出始めたことを意識し、一転して政治主導で判断したようだ》

《感染の拡大につれて内閣支持率が低下したことも考慮。政府関係者は「官邸主導で急きょ決まった。政権の危機感の表れだ」と指摘した。一方、国民民主党の玉木雄一郎代表は記者団に「最初からそう思っているなら(25日公表の)基本方針に書けばいい」と述べて批判した》

 25日の判断を慌てて26日に覆すことも、やはり同じように「後手後手」と形容せざるを得ない。こればかりは玉木代表の指摘が正論だろう。

海外メディアの対応に苦慮?

 一般の支持層でさえ安倍首相のリーダーシップに失望しつつある。「安倍応援団」となればなおさらだ。

「インターネットで検索すると、リベラル層が『安倍応援団は“安倍首相が中国に忖度した”と悲憤慷慨している』と指摘したり、保守層が『中国人を入国禁止にしない安倍首相の支持を止める』と書き込んだりしています。新聞各社の急速な支持率下落を見ても、岩盤支持層が不満を持っているのは間違いないでしょう」(同・政治担当記者)

 もちろん官邸は、新型コロナ対策に高い危機感を持っているという。だが、最初の対応の失敗は最後まで付いて回る。ここまで支持率が急落した根本的な理由を、政治アナリストの伊藤惇夫氏に聞いた。

「モリカケ疑惑の時、安倍政権は一致団結し、鉄壁のガードで野党やメディアの追及を抑え込みました。ところが新型コロナウイルスに対しては、政権内部で足並みが乱れている印象が強いのです。理由は安倍政権の体力低下でしょう。『ポスト安倍』が現実味を帯び、そもそも安倍首相がリーダーシップを発揮しにくい状況になってきた。ウイルス問題が起きる前に『桜を見る会』の対応で相当に消耗していたことも大きな要因でしょう」

 更に伊藤氏は「安倍首相自身が、リーダーシップを発揮する場を作っていないように見えます」とも指摘する。

「これまで安倍首相は大きな事態が発生すると、首相官邸でメディアのぶら下がり取材に応じたり、記者会見を開いたりして、首相自身の言葉で国民に呼びかけていました。ところが今回の新型コロナウイルス問題は、1月に国内最初の感染例が確認されましたが、加藤勝信厚労相(64)に一任した場面が目立っています。理由の1つとして考えられるのは、海外メディアの厳しい報道に苦慮しているのではないでしょうか」

 特に東京五輪を目前に控えているのは大きいだろう。安倍首相の立場からすると、自身の発言が批判的な文脈で全世界に報じられるデメリットは看過できないはずだ。

「結果として、安倍首相はリーダーシップを効果的に演出できる場面がなくなってしまいました。内外への発信力は低下し、有権者は安倍首相が新型コロナウイルスに振り回されているような印象を持ちつつあります。自民党支持者でも、特に保守的な層が安倍首相に失望するのは、ある意味で当然でしょう」(同・伊藤氏)

 第2次安倍内閣は12年12月26日に発足した。あの日から7年2か月が経過した。最大の危機を迎えた安倍首相は、どう乗り越えるのか。

週刊新潮WEB取材班

2020年2月29日 掲載