(※写真はイメージです/PIXTA)

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毎晩残業して成果を上げ、周りからは「順調だね」と評価されている。それなのに、なぜか日々の生活に追われ、自分の将来のことを考えると不安で思考が止まってしまう――。そんな違和感を抱えているなら、それは他人の価値観にあなたの人生を合わせすぎているサインかもしれません。本記事では、佐野創太氏の著書『70%で働く 「もっと頑張る」から脱出する働き方の思考法』(日経BP)より、複数の事例をとおして、「自分にとってちょうどいい働き方」を探るコツを解説します。

「潰れない管理職」は、あえて自分の手を引く

以前、とあるIT企業で「エース社員が退職しない組織づくり」を目的とした組織開発の支援をしていたときの話です。私が、「潰れない管理職って、どんな共通点があるんですかね?」と尋ねたら、こんな答えが返ってきました。

「潰れない管理職は、“引き算”ができる人です。潰れる管理職は“掛け算”で考える。自分が率先して2倍働けばいいと思うんです。でも、潰れない管理職は“引き算”で考えて、部下が気持ちよく動けるように、自分の手を引くんです」

「何割くらい引くんですか?」と聞いたところ、「最初は2割くらいで十分」とのことでした。

この「引き算の発想」は、「70%で働く」という考え方とも重なります。管理職になりたては特に、つい「全力で」「完璧に」と自分にプレッシャーをかけがちです。でも、あえて余力を残すことで、緊急時の意思決定やチームの調整、次の戦略の検討など、重要な判断に集中できます。

無理がある「プレイングマネージャー」という働き方

プレイングマネージャーという言葉がありますが、これほど疲弊する考え方はないのに、会社ではよく使われます。自分の目標は減るどころか増えるのに、部下やチームのマネジメントもする働き方です。

この働き方に疲れきった管理職の相談者のDさんと「引き算の働き方」を一緒に考えました。Dさんは部下のクレーム処理をすべて引き受けていましたが、やめました。

「メンバーに感謝はされるんですよ。“Dさんがいて助かりました”って。でも、あるとき気づいたんですよ。誰も成長していないって。なので“まずひとりで対応してみて。そこから一緒に考えましょう”と伝えました。意外とできちゃうもんなんですよね。引いてみてよかったです。役員にも“ようやく管理職の自覚が出てきたな”と評価されもしました」

いつでも「全力で頑張る」だけが、選択肢ではありません。「働き方を見直す」ときには、「やらないことを増やす」ことがよくあります。完璧主義にこだわらず、力を分配することは、自分の持続力を守るだけでなく、チームや会社の期待に応え続ける働き方でもあります。

自分にとって「ちょうどいい働き方」は他人に理解されない

働き方は本来、自分のことですが、私たちはつい周りの目を気にしてしまいます。その結果、自分にとって「ちょうどいい働き方」から遠ざかることがあります。そこでまず、【優先順位を見直す】をテーマに、自分の人生において何が大切なのか、そしてその優先順位はどうあると心地よいのかを考えていきます。

とはいえ、今すぐ優先順位の答えを出す必要はありません。まずは読み進めていただきながら、ぼんやりとイメージを膨らませてみてください。「決まったら動き出そう」とすると、ずっと立ち止まることになります。大事なことほど後でわかります。

同じキャリア・仕事のスキル、働き方が対照的な2人

以前、キャリア相談で、大手企業、とくに営業職で仕事中心の働き方をしている2人の方、EさんとFさんにこんな話を聞いたことがあります。2人ともキャリアや仕事のスキルはほぼ同じ。ですが、働き方や価値観は大きく異なっていました。

Eさんは、社内での評価も高く、仕事に大きな不満はありません。しかし、生活費に追われ、毎月の支払いに不安を感じ、こう話していました。「このままではまずい。でも何を変えればいいかわからない。仕事の計画は立てられるのに、自分の将来のことになると思考が止まる」

一方、Fさんは笑顔でこう話します。「友人や親には出世競争に負けたって言われるけど、私は出世コースから降りて、今がいちばん幸せ。転職したらがつっと給料は下がったけど、副業で収入は増えた。昔の友人には理解されないけどね」

商店街を歩けば「おーい、Fさん!」と声をかけられる。わが子と同じ園に通う子どもに手を振る。顔なじみに「元気そうだな」と言われる。「会社で働く道」から外れた働き方を選んだことで、こうした日常を過ごせるようになった今がFさんの「ちょうどいい働き方」だそうです。

EさんとFさんの話が教えてくれるのは、「キャリアは他人に理解されない」ということです。自分にとって心地よく、無理なく持続できる働き方を見つけることこそが、キャリアの本質なのです。

充実した人生を送るヒント

たとえば、毎晩残業して頑張っても、同僚や上司にその苦労のすべては見えません。問題が起きなければ、「順調だ」と思われるだけで、実際にあなたが抱えた迷いや調整の大変さは伝わらないことが多いものです。家族に「仕事が大変だ」と話したとしても、苦労は伝わりづらいです。成果や昇進の喜びは理解してもらえても、緊張やストレスの積み重ねは自分で抱えることになります。

つまり、キャリアの全体像を理解できるのは、自分自身だけ。だからキャリアは、「他人からの理解」ではなく、「自分の納得度」で考えることが大切なのです。

周りに理解されない働き方を選ぶと、時に孤独を感じたり、不安を覚えたりするかもしれません。しかし、「理解されない」ということは、他人の価値観にとらわれず、自分らしい道を歩んでいる証拠でもあります。あなたが心地よさを感じ、充実しているならば、その感覚を信じ、大切にしていいのです。

とはいえ、「自分がどんな人間かわからないのに働き方をガラッと変えるなんてできない」と感じるかもしれません。しかし、答えは動きながら見えてくるので大丈夫です。

組織行動論の専門家であるハーミニア・イバーラの著書『ハーバード流キャリア・チェンジ術』には、こう書かれています。

自分がどんな人間で、何をしたいのか。この答えが初めから分かっていれば、キャリア・チェンジはずっと簡単になるに違いない。充実した職業人生を送る鍵は「自分を知ること」だとよくいわれる。だが人は常に成長し変わっていくものだから、実際にはその鍵は目的地で手にできる褒美なのだ。

─―『ハーバード流キャリア・チェンジ術』P212

自分にとっての「ちょうどいい」を追求するとストレスからも解放され、結果的に、高いパフォーマンスを維持することもできます。それは、あなたにとっても会社にとっても、あなたが大切にしたい人にとっても、最高の成果につながる状態です。

佐野 創太

「退職学(R)」研究家/メルマガ「キャリアの休憩室」編集長