福岡1強で佐賀は最下位…「ケンミンSHOW」の九州SPに「ネタにマジレスながら“地域マウンティング”って不毛では?」佐賀在住の編集者が明かした地元のホンネ
テレビ番組というものは、とにかく「分かりやすさ」と「意外性」を求めがちである。しかし、それをあまりにやり過ぎると、誰かを不快にさせ、傷つけてしまうことも。3月26日に放送された「秘密のケンミンSHOW極」(日本テレビ系)の「大九州スペシャル」も、そうした“やり過ぎてしまった”番組の一つかもしれない。
というのも、現在私が住む佐賀県を徹底的に“格下扱い”していたのである。「所詮はバラエティでしょw」「ネタにマジレスダサいw」と思う読者もおられるかもしれない。だが、この番組に対して、一部の佐賀県民は、本気で残念な気持ちになっていることはお伝えしておこう。【中川淳一郎・ネットニュース編集者】
【写真】強みは「福岡の隣」じゃない…佐賀県在住の筆者がおすすめする佐賀の魅力7選
3階以上のビルがないって聞いたよ
内容を簡単に振り返ってみよう。同番組では、九州の7県を「一軍」と「二軍」に分類し、「二軍」の県に「いやいや、わが県にはこんな素晴らしいものがあります!」と言わせる構成になっており、一見するとフェアな作りになっているように解釈はできる。ここまでは良かった。しかし、「二軍」に入った県の中でもさらに“格付け”がなされ、佐賀県を最も低い立ち位置だと断じ、徹底的に下げまくり、それを娯楽として全国に放送したのである(少なくとも筆者にはそう感じられた)。

番組では、福岡県を「一強」としたうえで、「一軍」には熊本と鹿児島が入った。「一軍半」という微妙なポジションに長崎を配置し、「二軍」には大分・宮崎・佐賀が入った。長崎県民はこの件について「出島を通じて世界と交易してきた我々は九州を見ておらず世界を見ている」「横浜と神戸を意識していて、九州は眼中にない」といった形でそのプライドを表明した。
そして、佐賀について“圧倒的に下で”とし、長崎県民に「申し訳ない! 佐賀は可哀想。いろんな意味で通り道」と言わせた。これは街頭インタビューにおける一般人による発言だが、おそらく番組スタッフはこのような質問をしたのであろう。
「ところで、もっとも立場が低いと多くの人が言ってる佐賀県についてのイメージをお聞かせいただけますか?」
不躾なテレビの直撃取材に応じるような、ノリが良くサービス精神のあるこの長崎県民としては、「あっ、ここは佐賀県をバカにする発言が求められるんだろうな!」ということを瞬時に察したのであろう。だからこそ長崎県民の女性は「申し訳ない! 佐賀は可哀想 いろんな意味で通り道」と言った。他にはこんなコメントも紹介された。
「佐賀駅から一駅で無人駅。それが証拠じゃないですか」
「なんもないらしい」
「佐賀は気付いたら長崎に行ってる」
「3階以上のビルがないって聞いたよ」
強みは「福岡の隣」
福岡県との県境に位置し、特急で博多駅まで20分、新幹線で最短12分という好立地である・佐賀県鳥栖市在住の一家(夫が佐賀出身で妻が福岡出身)もインタビューをされていたが、妻は「佐賀ナンバーで福岡に帰るのがちょっと恥ずかしい」と発言。夫は「佐賀の中でも、鳥栖市は正直言うと気持ちは福岡県民なんですよ。出身を聞かれたら佐賀県とはいわず、鳥栖って言う。ヘタすると福岡って言うこともある」と述べた。宮崎県民は佐賀について「何もない。あれは福岡県佐賀市だもんね」と笑いながら言っていた。
番組では、「二軍」による“反撃”もあり、それに一軍の県民が納得する展開になった。大分県の場合は九州一円に展開するファミレスチェーンの「ジョイフル」の発祥地であること、宮崎県は毎年2月に、巨人軍ら、プロ野球チームがキャンプインすることなど、それぞれの強みが紹介された。
ところが、佐賀は「福岡の隣」というのが強みだとされたのだ。流石にバランスが悪いと思ったのか、フォローするかのように佐賀県小城市が本社の竹下製菓のアイス「ブラックモンブラン」が紹介されたが、出演者の佐賀出身・どぶろっくはこう発言した。
「本当に、福岡様の側近としてやらせてもらいます」「なんだったら我々の方が福岡の良さを知っている」「佐賀ナンバーで福岡に入る時は、一回ハザードをたかなきゃいけない(と言いながら恐縮して拝むポーズ)」
ブラックモンブランも福岡でいい?
福岡出身のカンニング竹山は「もうブラックモンブランは福岡のものでいいんじゃないか? とXで言ったら佐賀の人が怒って大炎上」とも言い、九州人が好きなブラックモンブランですら佐賀から強奪しても構わん、といった話に繋げる。そして、大阪出身のケンドーコバヤシは「客観的に、このランキング、正解です」と締める形にし、スタジオ全体が佐賀県を落とすことに終始したように感じられた。
まぁ、所詮はバラエティ番組の演出であることは理解しつつも、テレビ番組のつくりというものが、日本からまったくなくならない「いじめ」と同質のものになっていることはご理解いただきたい。
いじめている側は「悪ふざけの範疇だった」「冗談のつもりだった」「本気に捉えてほしくなかった」などと、悪意はなかったんだよ〜、と軽く言う。それが子ども達の中で同級生を「〇〇菌」などと呼んだり、暴力なのに「プロレスごっこだった」と開き直る態度に繋がる。
不毛な「地域マウンティング」
「自虐」は構わない。だが、自虐を強いる空気感は健全ではないのでは。普段から佐賀県で熱烈な歓迎を受け、佐賀愛を語るどぶろっくだが、全国番組で佐賀をいじられてあのような発言をせざるを得ない空気感を察したのであろう。バラエティ番組においては正しい姿勢なのかもしれないが、実際、佐賀県民は今回の番組に対して静かな怒りを抱いている。
知り合いの佐賀県民からは、どぶろっくに対しての失望も聞かれた。散々長崎県民からバカにされたのだから、せめて「佐賀のことを通過点だの何だの言うんだったら、長崎の県境で新幹線の線路、切ってやるぞ」「福岡・大分・長崎・鹿児島に繋がる鳥栖ジャンクションで、他県ナンバーからは通行税3000円取ってやろうか?」ぐらいはブチかますべきだったのでは。滋賀県民が京都と大阪の人間に対して「なんだったら琵琶湖の水、止めてやるぞ」と言い放つように。
いずれにせよ、この「地域マウンティング」というものは極めて不毛である。今回は九州内での比較だったが、全国レベルになった時に今回の一軍たる福岡・熊本・鹿児島はどこに位置するか? ないしは世界レベルになった時にニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルス、北京、上海、香港、ソウル、バンコク、シンガポール、ドバイ、プラハ、ベルリン、ロンドン、パリ、ローマ、バルセロナあたりと比較になるか。
この「大九州スペシャル」は、“お山の大将”争いをテレビ局がけしかけ、“いじめ”の構図を想起させるようなうすら寒い内容に映り、極めて残念に感じた次第である。
ネットニュース編集者・中川淳一郎
デイリー新潮編集部
