一方で、ロイ・キーンの見方は少し違った。苦しんだ数か月も、メイヌーにとっては「悪い経験ではなかった」という。若い選手は、試合に出て称賛される時間だけで成長するわけではない。外から試合やチームを見て、自分の立場を考える時間も必要になる、という見方だ。当のメイヌーはその期間を経て、今週、新たに5年契約を結び、リバプール戦で結果を出した。

 試合後の本人の言葉も印象的だった。

 キャリックについて「監督についていきたいし、戦いたい」と語ったメイヌーは、自分だけでなく選手全体が自信を与えられていると明かした。これは監督賛美というより、チーム内の雰囲気を示す言葉として捉えるべきだろう。
 
 もちろん、キャリック体制を手放しで称賛するにはまだ早い。

 たとえばリバプール戦の2失点は、どちらもユナイテッドのミスから生まれた。ディアロはアフリカ・ネーションズカップから戻って以降、本来の鋭さを取り戻していない。GKラメンスから始まったビルドアップのミスも、後方からつなぐプレーに課題を残した。

 それでも、キャリック体制での「14戦10勝」という数字は評価されるべきだ。しかもその中にはシティやアーセナル、チェルシー、リバプール戦での勝利が含まれている。昨季は15位。今季も、序盤は6節終了時点で1勝1分け3敗の14位。そこから3位争いに加わるところまで戻したのだから、キャリックとコーチ陣の仕事は評価されて当然だ。

 だからこそ、クラブがキャリックを正式監督に昇格させるのは自然な流れに見える。ファンは結果を見ている。選手も信頼を口にしている。少なくとも今、別の監督を探すことは大きな賭けになるだろう。

 ただし、ここから先に別の問いが待っているはずだ。立て直すことに成功したが、プレミアリーグやヨーロッパ最高峰の舞台で勝ち抜くことは、それとはまた別の話である。

 たとえばルイス・エンリケ監督が率いるパリ・サンジェルマンのような完成度の高い相手に対し、現時点で正面から太刀打ちできる姿は想像できない。そこでは、守備ブロックとショートカウンターだけでなく、ボールを持った際の支配力や試合中の修正力など、複数の戦術が必要になるはずだ。

 それでも、ユナイテッドは前に進んでいる。メイヌーの決勝弾は、ひとりの若手の復活であると同時に、チームが再び自信を取り戻しつつあることを示すものだった。キャリックは、選手たちが迷わず走り、戦い、勝ち切れるだけの土台を作った。

 その土台の上に、どれほど大きな絵を描けるのか。キャリックの残留が決まるなら、来季のチャンピオンズリーグは、その答えを確かめる舞台になるはずだ。

取材・文●田嶋コウスケ

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