リバプール戦で決勝弾のメイヌー。21歳の俊英は現体制下で伸び伸びとプレーしている。(C)Getty Images

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 コビー・メイヌーの右足が、マンチェスター・ユナイテッドのシーズンにひとつの答えを出した。

 5月3日、オールド・トラフォードで行なわれたリバプール戦。ユナイテッドは3−2で競り勝ち、来季のチャンピオンズリーグ出場権を確保できる5位以内を確定させた。

 昨季はリーグ戦で15位に沈み、今季も序盤に14位付近でもがいていたチームが、3年ぶりに欧州最高峰の舞台へ戻ることになった。しかもその決勝点を決めたのが、一時はクラブでの将来すら危ぶまれていた生え抜きのメイヌーだった。

 試合は、ユナイテッドにとって理想的な展開で始まった。リバプールの悪癖である「立ち上がりの悪さ」を突き、序盤に2点を先行する。マテウス・クーニャが先制点を奪い、さらにベンヤミン・シェシュコが追加点を挙げる。前半のユナイテッドは、前からの圧力と中盤の切り替えでリバプールのリズムを断ち、試合を自分たちのものにしていた。

 ただし、今のユナイテッドはまだ完成されたチームではない。後半、その不安定さも顔を出した。アマド・ディアロのパスミスからドミニク・ソボスライに1点を返されると、今度はGKセンヌ・ラメンスからのビルドアップのミスでコディ・ガクポに同点弾を許した。2点のリードは、あっという間に消えた。
 
 だが、そこで終わらなかったことに、今のユナイテッドの変化がある。77分、左からのクロスの流れで生まれたこぼれ球を、メイヌーが豪快に蹴り込んだ。2024年以来となるリーグ戦でのゴールは、リバプール戦の決勝弾となり、チャンピオンズリーグ復帰を決める一撃にもなった。

 この場面だけを切り取れば、若手の劇的な勝負強さという話で終わる。だが、メイヌーの今季を振り返れば、意味はもっと深いだろう。

 昨夏、メイヌーはイタリアのナポリへのレンタル移籍を自ら希望したと報じられていた。出場機会を求めての判断だったが、クラブはそれを認めなかった。しかし残留後も、ルベン・アモリム体制で状況が好転したわけではない。リーグ戦での先発は長く与えられず、冬には将来について難しい話し合いが必要になっていた。イングランド代表としてEURO2024決勝のスペイン戦に先発したメイヌーが、クラブでは居場所を探す立場になっていたのである。

 流れを変えたのが、1月に暫定監督として就任したマイケル・キャリックだった。

 キャリックは、メイヌーを中盤の中心へ戻した。ブルーノ・フェルナンデスを本来のポジションであるトップ下に。チーム全体のバランスも整えた。難しいことをいくつも詰め込んだわけではない。守備ではブロックを作り、奪ったら短い距離で一気に前へ出る。ショートカウンターを軸にした、かなりシンプルな設計だった。

 しかし、そのシンプルさが効いた。迷いが消えれば、選手は早く動ける。早く動ければ、寄せも強くなる。ユナイテッドの伝統であるハードワークの精神もプレーの中に戻った。

 メイヌーは、その変化を最もはっきり示した選手だ。アモリムのもとでは、どこでどう使われるべきかが曖昧に見えた。6番なのか、8番なのか。守備的に構えるのか、前へ運ぶのか。だがキャリックのもとでは、まず中盤で立ち位置を守り、必要な時に前へ出る役割が与えられた。

 リバプール戦の決勝点も、まさにその延長にあった。守備的MFとして構えながら、機を見てボックス付近に顔を出し、最後の局面に関わった。
 
 解説者たちも、メイヌーの変化を評価している。元マンチェスター・シティのミカ・リチャーズは、アモリム前監督が信頼を与えなかった一方で、「キャリックがメイヌーに自信を与えた」と指摘した。

 現役時代にリバプールやチェルシーでプレーしたダニエル・スタリッジは、アモリムはメイヌーにとって「悪夢」だったが、キャリックは「夢」のような存在だと表現する。元ミッドフィルダーであるキャリックが、同じポジションの若手に道筋と役割を示せたことは大きい。