相撲どころ青森の「143年」幕内継続記録、今や断絶の危機…錦富士1人のみで綱渡り状態続く
王国復活へ、教室や「若の里杯」地元大会開催も
初代若乃花ら6人の横綱を輩出した相撲どころ・青森が危機を迎えている。
昨年は大相撲で1883年(明治16年)から続く県勢の幕内在位記録が途切れる寸前となり、5月の夏場所の番付も幕内は1人のままだ。競技人口の減少も逆風になる中、裾野拡大の取り組みが広がる。(青森支局 平田健人、菅崚乃介)
「(記録を)絶やさないように頑張りたい」。昨秋の九州場所の番付で青森県勢で唯一幕内だった尊富士関が前頭から十両に陥落した。県勢別で最長の幕内継続記録が途切れかけたが、十和田市出身の錦富士関の再入幕で回避された。記録継続へ意気込む錦富士関は夏場所は西前頭9枚目で臨む。十両に尊富士関ら県勢2人がいるものの、番付は他の力士の成績にも左右され、記録は綱渡りの状態だ。
青森市の相撲史研究家・今靖行さん(74)によると、同県は江戸時代、藩主が相撲を好み、「お抱え力士」を選抜するなど相撲が盛んになる土壌があった。戦後は北海道の54人に次ぐ45人の幕内力士が出て、鏡里や初代と2代目の若乃花ら6人の横綱を生んだ。
しかし、大相撲の県勢力士は1957年の69人をピークに75年頃から30〜40人台となり、現在は17人。幕内に8人いた場所もあるが、昨年の夏場所以降1人だ。昨年現役引退した桐山親方(元関脇宝富士)は「記録は自分が守るしかないと気を引き締めた。プレッシャーはあった」と明かす。
人材を供給してきた高校も相撲部員が減り、県外の強豪校へ進む選手もいる。県内屈指の三本木農業高(現三本木農業恵拓高)OBで、中学生を指導する松原雄大さん(29)は「県内の大会の参加者が減って同じ相手との取組が多くなり、実力アップにつながりにくい」と話す。今さんは「危機意識を持ち、県をあげて次世代を育てる必要がある」と指摘する。
「声を出しながらやろう」。つがる市の高校で3月、園児や小中学生10人が土俵に上がって四股を踏み、ぶつかり稽古で汗を流した。
中学校相撲部監督、菊池大史芽(ひろしげ)さん(28)が開いた相撲教室だ。「相撲に触れる機会を増やしたい」と普及活動のほか、県内外の小中学生を集めた強化練習会も定期開催する。普段と違う相手と交流し、稽古を活性化させる狙いだ。
中学1年の男子生徒(12)は「タイプの違う人と組める。負けたら悔しいし、もっと強くなりたいと思える」と話した。菊池さんは「強く活気のある『相撲王国』を取り戻す活動を続けたい」と前を向く。
全国高校総体優勝歴のある五所川原農林高でも夏と冬、小中学生が参加する2泊3日の合宿を実施している。相撲部顧問の一戸拓道さん(50)は「寝食を共にする中で、相撲の楽しさも伝えたい」と話した。
西岩親方(元関脇若の里)は地元・弘前市で「若の里杯相撲大会」を開く。未経験の園児、小学生の部などがあり、ジャージー着用も可で、昨年は約330人が参加した。親方は「この中から幕内で活躍するような子が出てきてくれたらうれしい」と期待を寄せる。
競技人口、ピークから半減
相撲人口は減少傾向にある。アマチュア界を統括する日本相撲連盟によると、会員の登録数は1998年度の約9400人をピークに、2024年度は5146人まで減った。少子化やスポーツの多様化などが要因とみられている。
小学生を対象にした「わんぱく相撲」など相撲に触れる機会はあるが、中学・高校で別の競技に転向するケースは多い。青森県つがる市の「つがる旭富士ジュニアクラブ」で指導する越後谷清彦さん(63)は「けがが多く、敬遠されやすい面もある」と話す。
連盟では「相撲の魅力を伝えつつ、学校や相撲クラブとの連携や指導者の育成に取り組んでいかなければならない」としている。
