自力で学び「卒煙アドバイス」をまとめたアプリ「SWAN 卒煙」の開発者にインタビュー

iPhoneやiPadなど向けアプリ配信マーケット「App Store」にて2018年1月31日から公開されている「SWAN 卒煙(読み:スワン ソツエン)」は“タバコをやめたい”と思いながら喫煙を続けている人を助けてくれるアプリだ。いわゆる「禁煙サポートアプリ」といったカテゴリーに分類されるアプリだが、他のアプリとは様子が違う。

一般的に禁煙サポートアプリと呼ばれるアプリの多くは「カウンター機能」を中心にした自身の「禁煙状況」を見える化している。SWAN 卒煙にももちろんカウンター機能は搭載されているが、本質はそこではない。

SWAN 卒煙はダウンロードしてもすぐにカウンターは動かない。では、どうすればいいか?まず、最初にやることは「アドバイス」を読むこと。およそ15分で読み終える「卒煙の前に知ってほしいこと」を読めば「卒煙」ができるというのだ。

試しにダウンロードして第1章を軽く読んでみるだけで、このアプリが他の禁煙サポートアプリとは異質なものだということはすぐに分かるだろう。筆者自身もそんな印象を受けたひとりだ。

実は全17章からなるこの「アドバイス」はかつて喫煙者だった開発者本人が禁煙や禁煙外来に関する知識を深め、独自の「禁煙論」をまとめあげたものなのだ。

今回はそんなSWAN 卒煙を開発したリガトの金澤諒氏に、アプリを開発することになった経緯や自身が導き出した禁煙論、そしてこのアプリの肝となる「アドバイス」に込めた強い思いなどを聞いてみた。

これから禁煙をしたいと考えている喫煙者はもちろん、かつて喫煙者だった人から非喫煙者の人まで、すべての人にタバコとは、禁煙とは、そして卒煙とは、というテーマでぜひ一読していただきたい。

■「卒煙」という言葉に込めた思い

今からおよそ2年半前の2017年夏ごろ、金澤氏は禁煙パイプの商品化を目指すプロジェクトに関わることになった。

禁煙パイプの製作をする上で、知人でもあった某広告代理店のデザイナーに、パッケージやパイプ(棒状の製品)、ロゴなどのデザインを依頼していたそう。現在のアプリ「SWAN 卒煙」のロゴや、SWAN(スワン)という言葉もこの頃に生み出されたものだという。


禁煙パイプの企画として進められていた当時のパッケージデザイン



パイプ自体のデザイン画。SWANの文字も入る予定だった

金澤氏は「そのデザイナーさんと話しているときに『禁煙ってやっぱり我慢だよね』っていう話になった。タバコを禁止されているような『禁煙中』というワードが、どうしても我慢しているイメージが強いから、我慢するのはやめようと。

デザイナーさんと一緒に話してて『卒煙』というキーワードが出てきて、それは『タバコからの解放』という意味です。我慢しないで、どうやってやめられるかということに挑戦したかった」と、当時のやり取りについて語ってくれた。

ほかの禁煙サポートアプリではメインとなっている「禁煙カウンター」機能は、タバコを吸わない日数や、節約できたタバコ代などが一覧できる。カウンターの数値を基にして、1日でも多くタバコを吸わない日を継続し、いずれは禁煙できるかもしれないというものだ。

この禁煙カウンターについて金澤氏は、「日付をカウントするやつって全然好きじゃなくて、それって我慢している日数をただ数えているだけ」と一刀両断する。

そこには「我慢は続かない」「どこかで吸いたくなる」「我慢しているのはもの凄いストレスでよくない」という考えがあった。

我慢を強いる「禁煙」ではなく、スムーズにやめられる「卒煙」を提唱する金澤氏は「タバコをやめたいと思いながら吸っている人は、やっぱりやめたいんだから、そこは助けられると思ったんですよね」と、当時の思いを語ってくれた。

しかし、金澤氏は禁煙パイプの試作をしていくうちに「これではタバコをやめることはできない。むしろ吸いたくなる」と感じていたという。

■もはや禁煙パイプはどうでもいい

禁煙パイプでは効果が得られないと思った金澤氏は、禁煙パイプに「冊子」の付属を考えた。「この冊子を読めば、タバコをやめられる」そんな内容の冊子を同梱して、禁煙パイプを売り出そうとしたのだ。

「禁煙系の色んな本を読み勉強して、どうやったらタバコをやめられるんだろうっていうのをひたすら考えてテキストに起こしていった」という金澤氏は、およそ3カ月間、禁煙について集中的に勉強したそう。

「タバコをやめられる冊子」を目指して猛勉強し、章ごとにテキストをまとめていった金澤氏は、次第に自身もタバコをやめれるのではないと思い始めたのだとか。

「書いていく中で、ぼくもタバコをやめてみようかなと思った。勉強しながらやめられそうだなと思って。その結果、自分の文章を読みながらタバコをやめたんですよ」

なんと、自らまとめた内容で、卒煙できてしまったのだというのだ。


金澤氏が勉強のために読んだという禁煙に関する書籍の一部

禁煙についての勉強に夢中になってしまった金澤氏は、当初想定していた「タバコをやめられる冊子」ではなく、書籍を作りたいという気持ちに変わっていったそう。

「禁煙パイプじゃタバコをやめるのは無理だと思ったから、本を読んでやめられるようにしようと思ったんですよ。途中からパイプはどうでもいいなって思ってました(笑)」

そしてなんと、本当に禁煙パイプの商品化がボツになってしまった。

香料などの問題から製品化が困難であるという理由で、禁煙パイプとして売り出されるはずだった「SWAN」は、実質お蔵入りとなってしまったのだ。

途中からパイプ自体はどうでもよくなっていたという金澤氏だが、実際に商品化されないことが決まった際は、かなりのショックを受けたのだとか。

「勉強して色々なことを考えていたし、既にタバコもやめていたから、商品化がボツになったときは『嘘でしょ?』って思って」

しかし、そんな金澤氏は、ボツになった瞬間にアプリ化しようと気持ちを切り替えたそう。「書きためてきたものがもったいないなと思って。本心パイプはどうでもよかったので(笑)」と、ぶっちゃけてくれた。

■たった15分で目的を完了させる

「SWAN 卒煙」はダウンロードした後、「アドバイス」の「卒煙の前に知ってほしいこと」を読み終えると、カウンター機能を使うことができ、アドバイス項目には「完全な自由のために」と「気が緩みそうなときに」という2項目が追加で出現する。

このアプリでもっとも重要なのは、およそ15分で読み終えることができる全17章の「卒煙の前に知ってほしいこと」だ。

金澤氏は「1章ずつ、ぼくの思いが相当詰まっています。第1章は禁煙じゃなく卒煙だよっていうことをちゃんと説明したかった。少しめんどうだけど、気軽に始めてほしいという思いと、ぼくはそっち(これからタバコをやめようとしている人)側のほうだよっていうことを伝えたかった」と話してくれた。


第1章「はじめに」では、「失敗しても失うものはありません」という一文が印象的だ

金澤氏いわく、勉強のために読んできた書籍の多くは「イライラした」そう。理由は、医者の必死さや、これからタバコをやめようとしている読者に対して全然寄り添ってこないという印象を受けたから。だからこそ、金澤氏は、できるだけ読者に寄り添った文章や構成、内容を意識したのだという。

第2章では「簡単」だということを、第3章では「卒煙」だということを、そして第4章では「まだ吸っててもいいよ」という意外な内容も盛り込まれている。

タバコをやめる上で、「やめる理由」を考えてはいけないという金澤氏。

「何かのためにやめるって我慢じゃないですか。子どものためにやめるとか、健康のためにやめるとか、家が汚れるからやめるとか、それは我慢なので。

じゃ、子どもが独立したら吸うのかとか、嫁がいないところでは吸うのかっていうことになってくる。なので、やめる理由は考えちゃダメだよということを伝えたかった」

一方で、金澤氏は、勉強のために読んだ書籍の著者であり、イギリスの禁煙活動家の故アレン・カーさんの考え方を参考にしているという。

「タバコをやめる理由ではなく、なぜ吸うかを考えろと言っているのは、アレン・カーさんなんです。

なぜ吸うのか?は、卒煙のキモです。なぜ吸うのかを考え続けると、やめられるんですよね。これが一番効くと思います」

そして、第8章から第14章までは、タバコを吸う理由を取り上げ、ひとつずつ丁寧にその理由を潰していっている。

さらに、最後の第17章では「最後の一本を吸おう」というまさかのタイトルが。タイトル通り、最後の一本を促す内容だが、実はここにも金澤氏の思いが込められている。

「これも、アレン・カーさんの本を参考にしました。アレン・カーさんも最後に吸わせるんですよ。それをインスパイアしています。

ここまでやって、これだけの内容を読めば、吸いたくないなっていう気持ちになってるはずなんです。

でも、そこで最後の1本を吸ってもらって、もう1回タバコと向き合って、ちゃんと想像してもらう。

いろいろ集中して、もの凄くマズイ1本を吸って、タバコとお別れをするという形で締めています」

各章ともそれほど文字数としては多くないが、むしろ必要最低限で伝えたいことを伝えているといった印象だ。全17章ではあるものの、約15分で読めるということは、1章あたり1分もかからずに読めてしまうということだ。

「全17章を読み終えて、吸いたくなくなっていれば成功なんですよ、このアプリとしては。約15分で吸いたくないなっていう気持ちにさせちゃえばもう完了で、ぶっちゃけカウンターもいらないんです。タバコをやめてから1カ月とか1年とか考える必要すらないと思っています。

もしまだ吸いたいなと思うことがあれば、もう1回読み直してもらって理解を深める行為をしてもらったほうがいいです。なぜ吸いたいのかを改めて考えて、例えばリラックスしたいとかそういう理由があるなら、該当する章を読んで気持ちをスイッチさせてほしいです」

■抜群に高評価なアプリに

実は筆者はこのアプリがリリースされるおよそ1年前にタバコをやめている。そのため、残念ながらこの「SWAN 卒煙」で卒煙を実践することはできなかったのだが、それでも「卒煙の前に知ってほしいこと」を読んだときは、これはスゴい!と強烈な印象を受けたことを覚えている。

App Storeでのレビューも軒並み高評価で、検索順位も上位で表示されるようになっている。ちなみに「禁煙」で検察した場合は、「SWAN 卒煙」よりも前に公開されたアプリを抑えて、2番目に表示されるまでになった。


App Storeでは、評価が高いアプリは検索順位が上位に表示される仕組み

そんな「SWAN 卒煙」は、無料なだけでなく、広告も表示されない仕様だ。ほとんど収益にはなっていないそうで、趣味アプリレベルだというが、これほど高評価を得ているのにもったいなく感じるのは筆者だけではないだろう。

事実、App Storeのレビューでも「アプリ作成者の方にお金払いたいくらい感謝している」とのコメントもあるほどだ。

金澤氏によると「本当に使ってみてよかったら『チップ』からお金を払ってください。アプリ内課金として490円払えるんです。タバコひと箱分の金額です」とのこと。


チップは1回のみだが、アプリ製作者への感謝の気持ちとして活用できる

アプリ内の「設定」→「チップ」をタップしていくと490円の課金ができる。もっと払いたいという人がいても、現在の仕様では残念ながら1回のみ490円のみだが、アプリ開発者である金澤氏に感謝の気持ちを届けることができる。

■喫煙者は本来やらなくていいことをやっている

最後に、かつて喫煙者だった金澤氏にタバコをやめて変わったことを聞いてみた。

「タバコを吸わないほうが楽です。まずタバコを買わなくていい。毎日コンビニで買っていたじゃないですか。買いに行かなくて済むようになりますからね。

あと、2時間に1回くらい席を立ってたばこを吸いに行ってたじゃないですか。それもめんどうじゃないですか。

例えば、2時間に1回このボールをあそこの部屋に入れてきてくださいって言われたらなんでやねん!って話じゃないんですか。

しかも5分間、そこの部屋で立っててくださいって言われたら、なんでやねん!ってなるじゃないですか。

そんなようなことを喫煙者は日々やっているし、タバコをやめればそういうことをやらなくて済むようになります」


アプリ名:SWAN 卒煙
価格:無料
カテゴリー:ヘルスケア/フィットネス
開発者:Rigato, inc.
バージョン:2.0.4
iTunes Store:https://itunes.apple.com/jp/app/id1329630669?mt=8





記事執筆:2106bpm(つとむびーぴーえむ)


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