先月31日をもって、全国の大手コンビニで成人向け雑誌販売が中止された。理由として、女性と子どもが安心できる店舗作りの一環、東京オリンピックで増加する外国人観光客への配慮などが挙げられている。

 1980年代から販売が続いてきたコンビニににおける成人誌の扱いをめぐっては、東京都が2001年に「区分陳列」(ゾーニング)を義務化。2004年には日本フランチャイズチェーン協会による「成人誌取り扱いガイドライン」に基づく対応が始まり、立ち読み防止のシール留めが義務化。2017年3月、大阪府堺市が独自包装で表紙の"目隠し"をスタート、2017年11月、ミニストップが千葉市からの働きかけをきっかけに取り扱い中止を発表している。そして今年1月、セブンイレブンやローソン、ファミリマートなどのコンビニ大手が取り扱い中止を発表した。

 アダルトビデオやネット動画の出現などにより、これまで何度も存続の危機に瀕してきた成人向け雑誌。Netflixのドラマ『全裸監督』で話題沸騰中の村西とおる監督は、かつては成人誌制作によって"ビニ本の帝王"と呼ばれた。当時のことについて、「私は成人誌の申し子みたいなもんだから。自分の生きるための種、源泉だった」と振り返る。

 時代に食らいつき、なんとか今まで生き残ってきたが、今回の措置により、出版社は苦境に立たされているようだ。ソフト・オン・デマンド出版事業部の福田健吾編集長は「売上の比率がコンビニと書店では9:1くらいの比率だった。全国5万店以上ある大きな販路が一斉になくなってしまうのは痛手。出版社としては死活問題」と話す。

 アダルトメディア研究家の安田理央氏は、「理由としては色々あるが、そもそも売れていなかったということが一番大きいと思う。売れていればコンビニもなんとか継続していた可能性はある。ただ、"シール留め"以降は立ち読みができなくなったため、表紙だけで戦わないといけなくなった。そこで情報を表紙に集約させようとした結果、おしゃれな表紙だった雑誌でもえげつない見出しがバーっと載ってしまうようになった。それで余計に嫌われていったということもあると思う。正直な所、成人誌はメディアとして寿命を迎えてしまったと思う。多くの出版社は成人誌の制作をやめるかお年寄り向け、漫画だけ、あるいはクロスワードパズルを作ったりしている。一方、電子書籍や女性向けのものが収入になっていたりするので、成人誌的なものは時代に合わせて他の形で生き延びてくれればいいかなと思う」と話す。

 実際、コンビニでの販売中止についてのアンケートでは、賛成が66.5%、反対が33.5%という結果が出ている。

 「表現の自由を守る会」会長も務める自民党の山田太郎参議院議員は「堺市や千葉市での成人誌撤去が議論になったときにも反対運動を相当やったが、今回ばかりは時代の変化なのかなと思う。実際、売り上げも減っているし、コンテンツがネットに移っていく中での変化も大きいと思う。また、最近では"言われると面倒くさいのでやめておこう"という空気感もあるし、日本も厳しくなるグローバル基準を踏襲しようという動きも出てきているので、そうした影響もあるのではないか」とお話す。

 紗倉まなは「私は在学中にデビューしたが、学校の前にあるコンビニに初めて自分の成人誌が並んだ時、みんなに見てほしいと思って、いけないと思いつつ、棚の後ろの方にあったものを前に持ってきてしまった。そのくらい嬉しかった。もちろん成人誌に出たくないという女優さんもたくさんいらっしゃるが、私にとっては青春だ」と振り返りつつ、「ゴシップ系雑誌や実話系雑誌の表紙な内容にも扇情的なものは多いし、"アートならOK"みたいな印象もある。そこの線引きがよくわからない」と指摘する。

 成人誌の区分には、地方自治体ごとに指定される「有害図書」(東京都では「不健全図書」)、出版社側の判断で「18禁マーク」を添付し、書店の成人コーナーのみで販売する「表示図書」、そして日本フランチャイズチェーン協会の基準のもとコンビニ各社が決定、自主規制として青いシール留めをして区分陳列(ゾーニング)される「類似図書」(18歳以上の購入が推奨)がある。

 こうした定義について、安田氏は「18歳以上が読むものが成人誌だと考えると、実はコンビニで売っていたものは成人コーナーに置かれているだけで18禁マークがついていないので、別に読んでもいい。基本的には自主規制の部分が大きいので、実態は変わってないと感じた方も結構いると思う」、山田議員は「もともとの目的は、未成年に見せないようにということで、"のぞましくないもの"を公権力としては条例、出版社側は自主規制、コンビニチェーンをはじめとした流通企業側は類似図書を決めた。勘違いしないでほしいのは、大人は全部OKということだ。それが最近では、こういうものを置くことがいけないものであるような感じが進んできていて、それはちょっと行き過ぎていると思う。表現の問題ではBL(ボーイズラブ)が狙い撃ちされていて、東京都の青少年健全育成条例で規制されているのはほとんどがBLだ。担当官が書店に行って集めてきたものを年間100冊くらい、審議委員と議論する。みんなで見ながら"これはアカン"と。こんな原始的なやり方をして有害図書としてBLばかりが規制されている。"一括指定"といって、エロいシーンが何%以上とか、色々な基準を勝手に決めて"ダメだ、ダメだ"と」言っているとコメントした。

 MCの乙武洋匡氏に「自分の出ている雑誌が有害図書に指定されたとしたら、どう思うか?」と尋ねられた紗倉は「女性や子どもの目に触れたとき、"えっ。うっ"と詰まるような感覚になるのはわかる。自分はこういう仕事をしているので寛容になっているだけで、世間一般から見れば有害だと思われても仕方がないとは思う。それでも出版社の方々が一生懸命に誌面を作っている姿を見ているし、どうしても日陰の存在だと感じられてしまうことは純粋に悲しい」と胸の内を明かした。

 さらに最近では青年誌の水着グラビアへの規制を訴える声もあることについて山田議員は「何でも公序良俗の問題に入ってきてしまう感じがする。男の人からすれば美しくて見たいものでも、ある人にとっては見たら嫌なものもある。ただ、たとえば私は納豆が嫌いで見るのも嫌だ。それなら見たくない人が見えないようにしていればいい話で、その工夫ができるかどうかに尽きると思う。何でもかんでも嫌なものは排除してしまえということになってしまったのではないか」と懸念を示した。

 また、先月には、クレジットカードの決済代行会社が大手同人誌サイトの運営会社に対し取り扱いを中止しないと取引を停止するという要請をしたため、カード決済ができなくなるという事態が起きた。山田議員は「最近は雑誌から電子になっているので、電子決済が必要になる。そこでクレジットカードが使えなくなるということは、実質的に買えなくなってしまうということだ。最近、アダルトコンテンツだけではなく、GAFAをはじめとした巨大プラットフォームが好き嫌いで商品を選ぶようになった。皆さんにちょっと考えてもらいたいが、AppleIDが使えなくなったら日本円を持っていても悲劇だ。そういうことが電子の世界では加速化している」と話していた。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)