「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「選ぶ」、「選択」「人選」の「選」。今年の夏は、この国の未来を決める、大切な選挙が行われます。今回は「選」に込められた物語を紹介します。



「選」という字は「巽(たつみ)」と書いてしんにょうを書きます。

この「巽」という字は、己を二つ並べてその下に「共同」の「共」、「共(とも)」と書きます。

白川文字学でおなじみの白川静博士はこの部分を、神前の舞台で人が二人並んで舞う姿を描いた様子だと解釈しています。

この舞は神に奉納し、神の降臨を願う神聖なもの。

二人の巫女が動きを美しくそろえて舞うことから、「そろう」という意味をもつようになります。

もちろん、神の前に立つ者は選ばれた人。

そこから「えらぶ」という意味にもなったのです。

神楽鈴を手にした二人の巫女が舞う、いにしえの祭り。

雨を降らせて欲しいと、天上に向けて鈴を鳴らし、大地にいのちを根付かせようと、足を踏み鳴らします。

からだの動きはもちろんのこと、二人の志がひとつでなければ、神さまに願いを届けることはできません。

選ばれた者として身も心も神に捧げ、人々の暮らしを救おうとします。

二人は、人知を超えた大いなる存在と向かい合い、力をあわせて、その責任を果たそうとしたのです。

「選」という漢字のなりたちをひもとくそのとき、混沌とした時代の今、私たちが何をなすべきなのか、その責任を考えてみる必要がありそうです。

ではここで、もう一度「選」という字を感じてみてください。

私たちが当たり前のように手にしている選挙のための一票は、先人たちの長きにわたる努力のたまもの。

たった一枚の紙切れだけれど、確かな力をもっています。

私たちは、日々何かを選ぶことを迫られています。

パンにするか、ご飯にするか。

赤いブラウスにするか、白いシャツにするか。

この人と一緒になるのか、ならないのか。

朝夕の食事から結婚まで、自分自身で選ぶことで人生の行方がきまるのです。

この夏、私たちは冷静な選択を迫られています。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。

その想いを受けとって、感じてみたら……、

ほら、今日一日が違って見えるはず。

*参考文献

『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)

7月2日の放送では「舌」に込められた物語を紹介します。お楽しみに。

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<番組概要>

番組名:「感じて、漢字の世界」

放送エリア:TOKYO FMをはじめとする、JFN全国38局ネット

放送日時 :TOKYO FMは毎週土曜7:20〜7:30(JFN各局の放送時間は番組Webサイトでご確認ください)

パーソナリティ:山根基世

番組Webサイト:http://www.tfm.co.jp/kanji/