法律違反では?「マンション管理費」の闇…5年間で部品交換ゼロのエレベーター、定期点検にかかった“衝撃の費用”【一級建築士が警告】
マンションの購入を検討する際、意外と抜けているのが「そのマンションがきちんと管理されているか」という視点です。その判断材料のひとつに「管理費」があります。一級建築士の建山晃氏によると、管理費の額面は「管理会社が適切にマンションの維持管理を行っているか」の判断材料になるそうです。なかには管理費が「無駄遣い」されており、額面が不適切に高くなっている物件も……。建山氏の著書『[新装版]マンションの大規模修繕でダマされない方法』(彩図社)より、詳しく解説します。
その管理費は適正なのか
管理費は、マンションの共用部を快適な空間に保つために使用する名目で徴収される。その管理内容はマンションによって異なり、管理内容によってその金額が決まっているだろう。一般的には次の通りである。
(1)修繕積立金と管理費の徴収および管理
(2)共用部の清掃・維持・管理
(3)ゴミ出しの補助(ゴミステーションの清掃・管理)
(4)理事会・総会の準備補助
管理費の金額については、国交省が調査し公表したものがある。「令和5年度マンション総合調査」に詳細が載っているので興味があればネットで見てほしい。
例えば、戸数規模から見ると21〜30戸のマンションであれば、管理組合に入る月額管理費は100万円以内に収まるところが8割を超える。ただし、マンションによって管理条件や設備内容が違うので、一概にこの数字を当てはめることはできない。
ではどうすべきかというと、やはり他の管理会社との見積もり比較しかないだろう。
他の管理会社でも見積もり依頼をすればすぐに出してくれる。しかし、評判の悪い管理会社もあるため、地域の横のつながりやネットワークを駆使して、各管理会社の評判を聞き取るのがいいだろう。私も、全国的に管理戸数が上位の会社でも悪い噂を同時に数か所から聞いたことがある。
最近はネットで管理会社を変更するよう宣伝している広告があるが、狙いは大規模修繕なので十分気をつけたほうが良い。また管理費の金額についても、安いのには何か理由があると考えたほうが良いだろう。
法律違反では?エレベーターの「定期点検」に潜む闇
最近の新築工事では、エレベーター工事を発注する場合、メーカーは必ず5〜10年間の定期点検業務とセットで見積もりを持ってくる。中には定期点検を入れない見積もりもあるが、金額はかなり高い。
定期点検はお客さんが工事完了後に行うので、競争入札の場合、施工会社としては定期点検がついた会社を選択するしかなくなる。
日本のエレベーター会社は5社程度あるが、個人的には談合していると思っている。そして新築工事に定期点検業務を入れる理由は、定期点検の仕事がとても利益が出るものだからである。
以前からこの業務に、どこのメーカーにも属さない独立系のメンテナンス会社が参入して、格安で業務を請け負っている。それに危機感を抱いた各メーカーは、10年の定期検査を人質に取って工事も定期点検業務も獲得しようとしている。法律違反ではないかと思うのだが、うまくごまかしたのだろう。
この後詳しく説明するが、要はたいした仕事もしないで大金を取っているのである。私はこの件については声を大にして言いたい。
私たちのマンション(5階建て)でも5台のエレベーターがあり、月に20万円、年間240万円で契約している。
エレベーターは所有者である管理組合と保守点検業者の間で、年間の保守点検契約が結ばれており、それに従い保守点検が行われるが、問題はその内容である。契約内容は次の通りだが、調査した結果、5年間で1,000万円近くが無駄になる契約だったのではないかと思われる。
年1回の特定行政庁への定期報告
これについては法律で決まっているので仕方がないが、この法律はエレベーター業者に便宜を図っているように思えてならない。これは国交省の昇降機の維持管理に関する指針には書かれていないが、建築基準法で年1回の定期報告が決まっている。
どんなエレベーターでも、つまり商業施設で1日100回以上使う機械も住戸専用マンションで1日数十回しか使わない機械も、定期検査の回数は同じだ。本来であれば使用頻度によって決めるべきではないのだろうか。日本中の管理組合のネットワークで声を上げるべきである。
3か月ごとのフルメンテナンスによる保守点検業務
この保守点検業務については、財団法人日本建築設備・昇降機センターの指針の第12条に「おおむね月に1回ごと」とあるが、この指針は建築基準法には何も書かれていない。他のマンションでは指針通りに月1回の保守点検を行っているところもあるのではないだろうか。
この件について、財団法人日本エレベーター協会にメールで問い合わせをしたところ、「保守点検については法律で決まっているわけではないので、所有者と点検業者との契約によるもので協会としては関与していない」との回答であった。つまり保守点検業務はしないでもいいということだ。年1回だけ定期検査をして特定行政庁に報告すれば、法的には全く問題はないのである。
私たちのマンションは5年前にエレベーターを新設したが、それでもその3か月後に契約に従い点検業務をしているのである。無償の初期不良の点検業務であればわかるが、有償の点検業務である。自動車でも新車であれば3年間は車検なしではないか。この点をエレベーター設置の代理店の営業マンに電話で確認した。
・新設の場合、エレベーターの保証期間は1年で、その間の故障については無償
・新設エレベーターは無償で3か月間は毎月点検する
・保守点検業務は4か月目から有償点検に入る
・定期報告義務のある年1回の点検のみを行う業者はいないだろう
以上の返答があったが、これはいかがなものだろうか。新設でも4か月後には故障の不安があるのだろうか。
新設のエレベーターには1年無償で保証がついているにもかかわらず、すぐに有償点検をするというのは住民にとっては不利益になるように思う。日本の高品質の機械はその程度のものなのだろうか。
それ以上に不服に思うのは、定期報告のみの点検業務はしないという点である。エレベーターの点検資格を振りかざして、無理やり契約を迫られているようなものである。
以前、エレベーターの3か月点検に立ち会い、5年間でどんな整備が行われたかの報告書を管理事務所で確認してみた。結果は、5年間で部品の交換は0回、故障で何か作業したこともなかった。
つまり5年間は保守点検する必要性は高くないのだ。定期報告のために年1回、その2か月前に点検するだけで十分だったのである。
部品交換ゼロなのに…5年間でかかった「衝撃の費用」
保守点検業務も5台を2人で行い、1日で終わる仕事であった。計算すると1回の点検業務で60万円、2人で1日の売上が60万円である。それで年間240万円、5年で1,200万円。
私も理事長として保守点検契約の印を押しているが、痛恨の極みである。少なくとも5年間の点検費用は年1回の40万円程度におさめ、5年間で200万円というのが妥当だっただろう。
立ち会いのとき、エレベーターの保守点検の人に「5年で部品を交換するようなことがあるのですか」と聞いたが、少し考えて「消耗が一番激しいバッテリーでも3年はもつと思います」と実に正直な回答があった。
私たちのマンションのエレベーターは5機で5,600万円だった。物価変動はあるにしてもかなり高い気がする。
保守点検については各マンションで契約することになる。すべての内容を理解して納得したうえでの契約ならばいいが、なんとなく業者の言葉に流されて契約しているのであれば、早急に見直すべきだ。
建山 晃
1級建築士

