《出荷本数2000万本突破》サントリーが仕掛ける「ギルティ炭酸 NOPE」反響は「想定以上で驚き」“広告費を湯水のように使っている”説の意外な真相
サントリービバレッジ&フードの新商品「ギルティ炭酸 NOPE」(以下、「NOPE」)が、3月24日の発売開始からわずか1週間で出荷本数2000万本を突破。
【写真を見る】ボスブランドのロゴの上にNOPEが!話題を呼んだ“自販機ジャック”
令和以降に発売したサントリー炭酸飲料史上最速となる記録を打ち立てた。
何味とも形容しがたい独特の"甘濃い"風味が話題になり、SNSでは、〈飲んでみた〉という感想のほか、〈ビールで割るとおいしい〉〈テキーラで割ってみた〉、〈NOPEで煮込んで角煮を作ってみた〉のようなアレンジも盛り上がっている。サントリーとしても、ここまでの反響は予想外だったようだ。開発担当者が語る。
「想定以上の盛り上がりに驚いているのが本音です。お酒の割材に使われることも想定はしていて、発売当初から一部訴求していたものの、飲料として浸透した次の段階での広がり方だと思っていたので……」(開発担当者、以下同)
大きく注目を集める「NOPE」に対して、SNS上では、〈広告費を湯水のように使っている〉のような指摘もある。しかし実際のところ、ほかの大型商品と比較して、突出して高い広告費をかけているわけではないという。
「もちろん今年に入っていちばん手をかけている商品ではありますが、これまでの大型商品と比較すると、突出して広告費を使っているわけではありません。同じ広告の投下量だとしても、お客様の印象に強く残った結果、『よく見かける』と感じていただけているのかもしれません」
マーケティングにおいて、"いかに記憶に残すか"を熟考したという。ブラックとマゼンタをキーカラーにしたビジュアルも戦略のひとつだ。調査の結果、飲料業界では珍しいカラーリングであることが判明し、この色の組み合わせに決定した。
また、サントリーの自動販売機のボスブランドのロゴの上から「NOPE」のステッカーを貼る"自販機ジャック"も話題になった。てっきり社内で綿密な調整が行われたのかと思いきや、意外な舞台裏が明らかに。
「2025年末の時点で、サントリー自販機は全国に34万台あります。街中を歩く方々と『NOPE』の接点にこれらの自販機を活用できないかと考え、"自販機ジャック"のアイデアが浮かびました。
ただ、ボスチームと事前に綿密な調整をしたかと言うと……(苦笑)。その名の通り、器の広いブランドなので、ボスブランドの胸を借りるつもりで実施しました」
「わかりやすい味にしては」社内で議論も
近年、カロリーや脂質たっぷりのグルメをあえて楽しむ"ギルティ消費"が流行している。そんなトレンドに着目し、「NOPE」の「現代人のストレスを溶かす、欲望のままに楽しむ"やみつき"ギルティ炭酸」というコンセプトは生まれた。
健康志向が進んでいるとはいえ、思い切り自分を甘やかしたいタイミングだってあるはず。そのため、商品開発の序盤から「ガツンとくるような甘濃い味わい」というのを必須条件に設定し、完熟フルーツやスパイスなど99種以上のフレーバーを掛け合わせた複雑な風味が生まれた。
しかし、ほかの何とも形容しがたい味わいをめぐって、社内では議論もあったという。
「商品の味そのものには自信がありますが、多くのお客様にとって馴染みのあるものではない。開発段階で、『もっとわかりやすい味にしてはどうか』という意見はありました。
ただ、我々の心意気としては、炭酸市場に風穴を空けたい。ストレス発散ならぬ"ストレス溶解"という新たなシーンを作っていくんだという気概を持っています。そのシーンにとってベストな中身を突き詰めた結果、コーラとも果汁炭酸とも異なる新しいフレーバーが生まれました」
商品名についても、より味をイメージさせやすくするための意見が寄せられた。それでも「ギルティ炭酸」に決定したのは、やはり"炭酸市場に風穴を空ける"という心意気ゆえだ。
「全く味がわからない商品を手に取るのはハードルが高いため、パッケージの下部や広告に『魅惑のフルーツ&スパイス』と記載してはいます。しかし、商品名や味の訴求をもっとわかりやすいものにすべきかは社内でも議論になり、『ギルティフルーツ味』や『ギルティフルーツ&スパイス炭酸』などのアイデアが出ました。
しかし既存のものをイメージさせるような売り方というのは、わかりやすい反面、商品ののびしろに上限を設けてしまいかねない。炭酸市場を動かすような新商品を目指す以上、『ギルティ炭酸』に決定しました」
とはいえサントリー側としては、「NOPE」の売り方が突飛なものだとは捉えていないという。たとえばスポーツドリンクやエナジードリンクは、味そのものよりも「こういうシーンで飲む商品だ」と提案した結果、多くの人々に受け入れられ、市場を確立させた。担当者は、「『NOPE』によって、ストレス発散ならぬ"ストレス溶解"という新たなジャンルを広げていきたい」と意気込む。
無事に商品の認知が広がり、「NOPE」の次なる課題は、〈飲んでみた〉で終わりではなく、消費者に2度、3度と手に取ってもらうことだ。そのためにも"ストレス溶解"および"ギルティ消費"という概念自体を浸透させる必要がある。
「炭酸飲料を毎日飲む方はごく少数で、週に1本飲んでいただくだけでも十分ヘビーユーザーとされる市場です。しかし、自分を甘やかしてあげたい場面は誰にでもあるはず。『NOPE』の上位概念である"ギルティ消費"の魅力を広めることが、結果的に『NOPE』を手にとっていただくことにも繋がるでしょう。
そのためには、食品メーカーはもちろん、心地よい家具を扱うメーカーなど、幅広い企業とタッグを組んで、"ギルティ消費"や"ストレス溶解"にまつわる仕掛けをしていくことも有効かもしれません。『NOPE』を通して、今後もライフスタイルについての提案を続けていきたいです」
未知なる"ギルティ炭酸"が飲料市場に新たな風を吹かせるか──。
◇取材・文/原田イチボ(HEW)
