記事のポイントバティストはTikTokのコメント欄で生まれた話題を捉え、わずか5日でコラボ動画まで形にした。小さな会話に素早く自然に入り込む姿勢が、ブランドへの愛着を築く好機になった。長寿ブランドでもインディーブランドのように動くことで、SNS時代の瞬発力を示した。
3月16日、クリエイターのレベッカ・パウスマ(TikTokフォロワー4万6000人)が、「SLOMWにはドライシャンプーのコラボレーションが必要」の見出しでTikTok動画を投稿した。SLOMWとは、動画配信サービスのHuluで放送されているリアリティ番組「モルモン妻たちの秘密の私生活(英題:The Secret Lives of Mormon Wives)」のことである。投稿のなかで彼女はこう語っている。「こんなことを言うのは本当に意地悪だし、すごく悪いと思うんだけど、もうシーズン4なのよ。なんでジェン・アフレックはまだカメラの前で髪がベタベタなの?」。投稿は300万回以上の再生回数と21万2000以上の「いいね」を獲得した。3月17日、ドライシャンプーブランドのバティスト(Batiste)がコメント欄に「今すぐこれを上司に送る(Sending this to my boss rn)」と書き込んだ。そして3月26日、バティストはコラボレーションを実現させた。
@rebeccapousma

She is so beautiful and she is doing it all, I know she’s a mom and juggling 5 million things.. I just don’t understand

♬ original sound - reba

24時間で3万いいね、ブランドが見出した好機

「24時間以内に、あのコメントには約3万の『いいね』がついた。ゼロからあっという間に大きくなり、ほかのブランドも会話に参入しはじめた」と語るのは、バティストの親会社であるチャーチ&ドワイト(Church&Dwight)でスキンケア&スペシャリティヘアケア担当AVP(アソシエイト・バイスプレジデント)を務めるレミー・クライン氏である。ほかにも、ヘアケアブランドのアミカ(Amika)が「何かいいことに気づいてるね……(you’re onto something)」(7000いいね)と書き込み、ヘアケアブランドのリビングプルーフ(Living Proof)が「(ノックの音)コンコン(Knock knock)」(2000いいね)とコメントするなど、複数のブランドが反応した。クライン氏によると、バティストのソーシャルメディアマネジャーは、これほど話題になるとは思わずにコメントを残した。しかし、これほど急速に大きな反響を呼んだとき、彼女はそこにチャンスを見出した。「自社商品カテゴリーに関連する話題が出ているときは、そこに参加することが重要だ。パウスマは、スモールクリエイターとして純粋に楽しんでやっていただけなので、ブランドへの愛着を築くのに最適な方法だった」とクライン氏は語る。クライン氏はチームに指示してパウスマに製品を翌日配送で送り、有料パートナーシップにも投資した。これはブランドとして、キャンペーンを立ち上げるまでのスピードとしては過去最速だった。「チームが今後さらに力を入れていきたいのは、どのようにすれば自然な形で会話に加われるか、である」。パウスマ自身は、「ドライシャンプーの会社がまだこれをやっていなかったことが驚きだった。だって、ジェンの髪がベタベタなのはもう何年も前から話題になっていたから」と、カウンセリングの大学院生である彼女はGlossyに語った。そのため、自分の投稿がバズったこと自体にはそれほど驚かなかった。

コメントから撮影までわずか5日間の舞台裏

キャンペーンはコメントからコンテンツ制作までわずか5日で実現した。バティストは、ブランドがコメントを残した日に、アフレックのチームに連絡を取ったとクライン氏は語る。「コメントから2日後の午後にはジェンとの契約を結び、3日後の朝にはロサンゼルスで彼女と一緒にコンテンツの撮影をしていた。あまりに早かったので、彼女の衣装さえなかった。ロサンゼルスにいた我々のチームがギャップ(Gap)に行って、予備として服を何着か買ってきたほどだ」。制作された動画(1本はすでに公開済みで、もう1本は近日公開予定)は、TikTok、Meta、レディット(Reddit)でプロモーションされるとクライン氏は述べ、「ジェンの髪がベタベタな話題については、複数のサブレディットにわたって多くの会話が交わされている」と付け加えた。ブランドはキャンペーンのSEOにも取り組んでいる。「人々がこのことについて検索しているので、できるだけ多くのチャネルでこれを拡散させるにはどうすればいいかを考えているところだ」。

批判を逆手に取った動画の中身

動画のなかで、アフレック(TikTokフォロワー270万人、インスタグラムフォロワー160万人)には、バティストのチームに所属するインフルエンサーマネジャーが書いた台本が用意され、自身に批判する者に正面から反論している。マネジャーも番組のファンであり、そのためモチーフを巧みに取り入れることができた。動画ではアフレックがこう語る場面が映し出される。「OK、コメントは見てるし、ひとつ対処しなきゃいけないことがあるの。(画面にコメントがポップアップ表示される)。正直、私の髪、ちょっとひどかった。だから、元祖ドライシャンプーのバティストと手を組んで、髪をちゃんとすることにした」。ドライシャンプーを塗布したあと、彼女は続ける。「えっ、すごい。私の髪にもレデンプションアーク(救済ストーリー)が必要だったってことね。ありがとう、バティスト!」。TikTokで動画は1060万回再生、16万1000以上の「いいね」を獲得している。アフレックのコンテンツが公開される前に、バティストはパウスマに内容をほのめかさせた。ある投稿のなかでパウスマは、「こんなことを言うのはおかしいかもしれないけど、ジェン・アフレックにブランドとの契約を取ってあげたのかもしれない」と述べている。
@jenniferaffleckk If you saw my hair before this… no you didn’t 😌 thanks @Batiste #batistepartner ♬ original sound - Jen Affleck

「インディーブランドのように動く」

コスメブランドのエルフビューティー(E.l.f. Beauty)出身のクライン氏は、バティストとチャーチ&ドワイト傘下のスキンケアブランド、ヒーロー(Hero)の両方を担当しており、両ブランドとも「再活性化」の時期にあると語る。「ブランドに関連があると思われる瞬間を見つけ、そこに乗るチャンスがあるなら、チームの邪魔にならないようにしながら、素早く物事を実現できる社内文化を作ろうとしている」とクライン氏は語り、「バティストは長いあいだ存在してきたブランドだが、我々の目標はインディーブランドのように振る舞うことだ」と付け加えた。「バティストはできる限り早く動いてくれた。それを見て、『マーケティングチームの給料を上げてほしい』と思った」とパウスマは語る。「彼らの素晴らしいマーケティングと、関わるすべての人への配慮の表れだと思う。私は搾取されたとは感じなかった。バティストは私のことも大切にしてくれたし、一連の出来事における私の役割もちゃんと認めてくれたと感じた」。[原文:How Batiste Turned a Viral TikTok Into a Campaign in 5 Days]Sara Spruch-Feiner(翻訳、編集:藏西隆介)