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9月11日、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)政権は、わが国政府の特定3品目の対韓輸出管理見直しについてWTO(世界貿易機関)に提訴した。

韓国は、わが国の対応は元徴用工問題への政治的報復であると主張している。わが国は韓国との信頼関係が著しく悪化し、安全保障上、軍事転用が可能な資材の輸出を厳正に管理するため対韓輸出管理を見直した。これはWTOルールに則った判断だ。

一方、やや長めの目線で考えると、文政権の対応は自国経済に大きなマイナス要因になることが懸念される。世界経済の減速傾向や、自国の最低賃金を大幅に引き上げるという経済失政によって韓国経済は痛手を受けており、今後の展開次第では、韓国経済がさらに厳しい局面に追い込まれる可能性は高いとみる。

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支持率維持に奔走する文大統領

足許、韓国では、数々の不正疑惑にまみれる者国(チョ・グク)氏が法相に強硬任命されたことをめぐり、世論が二つに分れている。文大統領にとって重要なことは、者氏の法相任命を市民団体などが支持していることだ。来年4月の総選挙を控える中で、文氏は市民団体などから更なる支持を得たい。

さらに、2022年5月、韓国では大統領選挙が実施される予定だ。文氏は大統領選挙後も革新(左)派の政治路線が続くようにしておきたい。それができなければ、過去に繰り返されてきたように革新派から保守派へ政権が移行し、前政権のトップなどに捜査の手が及ぶ可能性がある。それは、大統領任期を終えた文氏の平穏な生活を脅かすだろう。

11日に文政権がわが国をWTOに提訴した背景の一つにも、支持層へのアピールがあるはずだ。元徴用工問題などに関して、韓国の市民団体などは一貫してわが国を批判し続けている。文氏は、わが国が元徴用工への損害賠償問題への報復として特定3品目の輸出手続きを厳格化したことが不当、かつ貿易制限的であると主張し支持につなげたいのだろう。

しかし、この主張が国際世論の支持を得られるとは考えづらい。WTOは各国が安全保障上の利益を守るために必要な措置がとれるとしている。わが国は、この考えに基づき輸出管理手続きを見直し、厳格化した。更に、韓国経済にとってわが国との関係維持は、まさに“生命線”というべきものだ。日韓関係を軽視する文政権の発想には、かなり危うい部分がある。

自国経済にマイナス…文大統領の経済・外交政策

韓国経済には輸出依存度が高く、個人消費の厚みを欠くという特徴がある。言い換えれば、外需頼みの側面が大きいため、経済の安定感が乏しいといえる。米中の貿易摩擦の影響から、韓国の輸出は大きく減少している。加えて、韓国の家計債務も増大傾向にある。世襲経営の限界などから、経営難に陥る財閥企業も出ている。

この状況下、韓国の企業業績への懸念が高まっている。世界的な半導体市況の悪化や中国の粗鋼生産量の増加など、韓国経済を取り巻くリスク要因は増大傾向だ。その見方から、大手信用格付け業者からは韓国企業の信用力が低下傾向にあるとの指摘がなされている。日韓の関係悪化もそうした懸念を高める要因の一つだ。

エレクトロニクス、石油化学分野を中心に韓国経済はわが国の技術に依存して生産力を高めてきた。本来、韓国は国家間の合意に基づき、わが国との関係を強化すべきだ。このように考えると、WTO提訴をはじめ対日強硬姿勢を強める文政権は、自分の首を自分でしめつけているといえる。所得環境が悪化すれば、市民団体なども政権批判に転じる恐れがある。

わが国は、じっくりと時間をかけて国際世論に自国の行動の正当さを明確に伝え、より多くの賛同を獲得すればよい。すでに米中は韓国を真剣に相手にしなくなった。WTO上級委員会の体制も整っていない。審議が長期化するにつれ文政権はいら立ち、わが国を更に批判するだろう。その姿勢は、韓国経済を真綿で首を絞めるような状況に向かわせる恐れがある。