中東情勢の影響で、石油化学製品の原料となるナフサの供給不安が広がっている(左・時事通信フォト)

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【写真を見る】商社から相次ぐ発注キャンセルメール…塗装会社が語る苦悩の現実

 群馬県内で塗装業を営む男性社長は、ナフサ由来の材料発注関連のメールを見ながら嘆息する。

コロナの時がかわいく思えてしまいます」

 中東情勢の影響で、石油化学製品の原料となるナフサの供給不安が広がっている。高市早苗首相や経産省は、不安を煽らないためか安定供給への見通しを明らかにしているが、現場では多くの悲鳴が上がっている。

 群馬県南部で塗装業を営むIさん(30代、仮名)に取材した。【前後編の後編。前編から読む】

 Iさんが営む会社の従業員は約20人。大手自動車メーカーの孫請けとして自動車の車体の一部となる部品を塗装して納品している。大きさや形状によって異なるが、月間でパーツ数にすると約3000個を処理する能力があるという。すべて手作業であるが故に特殊な色などメーカーのニッチなニーズにも対応し、安定して仕事を受注してきた。

中東情勢に端を発する自動車メーカーの減産の煽りを受けて、毎月1000個を超えるはずだった大型の受注が4月と5月は50個にまで縮小しました。このような規模の、しかも直前での変更は経験したことがありません。ただ、なんとか別の仕事を探したり、 "親"(元請け会社)に在庫を持ってもらったりしながら、企業努力で経営を続けています」

 そして大幅な受注減以上にIさんが警戒しているのが、ナフサ由来の材料製品の供給不安だ。

「ナフサ由来の材料がないとそもそも塗装という仕事ができません。特に入手しにくくなっている重要な材料はシンナーと硬化剤です。塗料を希釈するシンナーと固める硬化剤は何を塗装する上でも欠かせません。

 この数か月で値上がりしたのはもちろん、もう物自体が手に入りにくい。購入先の商社さんも大変そうで、そこにも在庫があるわけではないんです。従来は月単位でまとめて購入していたのですが、それだと購入できないリスクが高い。今は週2回の頻度で発注しているけど、成約しないことが増えてきています。現在は、従来の半分しか買えていません。その量さえ徐々に減ってきているので、いつか買えなくなったとしたら……。そこで、ゲームオーバーです」

 シンナーと硬化剤は危険物であるため、消防法で保管できる量に制限がある。このことも業者の不安を倍増させる一因となっている。

「消防法の関係で保管できる量に制限があるというのは、買いだめができないということです。こんな状況でも事前に備えることもできませんでした。私の会社では普段はシンナーを月に180缶ほど仕入れていますが、それが最近は半分程度になっている。半分でも入手できているのはマシな方かもしれなくて、もともと1缶とかしか使っていない個人商店は購入自体できていないようです。

 規模の小さなところから次々に倒産なんてことが、もう始まっているのかもしれません」

 こういった状況から、Iさんの会社では5月以降、週の稼働日を平日3日だけにするという苦渋の決断をした。

「少しでも光熱費などの経費を削減するためです。社員の給料は100パーセント保証しているので、先行きの見えない体力勝負が始まってしまいました。コロナの時も大変でしたが、あの頃がかわいいくらいです」

 今回は、政府に製造業の実態をしっかりと見てほしいとの思いから取材に応じたという。

コロナの時もかなり大変でしたが、様々な補助があって立ち直ることができました。今回の影響はそれ以上なので、政府にはしっかりと現実を見た上で、経済を回す施策をとってほしい」

 ナフサの供給量が足りているならなぜ、Iさんの会社に届くシンナーや硬化剤が半減しているのか。早急な対策が必要だろう。