テニスプレーヤーとして世界で活躍した杉山愛さんも同じだった。杉山家がリアルに感じている子育ての”困った”
2026年3月26日に未就学児を対象に開催した「FRaU×花王×小杉湯原宿はじめて銭湯2026」。
当日の様子は、リポート記事で詳しく紹介しています。
この日、参加した3歳から6歳までの子どもたちは、“子どもだけで銭湯に入り、自分で頭を洗う”という、大きな挑戦に臨みました。その子どもたちを待っている間、保護者の皆さんには元プロテニスプレーヤー・杉山愛さんをスペシャルゲストに迎えたトークプログラムが。
【杉山 愛】
神奈川県出身の元プロテニス選手。17歳でプロ転向後、17年間の現役生活でシングルス6勝、ダブルス38勝を挙げ、ダブルスでは世界ランキング1位を記録。グランドスラム連続出場62回の世界記録を樹立し、オリンピックには4大会連続出場した。引退後はテニス解説者としてテレビ出演するほか、スポーツの魅力発信や子育て・教育分野でも活動の幅を広げている。
これは子育てにまつわる悩みや不安を、二児の母でもある杉山愛さんとともに共有し合うことを目的にした企画です。
当初は、杉山愛さんにはトークイベントへ登壇いただき、4歳の娘・心(ここ)さんには子どもたちと同じ体験をしていただく予定でした。ところが事前の打ち合わせで話が広がり、愛さんのパートナーでありマネージャーでもある杉山走(そう)さんもトークプログラムに参加していただけることに。思いがけず、おふたりの子育て論を伺うことのできる貴重な機会になりました。
ここからは、この日2回にわたって開催されたイベントで、保護者の皆さんに語られた内容をご紹介します。
世界で活躍した杉山愛さんにもある子育ての“困った”
ーー司会進行を務めるFRaUweb編集長・新町真弓がゲストの杉山愛さん、走さんを紹介し、トークプログラムは始まりました。
世界を舞台に活躍し、日本テニス界にその名を刻む杉山愛さん。現在は10歳の男の子と、この日イベントに参加した4歳の女の子、心(ここ)さんの母でもあります。
この日は、パートナーである走さんとともに、保護者の皆さんと同じ“親”という立場から、日常で起こった子育てエピソードや、おふたりが大切にしている考えを話していただきました。
実は杉山愛さんにこのイベント出演を依頼した際、一度はお断わりされていました。というのも、心さんは温泉も含め、これまで大きなお風呂に入った経験がなく、お風呂もあまり得意ではないとのこと。当日、入浴できなかった場合に迷惑をかけてしまうのではないか、そんな配慮からのお返事でした。
「未就学児の子育てをしている保護者の方と同じ悩みを持つ愛さんだからこそ、ぜひご一緒してほしい」という私たちの熱い想いを伝え、出演していただくことができました。
世界で活躍してきた杉山愛さんでさえ、私たちと同じように子育ての“困った”と向き合っていたのです。
お風呂の“困った”
FRaUweb編集長・新町真弓(以下、FRaU):打ち合わせで、心さんはあまりお風呂が好きではないとおっしゃっていました。でも今回、2回行ったイベントでは、どちらの回でも入ってくれましたね。
杉山愛さん(以下、愛):そうなんです。娘は興味のあることに対して、集中して取り組む子なので、中断して次の行動に移ることが得意ではありません。とくにお風呂は面倒に感じることが多いようで、直前に塗り絵をしていたり、動画を見ていると「お風呂には入らない」となってしまうんです。
走:やっとお風呂に入ったと思ったら、今度はポンプ式の石鹸から泡が出てくるのが楽しくて、出てこない…。
ただ、大人でも宴会で盛り上がっている途中で「お風呂に行きなさい」と言われても、行きたくないですよね。だから気持ちは理解できます。
それから、顔が濡れることも嫌がります。だから今日は本当に驚いているんですよ。
FRaU:一人で楽しそうに大浴場へ行きましたよね。
愛:まさか2回も入るとは思いませんでした。本当に楽しくお風呂に入れたようです。自信をつかんだぞという表情をして戻ってきました。「どうやって頭を洗ったの、すごいね」と言うと、得意げになって話してくれました。
走:でも「お家でも、自分で頭が洗えるね」と言ったら、それは「違う」と言われました。先生や同じ年齢のお友だちと一緒だったから楽しかったようです。ただ、一人で入れたという経験は大きな自信につながったと思います。
食事の“困った”
ーー食事に関して愛さんはアスリートとして、子どもの栄養管理や好き嫌いに関してどのように向き合っているのでしょうか。実はここでも“困った”ことがあることを話してくれました。
愛:現役時代から、食の大切さは身をもって感じています。だからこそ、子どもには好き嫌いなく食べてほしいと思っていたので、最初はいろいろトライしていました。でも、離乳食では食べていたのに歯ごたえが変わったら食べなくなってしまった野菜も。とくに長男は野菜があまり得意ではありません。
今は、食の好みは年齢とともに広がっていくものだと思うので、見守ることにしています。1日単位で栄養のバランスを取ろうとするのではなく、 3日、あるいは1週間単位で捉え、全体としてなんとなく食べられていればいい、というくらいの気持ちで向き合っています。
ーー一方、やはりお菓子は大好きな様子。
走:今日も楽屋におにぎりとおやつを用意していただいていましたが、お昼におにぎりを食べたあと「お腹いっぱい」と言っていたんです。しばらくすると「お腹が空いた」と言うので、「おにぎりがあるよ」と伝えると、お菓子を指さして「そっちじゃない、あっちがいい」と言っていました。
実は僕、食べ物に対しては愛よりも少し甘いんです。子どもはパパとママのどちらに言えば「YES」をもらえそうか、わかっているんですよね。だから今回は僕のところに来るんですよ。でも僕は心を鬼にして「ママはなんて言ってたの?」と聞きました。「ママはダメって言ってた」と言うので、「だったらダメだね」と返しました。
ーーこれは夫婦のスタンスが一致していないと、子どもも混乱するという考えからふたりで決めたことだと言います。
愛:同じスタンスでいないと、ママ側につく、パパ側につくみたいな構図にもなりかねません。
走:それがいちばん、よくないと思います。
ーー参加した保護者からは、食事中のふるまいについての相談も寄せられました。楽しい食事の時間が次第にエスカレートし、兄弟で歌ったり踊ったりするうちに、最後は叱ることになってしまうことに悩んでいるそうです。こうした場合、杉山夫妻はどのように向き合っているのでしょうか。
愛:我が家の場合、家の中ではある程度OKにしています。子どもが踊り始めたら、一緒に踊ってしまうくらい。
走:かなり自由にしていますね。その代わり、静かなレストランや大人が集まる場所に行くときは、事前に説明をしてます。もしふざけ過ぎたら「もう、こういう場所には来られなくなるかもね」と話します。
愛:きちんと説明すると、子どもでも理解できるんだなと感じます。家の中と外の顔は、まるっきり同じではなくてもいいのかなと思っています。
FRaU:きちんと話して理解してもらう。子ども扱いはしないのですね。
寝かしつけの“困った”
FRaU:寝かしつけについて悩んでいる方も多いようです。杉山家はいかがでしょうか。
走:愛が甘いんですよ。
愛:私の父は178cm、母も160cm弱あるので、本来なら私も165cm、もしかしたら170cm近くまで伸びてもおかしくなかったと思うんです。選手時代は少しサバを読んで163cmと言ってましたが、実際は161cm(笑)。その原因には睡眠が足りていなかったことかなと思っているんです。
ーー愛さんは、テニスを本格的に始めてから、スクールを掛け持ちし、週に5〜6日通っていたそうです。
愛:朝は5時から、夜は20時、21時まで練習をしていました。車中でご飯を食べて帰宅し、お風呂に入って宿題をして…。できるだけ急いでも、寝るのは22時半ぐらいになってしまい、睡眠時間の確保ができなかったんです。
背の高い方にお会いした際には「子どものころはよく寝ていましたか」「何時間ぐらい寝ていましたか」と、つい聞いてしまうのですが、皆さん本当によく寝ているんです。夫も非常によく寝ます。やはり、寝る子は育つんですよ。
走:母は157cm、父は170cm弱ですが、僕はよく寝たので179cmまで伸びました。
愛:今でも本当によく寝ています。
FRaU:それでも愛さんは寝かしつけで、甘くなってしまうのですね。
走:楽しくなっちゃうんですよ…。
愛:自分の反省もありますし、子どもたちには大きくなってほしいので、早めにベッドには行くんですよ。でもそこからおしゃべりが始まって、次第に盛り上がってくると、子どもたちも目が冴えてしまうんです。
走:娘なんてそのうちベッドの上で跳びはね始めたりして、寝るどころじゃない、みたいな。
愛:だから寝かしつけはあまり上手ではありません。走のほうが上手です。
走:僕はお手本で見せるタイプ。先に寝てしまうんです。話もしないから、子どもはつまらなくなって、寝るんですよね。しばらくして、ハッと気づいて起きたら2時間くらい経っていることもあります。
愛:見習います(笑)。
ーー寝かしつけの“困った”には、子どもとの時間を大切にする杉山家らしい微笑ましい日常が表れていました。
トイレトレーニングの“困った”
FRaU:打ち合わせの際に、おしっこはスムーズにオムツが卒業できたけれど、うんちだけは紙パンツが外れないと打ち明けてくださいましたね。
愛:うんちになると紙パンツをはいていたのですが、実は1週間ぐらい前に卒業できたんです。おしっこもうんちもしたかったようで、かなり我慢している様子でした。紙パンツをはくにも時間がかかるので、「先にトイレでおしっこをしてから、紙パンツをはこうね」と言って先にトイレへ連れて行ったんです。
そこで「ついでにやってみたら?」と言ったら、そのままトイレでうんちができたんです。お尻にべたっとついてしまう紙パンツより、爽快だったのでしょうね。それ以来、トイレでできるようになりました。
走:初めてトイレでできたときも、今日のイベントでひとりでお風呂に入れたときも、同じ表情をしていました。
愛:自信がついた顔でしたね。
「行きたくない」の“困った”
ーー心さんは、普段からあまり人見知りをしないそうです。この日も、スタッフの膝に座ったり、カメラマンにポーズを取るなどして、自然にその場に馴染み、楽しんでいました。
愛:すごく人が好きな子なんです。私が忙しくしていることもあって、いろいろな方にかわいがっていただいているからかもしれません。
走:物事は捉え方次第ですよね。本当は自分がやるべきなのに、人に預けてしまったと自分を責める方がいるかもしれません。でも、親子だけの時間を過ごすこと同じように、外の空気に触れたり、いろいろな人の価値観に出会うことも大切だと思います。
子どもの世界が広がるという意味でもプラスになるはず。実際、娘もこの1年で幼稚園を嫌がったのは1回だけでした。
愛:門のところまで行くと「ママ、ここでいいよ」と言って一人で入っていくんです。
走:むしろ「来ないで」くらいの勢いでね。
愛:遊びを大切にする園なので、とても楽しいみたいです。先生方には感謝しています。
ーーそんな心さんにも、気が乗らない“1日”があったそうです。そのとき、ふたりはどう向き合ったのでしょうか。
愛:1日くらい、いいかなと思って「行きたくないんだったら一緒に帰る?」と聞きました。すると最終的には「行く」と言って行きました。
走:どうしても外せない予定がなければ、愛のような声かけは大事だと思います。無理やり置いて行かれるわけではないことが子どもに伝わると、安心できるのでしょうね。
ーーしかし、愛さんは過去に「行きたくない」と感じた経験があると話します。
愛:実は私自身、小中学校時代に学校生活が楽しめない時期がありました。テニスと勉強の両立が大変で、試合翌日の月曜日は行きたくない気持ちになることも。だからこそ「行きたくない日もあるよね」と一度受け止めてもらえると、「わかってくれた」と感じて、気が楽になることもあるのかなと思います。
おふたりは子育ての中で出会うさまざまな“困った”との向き合い方をたっぷりと話してくれました。しかし印象的だったのは、どのエピソードにも必要以上の深刻さがなかったこと。
おふたりは子育ての“困った”を「悩み」として捉えていないと言います。ではどうすれば、そんなふうに子育てと向き合えるのでしょうか。
そのヒントになるのが、後半で語られた子育ての向き合い方と、出産前に話し合って決めた“子育て3箇条”。後編では、おふたりの子育て論を、じっくりとご紹介します。
撮影/安田美優(講談社写真部)
構成・文/笹本絵里(FRaUweb)
杉山愛さんファミリーも参加。未就学児がひとりでお風呂に入って頭まで洗う”大冒険”!「FRaU×花王×小杉湯原宿 はじめて銭湯2026」リポート【PR】
