東京23区ー。

東京都の中心となる23の「特別地方公共団体」の「特別区」のことを、私たちは東京23区と呼ぶ。

23ある中の、どの区に住んでいるかによって、その人の傾向や特徴は如実に表れるもの。

料理研究家として活動する青柳里香(28歳)が、各区の男たちとデートを重ねることで感じた、それぞれの特徴と生態とは・・・?

前回は、渋谷区スタートアップ系男子、絶対王者港区男子や千代田区プリンス、幸せに葛藤する江東区タワマン男子や東京の真髄・台東区男子見てきた。今週は?




「墨田区、かぁ」

ヒロシから送られてきたリンクを見て、私は小さくため息をついた。なかなか行くこともなく、両国国技館やスカイツリーのイメージしかない墨田区。

正直、びっくりするくらいキラキラ感はないと思っている。だがヒロシは、あえてその“墨田区”でのデートに誘ってきた。

先週のデートで行った台東区のように、浅草や上野などシンボリックな駅もなければ、港区や渋谷区などの華やかさもない。有名な繁華街といえば「錦糸町」という、ものすごくディープなエリアだ。「何だか説明がしづらい場所」と、私は一人で呟く。

「墨田区に住んでいるのか・・・」

都内でも、五反田などよりも更に家賃が安いイメージがある。

目黒で開催された食事会で出会ったヒロシは、一次会ですぐに帰って行ったし、どこか飄々としていた印象がある。

ー今日一回のデートで終わりそうだなぁ。

勝手に、そう思っていた。だが、私は気がついてしまったのだ。

この墨田区は、婚活女子にとって一度その価値を見直すべき男性の宝庫であることに。


墨田区男子は玉の輿の宝庫!?意外過ぎるリッチな住人たち


待ち合わせ場所に指定されたのは、銀座線の浅草駅。

ーあれ、浅草ってこんなに近かったっけ?

なんとなく遠いイメージの浅草だったけれど、あっという間に到着したことに驚きながら、観光客と同じように浅草駅前の風情を楽しんでいる時だった。

「里香ちゃん、お待たせ」

颯爽と現れたヒロシが、挨拶もそこそこにこんなことを提案してきた。

「ここからはタクシーで行こうか。里香ちゃん、こっちの方にはほとんど来たことないって言ってたよね?今日はせっかくだから俺の住んでる街を見てもらいたくてさ」

タクシーが水戸街道を走り始めると、10分も経たないうちに向島に着いた。

「あ、この辺で止めてください」

ヒロシは運転手にそう告げるとチラリと私の方に視線をよこす。

「この辺りは完全に住宅街なんだけど、そんな中にも美味しいレストランがあるんだよ」

そう言って案内されたのは、向島にある『onda』という店だった。




「あ、里香ちゃん。道、迷わなかった?」

そう言いながら微笑むヒロシは、ボタンダウンのシャツを上手く着こなしており、何となく品が漂う。

「ここ、よく来られるんですか?」

「うん。親父とかお袋とも来たりするよ。まぁ両親と一つ屋根の下に住んでて毎日顔あわせてるから、一緒に来るのはたま〜に、だけどね」

ヒロシは、実家を継いでいるとだけは聞いていたが、一緒に住んでいるとまでは聞いていない。

「へぇ・・・ご実家住まいなんですね」

家業を継いでいるため中小企業の次期社長候補。墨田区在住の34歳、独身で実家暮らし。

実家暮らしと聞いて、ちょっと複雑な気持ちになっていた。だがこの後私は、人生観を変えられるほど、ヒロシからとても大切なことを学ぶことになるのだ。

「墨田区って、何もないでしょ?それがまたいいんだけどさ」

デート開始早々、そう言い始めたヒロシ。その口調がとてもカラッとしており、私も思わず笑ってしまった。

「そうですね。あまり来ることがないかもしれません・・・すみません」

素直にそう伝えると、彼は大きな口を開けて笑う。

「まぁカッコつけようがないからね、墨田区は。でも地域の人たちがみんなで子育てするような風潮があって、未だに昭和の香りがここには残っているんだよ。隣の子供でも、怒る時は怒るし(笑)」

「え〜そうなんですか!?それって、すごいことですよね」

このご時世、自分の子供さえ怒らない親も増えている。

ましてや他人の子供を怒ったりしたら、その親から何を言われるかも分からないため、見て見ぬフリをする人が増えている。

「それって悲しいことだよね。子育ては地元で、地域でみんなで協力していかないと」

いつの間にか、私はヒロシの話に熱心に耳を傾けていた。

「里香ちゃんは、お歳暮とかちゃんと送ってる?」

「お歳暮ですか?恥ずかしながら、ちゃんとできていなくて・・・」

最近は年賀状さえ出さなくなってきているし、正直、送り先を知らない人も多い。

「そっかぁ。この近くに旨い海苔屋があってさ。お歳暮とか季節の挨拶とかに最高だから、使えるかなぁと思ったんだけど。でもね、里香ちゃん。お歳暮とか意外に大事だよ」

-あら?この方、人としての節度や礼儀がものすごくきちんとしているんだなぁ。

デート開始から、早一時間が経過しようとしていたが、すっかり私は彼の人間性に吸い込まれていた。


結婚するならかなりオススメ!好条件の墨田区男子の隠れ資産とは?


すっかりヒロシワールドに引き込まれている間に、食事は終わってしまった。“この後どうしようか”なんて話しながら歩いていると、不意に「ヒロシ」と呼ぶ声が聞こえた。

「あれ?ヒロシじゃん。何、デート?」

地元の友達だろうか。ヒロシと同じくらいの年齢の男性が、手を振りながら向こうから歩いてくる。

「おぉ、竜介。そうなんだよ、ちょっとね。昨日はありがとう。奥さんの智恵子ちゃんにも宜しく言っといて」

軽く談笑している二人を見ながら、私の脳内で急に朝の連続ドラマが再生され始めた。

さっきからずっと感じていた懐かしさは、“朝ドラの雰囲気”なのかもしれない。

登場人物たちは、とびきりお洒落でもなければ、華やかなパーティーにも無縁かもしれない。

でも家族や仲間を大切にし、人として大切なことを知っていて、毎日一生懸命、全力で生きている。

この街にいると、自分が今まで見てきた世界がいかに沢山の見栄と嘘で出来ていたかがよく分かる。

「ごめんごめん。アイツ地元の友達で、昨日彼の家でご飯食べたんだよね。奥さん、料理上手で。里香ちゃんは料理研究家だから、料理得意そうだよね!いつか食べてみたいな〜」

とっても自然体で、何も見栄を張らないヒロシ。

そして港区界隈に蔓延る、根無し草のような、常に何かどこか不安を抱えて走り続けていないと死んでしまうような不安なエネルギーが、彼からは一切感じないのだ。




「友達のお家に、よく遊びに行くんですか?」

「うん、そうだよ。みんな家も近いし、基本的に僕みたいに家業を継いでる人が多いから、時間も比較的合わせやすいしね。それに、無駄に高くてキラキラしたレストランよりも家のご飯の方が美味しくない?」

ヒロシの発言に、私は曖昧に頷く。今までデートしてきた人たちで、ここまで自然体な人がいただろうか。

「ヒロシさんって本当に素直ですね・・・そんな風に言う人、今まで周りにいませんでした」

「う〜ん、そもそも、物とかに興味がないからかも?だって、車だって道が狭いから大きいと普通に運転が大変だしね(笑)」

無駄なブランド物などで虚勢を張るなんて、ここでは通用しない。一番大事なのは、自分や家族がいかに幸せでいるか。

そんな基本的な、でも大事なことを、彼らは生まれてからずっと学んでいる気がしてきた。

「そう言えば、どうして未だに実家住まいなんですか?」

最初に疑問に思っていたことをぶつけてみる。

ここで、私をはじめとした世の中の婚活女子の既成概念が大きく崩れ落ちるのだ。


里香が気がついた、本当の豊かさとは!?


「え?だって、実家がそこにあるし、わざわざ1億とか払って家とか買う必要なくない?それに二世帯だから生活は完全に別だし」

「あぁ」と、私は小さく唸った。

東京の根無し草は、一生懸命働いて年収1,000万以上を目指し、そして都内の高級マンションをローンで買う。

1億円の家を買ったならば、1億円分働かなければならない。

だが彼は既に家があって、家のローンなど一切ない。

つまり、収入の大分部を家賃にもっていかれることがない。ブランド物も必要ない。従って、異常に貯蓄もあるのだ。

都心に出にくく、乗る電車をうっかり間違えたりすると栃木に行ってしまうような街とはいえ家のローンもなく、物欲もないなんて、これ以上に最強の男がいるだろうか。

「里香ちゃんは、結婚願望あるの?」

そんなことを考えていると、不意に脳内を見透かされたような質問をされ、私はただ大きく頷くことしかできなかった。




「そっかそっか。“港区ママ”みたいな煌びやかさはないけれど、子育ては両親も助けてくれるし、いいと思うけどなぁ。それに両国中学校とか、両国高校とか良い公立もあるから、環境もいいし」

ずっと私学で育ってきた私にとって、その考え方は新鮮だった。

きっとここには、“〇〇さんのお子さんはドコドコの私学に受かった”とか、小学校受験からギスギスするようなことは皆無なのだろう。

「次、どこへ行こうかなぁ。そう言えば、さっき話してた海苔屋はここね」

歩きながら、色々と説明をしてくれるヒロシ。地元愛がよく伝わって来る上、よそ者の私にもこの街はとても優しい。

東京は、時に冷たい。

そう思っている人たち全員に、墨田区を薦めたくなってきた。

「本当?そう言ってくれると嬉しいよ。まぁ里香ちゃんも色々とあるかもだけど、幸せは自分が決めるものだからね」

そう言って、またニカッと笑うヒロシ。

その笑顔はとても明るく、真の豊かさを私は知ったのだ。

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【墨田区男子まとめ】

・地元密着型が多い
・街を歩けば大体友達、地域の皆で子育てに参加中
・“金は天下の回りもの”と思っており、使う所には使う
・おしゃれをしても無意味
・災害への意識は高め
・新規移住者にが馴染みにくい

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お待たせしました!遂に練馬区男子登場