【読書が苦手な人は必読!】イヤイヤながら本を読んでも、「読解力」は上がるのか? 趣味の読書の影響は?

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あなたは、自分の読解力が高いと思いますか。そうでもないと思いますか。誰でも、読解力は高い方がいいと考えますが、じつは、読解力の高さを決める原因は意外なところにありました。

小学生の時に横山光輝『三国志』を愛読し、成人してからのネットミームの理解におおいに役立ったという、立命館大学の桜井政成教授が解説します(『読書スタディーズ』より一部変更のうえ掲載します)。

仕事の読書に意味はあるか

マニュアルや、気分転換に軽い読み物を読んでいるだけならば、仕事の読書とはあまり意味がある読書とはいえないんじゃないか、と思う人もいるかもしれません。

ところが、仕事の読書は、成人が「読解力」を高めるうえでかなり重要である可能性が、ある研究からは指摘されています。

余暇時間の読書(愉しみの読書)は、読解力(語彙の多さも含め)と関連があるとされています。これは世界中の多くの研究で実証されてきています。余暇の読書をしていればしているほど読解力が高い。

また逆に、読解力が高いほど読書もするので、結果として読書をする子どもとしない子どもでは、どんどんと読解力に差がついていってしまう、と考えられています。こうした現象は、「読書のマタイ効果」と呼ばれています。

マタイ効果の「マタイ」は、新約聖書の『マタイによる福音書』にある一節の、「おおよそ、もっている人は与えられて、いよいよ豊かになるが、もっていない人は、もっているものまでもとりあげられるであろう」という言葉に由来します。

読解力のある人がどんどん読書をしてどんどん読解力をつけ、読まない人との差が広がるという現象を、この文章に重ねているわけですね。

こうしたマタイ効果は主に、子どもを対象とした研究で明らかにされてきました。思春期までの子どもでは、たしかに読書のマタイ効果はあるだろう、とされています。【注1】

そのため、子どもの読解力向上のためには余暇読書を推進するべきだと、多くの研究者が指摘しています。

読解力が高い大人はどんな人か

しかし一方で、成人になって歳をとっていくなかで、このマタイ効果が引き続き存在しているのかどうかは、十分に明らかにされていませんでした。この問題に取り組んだのが、ロッチャーとプフォストの論文です。【注2】

2人の研究では、子どもから大人までのドイツ人2万8000人以上のデータを用いて、読書と読解力の関係を分析しています。その結果、まず子どもには、余暇時間の読書と読解力のあいだに関連性がみられました。

しかしその関連性は、マタイ効果で想定されているように、歳をとるほど強くなるかというとそうでもなく、中等教育段階の年齢で安定したものとなり、成人期になると逆にその関連性は低下していたのです。

つまり、マタイ効果の想定とは逆の動向になっていたのです。

その一方で調査結果では、大人になってからの仕事関連の読書が、余暇読書よりも大幅に読解力と関連していました。統計的に、相関係数が高かったのです。

この研究では仕事関連の読書を測るための質問として、「仕事のためにふだん、読書に費やす時間」を尋ねました(回答者は、1日あたりの時間を分単位で回答しています)。

ですから、その読書は仕事時間中のものとは限定されていません。また注意するべき点として、その読書の中身(何を読んだか)は問われていません。マニュアルや気軽な読み物だけではなく、専門書だとか、多様な本や雑誌が含まれていると思われます。

このような前提はありつつも、仕事関連読書は大人にとって読解力を高める可能性があることが、このロッチャーとプフォストの研究からは示されています。

読書が苦手な人へ

(本書で紹介したように)読書家はとかく、読書は楽しいものであり好きに読めばよいのだ、と考えがちです。たしかにそうで、その結果読解力も高まるというのが、マタイ効果なわけです。

しかし、読書が好きではない人にとっては、これは、どうしてよいかわからなくなる話です。嫌いなものを好きになれ、そうしないと読解能力も高まらないんだぞ、といわれているようなものですから。

しかし、仕事上の理由で(イヤイヤながら)読んでも、読解力の高さと関連するという研究結果がある。これは、読書が苦手な人にはある種の「救い」にもなるのではないでしょうか。

読解力が高まると、読書にも前向きになることはこれまでの章で説明してきました。仕事上、義務的に読むことで読解力が高まった結果、もっと読書をしてみようかな、となる人もいるかもしれません。

このように仕事関連読書は、余暇読書だけでなく、大人にとってはそれなりな「読む」時間となっており、読解力向上など意義があるようです。

注1 ただし、読書と読解力の関係性は単純ではないですし、まだ十分に明らかにされてはいません。1冊目に読んだ本から得る語彙や知識、読解スキルは大きいが、次の本には重複した部分も多々あるだろうから、その関係性は線形なものよりは非線形で、徐々に得られるものは減るだろう、という推測もあります(Evans et al., “Family Scholarly Culture and Educational Success: Books and Schooling in 27 Nations”)。読書と読解力との関係性について、より詳しく知りたい方は、猪原敬介『読書効果の科学読書の“穏やかな”力を活かす3原則』(京都大学学術出版会)、犬塚美輪『読めば分かるは当たり前?:読解力の認知心理学』(筑摩書房)などをご参考ください。

注2 Locher & Pfost, “The Relation between Time Spent Reading and Reading Comprehension throughout the Life Course.” ドイツ国立教育パネル調査(NEPS)の結果で、小学5年生から55歳以上までの4つのコホート(n=28,795)からなるデータを、回帰分析しています。

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