(イラスト:ナツコ・ムーン)

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親の介護で後悔しないためには、どんな心構えや備えが必要なのでしょうか。専門家2人がさまざまな疑問や困りごとに答えます(構成:山田真理)

一人暮らしの親を見守りながら自分の時間を確保する方法は?

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【介護の基本】
Q. 離れて暮らす親の様子が以前と違う。これを機に同居するか悩んでいます

今までと同じ距離を保つ

高齢の親の心配ごとが増えてくると、自分の家の近所に呼び寄せたり、同居したりしたほうが安心だ、という方がいらっしゃいますが、私自身はおすすめしません。

住み慣れた土地を離れることで親の認知症が進んでしまったり、子どもが頑張りすぎて倒れてしまったり。つまり、物理的にも精神的にも「親が元気な時と同じ距離を保つ」のがベストなのです。

私は在宅・施設介護職員を経て、現在は企業で働く人を対象に介護相談を受けています。その経験から、「介護は家族が頑張るもの=親孝行」というかつての価値観とは逆のやり方のほうが、親も子に幸せになれると考え、「親不孝介護のすすめ」を提唱するようになりました。

いまや100歳以上の高齢者は、9万人を超えています。本格的に介護が始まる人の割合が急増するのが85歳ですから、介護が10年以上続く場合も。

親孝行な人ほど「今の生活のどの時間を『削って』、親の面倒を見るか」と考えがちですが、その状態が長く続けばいつか無理が生じます。時間や労力が奪われる感覚が続くことで、親子関係が悪化するケースも非常に多い。

それよりも、「毎週この時間は『余って』いるから、そこで実家に顔を出そう」と考えるほうが心の余裕が生まれ、親に対しても優しく接することができるのです。

また、離れて暮らす親が心配で、最初から手厚いサービスを受けさせるご家族もいらっしゃいますが、これも実は本人の自立を妨げたり、心身を弱らせたりするリスクがあります。

たとえば実家を訪ねた時、母親がコンビニで買った小さなお弁当を食べていたとします。子どもとしては、「料理が好きだったのにお弁当なんて」「栄養は足りているのかしら」と心配になるでしょう。

しかし実際は、これまで母親は家族のために料理を頑張っていただけかもしれません。そしてご飯は食べているので栄養面も問題ない。それなのに慌てて食事配送サービスを申し込んだり、「私が作りに行く」と手を出したりしたら、買い物という外出の機会を奪ってしまうことになります。

このような「やりすぎ介護」を防ぐには、親の生活に深入りしすぎず、普段通りの距離を保つことが何より大切なのです。


<親の行動チェックリスト>(リストを拡大)

家族で話し合う機会を

親が長く穏やかに生活するために子どもがしてあげられるのは、「親自身がどんな不便を感じているのか、第三者であるプロに伝えること」。

そして、「実際のケアの内容や実務はプロに任せて、子どもは普段通りに接すること」。この2点です。

では、具体的にどうすればよいかというと、親の様子が心配になったら、親の家の近くにある地域包括支援センターに連絡しましょう。相談のタイミングの目安は、上のチェックリストを参考にしてください。

最初に伝えることは、「親がこういう状況です」程度でかまいません。その時に、「家族が不安なこと」と「本人が困っていること」を整理して説明できると、話がスムーズに進むと思います。

すぐに介護が必要な状態ではなくても、「一人暮らしの高齢者がいる」という情報を地域包括支援センターに伝え、適切なタイミングでケアに入ってもらうのが家族の役目。実際に介護が始まったら、ある程度ケアチームに「お任せ」すると、いい関係を築けるでしょう。

《いいケア》を受けてもらうために必要なのは、本人が何を大事にして生きたいのかを、早めに共有しておくことです。

子どもは総じて、《親》という鎧を着た姿しか知らないもの。そこを乗り越えるのはハードルが高いですが、「私は将来こういう生活をしたいと思っているけど、お母さんはどう?」など、助言を求める体で聞いてみるといいかもしれません。

何をしている時が楽しくて、何が嫌なのか。それさえわかっていれば、ケアマネジャーも本人に合わせたプランを作成しやすいはずです。

私が介護の仕事を始めた20年前は、今以上に娘や息子の妻といった女性に負担が強いられていました。それを経験した親世代は、「子どもに迷惑をかけたくない」と思う人が多い。

しかし、老いは必ず訪れます。だからこそ、「何が子どもにとって迷惑か」「どんなことなら頼ってもいいと思うか」「自分が譲れないものは何か」を具体的に考え、家族と話し合う機会を持っていただきたいのです。

親の心身の変化に応じて、お互いにとっていい方法が何かを考え続けること。そして介護を頑張ることが目的にならないよう第三者に頼り、心の余裕を持って親の不安に寄り添ってあげること。それが最も「親孝行な介護」ではないかと思います。