グラフェンの宇宙利用に期待。光で進む宇宙船の実現へ一歩前進
レーザー照射で進む宇宙船ってすごいな。
放物線飛行(放物線を描くように飛行して急降下時に無重力状態をつくる方法)中の機内で、興味深い実験が行なわれました。炭素原子からなる薄いシートであるグラフェンを使えば、太陽帆船を操縦したり、宇宙空間における衛星の位置を調整したりできる可能性が見えてきたそうですよ。
無重力でグラフェンの反応を実験
欧州宇宙機関(ESA)は、この革新的な素材が宇宙空間でどのように機能するかを確認するため、無重力状態での試験を実施しました。
2025年5月、国際的な研究チームは、放物線飛行による短時間の無重力状態を作り出すことで宇宙飛行を疑似的に再現。グラフェンシートで作られた3次元素材であるグラフェンエアロゲルを用意して、無重力状態の間に連続的にレーザー光線を照射しました。
グラフェンエアロゲルでできた3個の小さな立方体は瞬時に前方へと動き出し、光によって推進する能力があることを示しました。
ESAプロジェクトの科学者であるMarco Braibanti氏は、声明で次のように述べています。
反応は極めて迅速かつ劇的でした。グラフェンエアロゲルは、まばたきをする間もなく大きく加速しました。すべてが30ミリ秒内で完了しました。
学術誌Advanced Scienceに掲載されたこの研究結果は、将来の宇宙ミッションにおける推進剤不要の推進技術の可能性を切り開くかもしれません。
レーザーを射て。光で飛ばせ
グラフェンは人工の二次元材料(極薄シート状の材料)で、軽くてしなやか、おまけにめちゃくちゃ頑丈でけた違いの耐性を持つことで知られています。黒鉛(グラファイト)から抽出された純粋な炭素で構成されており、幅広い用途があるそう。
ESAの実験では、グラフェンの導電性とエアロゲルの構造的な利点を組み合わせた、超軽量で多孔質なグラフェンエアロゲルを使用。飛行中の真空チャンバー内に置いた3個の立方体にレーザーを照射しました。その様子が下の動画に記録されています。
レーザー光線が真空チャンバー内のグラフェンエアロゲルを推進させる様子を、高速カメラがガラス越しに捉えています。各実験は30ミリ秒実施されました。動画は、10分の1のスローモーンションになっています。
また、今回の実験では、レーザーを調整することで推進力を制御できることもわかりました。レーザーが強ければ強いほど、加速度は大きくなります。Braibanti氏は、「レーザーパルスが鋭い加速のピークを引き起こしたあと、エアロゲルは減速します」と説明しています。
ところが、地球上だとエアロゲルはほとんど動かないとのこと。ESAによると、速度や推力、距離の観点からすると、グラフェンエアロゲルの光による推進力を発揮させるカギは、微小重力環境にあるそうです。
未来の素材
グラフェンのユニークな特性は、宇宙旅行を含むいくつかの産業に革命をもたらす可能性があります。推進剤を使う必要がない極薄シートで太陽エネルギーを捉えて推進する宇宙船である太陽帆船は、将来的にグラフェンに依存するようになるかもしれません。
この素材は、宇宙空間における小型衛星の姿勢の制御に使用できるほか、グラフェンエアロゲルは光を推進力に変換することも可能とのこと。
ESAの材料物理・化学エンジニアであるUgo Lafont氏は、声明でグラフェンエアロゲルの可能性についてこう話します。
私たちは、推進剤を必要としない推進技術の未来への道を切り開きつつあります。超軽量のグラフェンエアロゲルは、実験室で生み出された革新的素材の完璧な実例であり、宇宙空間での燃料とハードウェアを大幅に節約できる可能性があります。
今回の実験結果は、ごく基礎的なものですが、通常の推進剤に代わる選択肢として、宇宙空間で光を使ってグラフェンエアロゲルを推進させる可能性を浮き彫りにしています。
核融合ロケットと合わせて、未来の技術の進化が楽しみです。

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