住宅街にポツンとある現場の焼き肉店(右側)は、たむろ行為に気づかず……

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 東京都福生市の閑静な住宅街が物々しい雰囲気に一変したのは、祝日だった4月29日のこと。午前7時20分ごろ、営業時間外の焼き肉店駐車場で高校生ら男女7人が集まって話をしていたところ、ハンマーを持った男が「うるさい」と襲いかかった。

【写真】母親が「筋肉もりもりで腕力が強い」と語った容疑者の顔写真

 男は男子高校生(17)の顔面を複数回ハンマーで殴り、頬骨骨折の重傷を負わせたほか、別の男子高校生にも軽傷を負わせた。

警察に徹底抗戦を始めた容疑者

 男の自宅はすぐそば。犯行後は自宅に戻って駆けつけた警察官にサバイバルナイフを見せたり、「来るな」と2階からスプレーを噴射するなど徹底抗戦を始めた。警察官が「出てこい!」などと呼びかけても応じる気配はなく、自宅に立てこもったとみられたのが始まりだった。

 全国紙社会部記者の話。

「同日正午ごろ、警視庁捜査1課の特殊班『SIT』が自宅に突入すると誰もいなかったんです。早々に裏口から抜け出し、徒歩とバイクや車を乗り継いで逃げていました」

 警視庁は翌30日、男子高校生に対する殺人未遂容疑でこの家に住む職業不詳・高林輝行容疑者(44)を公開手配。翌5月1日、約70キロ離れた千葉県習志野市内のアパートにいることを突き止め、同日午後4時15分過ぎに逮捕した。約57時間の逃走劇だったが、身柄確保時に抵抗することはなかった。「殺すつもりはなかった」と殺意を否認している。

 襲撃現場となった焼き肉店駐車場は、車2、3台を止められるかどうかという狭さ。住宅街の真ん中でもあり、敷地内に無断で居座ることになるため、たむろしにくいはず。

「ところが、真夜中になるとたむろする男の子たちがいるんですよ。若いころは集まって騒ぐこともあるでしょうが、ここでやるかという感じです。タバコの吸い殻を路上に捨てたり、コンビニ駐車場の灰皿周りじゃないんですから。バイクをブンブンふかしたりして本当に迷惑しています」(近所の住民)

 被害者らと同一グループかわからないが、深夜から早朝にかけて若者がたむろするのを迷惑に感じていたのは、容疑者だけではなかった。

 焼き肉店を訪ねると、スタッフがうんざりした様子で話す。

「店舗兼住宅ではないため、営業時間外の午後11時から翌朝11時までの様子はわかりません。少年たちが無断でたむろしていたとは気づきませんでした。うちも被害者なのに、店に迷惑電話がけっこう来て参っています。

 地域の常連客に支えられて35年ほど営業してきましたが、一時休業も考えたほどです。常連さんから“大変だろうけど頑張って”と励まされて、どうにか店を開けているんです」

母親「息子が目を覚まさないうちに収めようと」

 高林容疑者の母親(81)に話を聞いた。小柄でほっそりした女性。事件当日、最初に「まだ寝ている人もいるから静かにして」と少年たちを注意したのはこの母親だった。少年たちは「すいません」と言うものの大声は続いたといい、母親が注意を繰り返すなか、容疑者がハンマーを手に割って入ったとみられる。

「たいへんな騒ぎを起こして申し訳ありません。ただ、少年たちがたむろして大声を出すのは今に始まったことではないんです。近所の方は我慢しておられるんです。息子は筋肉モリモリで腕力が強いから、我慢の限界を超えて少年らを殴るなどの暴力沙汰になるのが怖くて、息子が目を覚まさないうちに収めようとしたんです」(容疑者の母親)

 高林容疑者は2023年9月の深夜、やはり自宅近くに集まっていたとみられる当時10代の少年を手おので切りつけ、全治2週間のケガをさせた殺人未遂容疑で逮捕歴がある。「手おのがたまたま当たっただけで、殺すつもりはなかった」と、このときも殺意を否認し、被害少年と示談が成立して不起訴となっていた。

「私の知恵が足りませんでした。少年たちに直接注意せず、すぐに110番通報するべきでした。3年前の事件を繰り返させたくなくて注意しに行ったんですが、息子はすでに起きていたらしいんです。以前から“おかんは正義漢ぶらずに警察を呼んで”と息子から言われていたんです」(容疑者の母親、以下同)

「甘えん坊で優しい子」

 容疑者は4人きょうだいの末っ子で、兄や姉は実家を離れて自立している。囲碁のプロ棋士だった父親が数年前に亡くなり、母子で2人暮らし。母親は容疑者を「甘えん坊で優しい子」と評していたが、親子仲については「普通です」と多くを語らなかった。

「80代を迎えて頭から記憶がポロポロ落ちていますし、思い出せないこともあります。こんな事件を起こし、息子には今度こそ立ち直ってほしいというのが一番の願いです。災い転じて……ではありませんけど」

 事件がなければ、どのようにGWを過ごすつもりだったのか。親子旅行や外出予定はなかったのだろうか。

「いえいえ、うちは貧しいからそんな予定はありません。夫の遺族年金でほそぼそと生きている状態ですから、普段どおりに生活するだけです。

 私の手料理? 息子は自宅に離れを造って、専用の台所で自炊しています。親孝行のエピソードですか……。まじめに働かないってこと自体が親不孝ではありますけど……」

 これ以上、母親を悲しませてはいけない。