東北大学が”留学生だけ「授業料免除」対象外”で聞こえる悲痛の声…学生が憤る”ムチャクチャな制度変更”とは

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【前編記事】『東北大の学生たちが「生活保護より低い支援になった」と悲痛の告白…政府が進める「国際卓越研究大学」制度に隠された「不可解な変更」』より続く。

突如として支援対象から「留学生」を対象外に

博士課程の学生を支援する制度として知られるのが、生活費や研究費などで年間180万円から290万円の支援を3年間受けることができる、科学学術振興機構(JST、文部科学省が所管)の「次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)」。2024年度は1万564人が受給した。4125人が外国人で、そのうち2904人を中国人が占めていた。

ところが、文部科学省は2025年6月、SPRINGの支援対象を見直して、最大240万円の生活費相当額の支援対象を日本人に限定することを決めた。同年3月に自民党の有村治子参議院議員(現・自民党総務会長)が国会質疑で変更を求めたことに応じたものだ。

また、東北大は2025年度から「国際卓越研究大学」として大学ファンド運用益からの助成を受けることになると、博士課程の学生がSPRINGの対象外となった。そうなると、学生にとっては大学独自の支援が重要になる。

2025年度の学内支援制度「AGS RISEプログラム」では、国籍に関係なく研究奨励費年間216万円と個人研究費年間34万円が支給され、授業料を免除する制度にも申請できた。

ところが、2026年度からは、学内支援制度でも外国人留学生への支援を削減した。「AGS RISEプログラム」を引き継ぐ形で、4月から新たに始まった「東北大学高等大学院LEAPプログラム(以下、LEAP)」では、研究奨励費が年間216万円から年間127万円に削減され、さらに個人研究費がなくなったことに加え、留学生は授業料免除の対象外となったのだ。

支援制度があるから東北大を選んだのに……

「今年3月に大学からのメールで、4月からの支援プログラムの変更を知りました」

突然の知らせに驚いたと話すのは、東北大の博士課程2年に在籍する台湾出身のCさんだ。東北大には修士課程から入学し、これまで学内の支援を受けてきた。博士課程1年の時は、年間216万円の研究奨励費と年間34万円の研究費を受給するとともに、授業料も免除されていた。研究奨励費は継続されるものの、授業料については免除の対象外となることが、突然大学から告知されたのだ。

「私は前年と同じ研究奨励費は受け取れるものの、研究費はなくなり、授業料免除は対象外になりました。急に授業料53万5800円が必要となるので、困っています」

母国の奨学金を受給している人や、東北大の特に優秀な学生を対象とする学位プログラムに所属している留学生は、授業料についても支援を受けることができる。しかし、Cさんのように学内支援に頼ってきた留学生にとっては、制度の明らかな改悪だろう。

Cさんは、東北大や日本国内の支援制度を確認した上で、台湾の大学から東北大の大学院を選んで進学していた。研究者の道に進むことが前提で進学していたが、就職活動をするかどうか悩んでいる。

「研究者になりたいと考えた時に、こんなに支援制度があるならと思って、東北大の大学院を選びました。私たちは修士と博士含めて5年間もの長期的な研究計画を立て、生活設計もして進学しています。なのに、途中で制度が変わるのはおかしいですよね。『国際卓越研究大学』になって、大学が使える経費は増えたはずなのに、なぜ急にこんなことになったのでしょうか」

大学院在籍中の支援制度変更に戸惑い

一方、中国出身の留学生で、現在修士課程2年に在籍するDさんは、制度の改悪を受けて東北大の博士課程には進学しないことを決めたと話す。

「東北大の学部生だった時、『博士課程では全員が経済的な支援を受けられる』と説明を聞いていました。でも、現状は説明と全く異なります。支援がほとんどない修士課程の間は、バイトや研究の手伝いをしながら何とか生活してきましたが、年間127万円しか生活費の支援がなく、授業料免除も受けられないLEAPでは生活もできません。博士課程ではアメリカの大学を目指すことにしました」

DさんもCさんと同じように、在籍している間に支援制度が変わったことに異議を唱える。

「どのような支援を受けられるのかは、せめて学部の4年生の夏頃には説明して、大学院に進学している間はその支援を継続させるべきでしょう。今年度のLEAPへの変更も急で、ありえないスケジュールです。これは博士課程入学者に対する詐欺のようなものではないでしょうか」

東北大は、「国際卓越研究大学」に認定された根拠となる「体制強化計画」で、博士課程の留学生の比率を現状の20%から、25年目には40%に引き上げることを目標としている。ただ、この目標は博士課程学生への平均経済支援額を、現在の180万円から10年目に240万円に、25年目には300万円に増額することと合わせて示された。LEAPでは経済支援額も削減されていて、認定2年目にしてすでに前提が崩れているのではないか。

しかも、東北大は2027年度の入学生から、外国人留学生の学部と修士課程の授業料を、約1.7倍にすることを2025年12月に発表した。年間53万5800円から、90万円に値上げされる。その後、学部と修士課程の留学生に授業料の全額または半額相当の奨学金を給付することも発表されたが、対象となるのは「約3分の1程度」だ。

留学生に対するこれらの対応は、博士課程の学生支援の改悪と同様に、体制強化計画に反しているのではないだろうか。

生じる不信感

東北大のある教員に聞くと、博士課程の留学生への支援が削られていたことを知らなかった。教員にも広く周知されていないようなのだ。教員は「このままこの制度を継続すると、留学生は減少することが予測できる。これは国際卓越研究大学で目指す姿とは異なる」と危惧している。

東北大の博士課程への進学を考えていたものの、方針を変えた学生は日本人にもいる。修士課程2年に在籍するEさんは、修士課程修了後は就職することを決めた。その理由は、大学の一連の対応に不信感を抱いたことが大きい。

1つは、今年4月から博士課程の支援が改悪されたLEAPについて、修士課程の学生には説明をしなかったことだ。現在ではLEAPの内容は大学のホームページで確認できるものの、修士対象の説明会は開かれていない。

もう1つは、「国際卓越研究大学」をめぐる大学の態度だ。まだ正式に認定される前の2024年7月10日に、学内で開催された説明会のことを、Eさんは次のように振り返る。

「説明会では学生から『運営費交付金の底上げを要求していくべきで、卓越大の認定は断るべきではないか』と質問が出ました。それに対して大学の幹部が、『世間では”毒まんじゅう”などと言われているが、それを食べずに餓死するわけにはいかないという判断をした』と発言したのです。これには驚きました。

毒まんじゅうは、安易に飛びつくと後で痛い目に遭うようなうまい話といった意味です。わかって言っているのかなと思いました。その時から大学が悪くなっていく予感を感じましたし、その通りになっています」

院生の有志たちが「反対する会」を立ち上げた

国際卓越研究大学に認定されたことで、大学院生へのメリットは何もないのかと聞くと、「1つだけあります」と答えた。

「学生や院生にとって唯一のメリットは、他大学から書籍のコピーなどを取り寄せる際、コピー代と送料が結構かかっていたのが、国際卓越研究大学の予算によって無料になったことです。あとは不利益ばかりです。研究室でも今年度予定していた予算が入らなくなるなど、悪い影響が出ていると聞いています」

院生の有志は「東北大学の大学院支援制度改悪に反対する会」を立ち上げた。4月20日には仙台市内で記者会見を行って、支援が削減されている現状について訴えた。

筆者は東北大に対して、大学ファンドの助成金があるにもかかわらずLEAPの支援額が少ないことや、説明が遅すぎることに院生から批判の声があがっていることを、どのように考えているのかについて質問した。あわせて、博士課程の留学生を授業料免除の対象外にした理由や、修士課程の留学生にはどのような対応をしているのかについても聞いた。これらの質問に対して、東北大からは設定した回答期限を過ぎても回答がなかった。

それにしても、大学ファンドの運用益から多額の助成金を受け入れているのに、なぜ博士課程の生活費支援も研究費も削られ、留学生が授業料免除の対象外になっているのか。

次回はその理由と、国際卓越研究大学に認定されたことで教員の側に起きている混乱を、複数の関係者への取材によって探る。

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