交通ルールの強化にとどまらず、利用者の消費にも大きな影響を与えると、渡辺広明氏は説く

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 2026年4月1日から、自転車に対して交通反則通告制度、いわゆる青切符が導入される。これまで注意や警告で済むことが多かった違反行為が、反則金という実効性のあるペナルティに変わり、自転車利用者にとっては大きい制度変更だ。自転車が名実ともに“車両”として扱われる流れが、一段と強まることになる。

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 違反の対象範囲は広く、信号無視や一時停止無視、右側通行といった基本的な交通違反に加え、危険な歩道通行、無灯火、さらにはイヤホン使用やスマートフォンの“ながら操作”といった行為の多くが含まれる。対象となるのは16歳以上で、中学生以下については従来通り指導が中心となる見込みだ。

交通ルールの強化にとどまらず、利用者の消費にも大きな影響を与えると、渡辺広明氏は説く

 反則金の水準については、スマートフォンを手に持ちながら操作する行為が最も高額な部類に入り、およそ1万2000円程度とされる見込み。信号無視や一時停止無視は数千円から6000円前後、傘さし運転や片手運転は視界不良として約5000円程度、安全運転に支障が出るイヤホン使用や逆走、無灯火なども同程度の金額が想定されている。金額は運用によって変動する可能性があるが、納付しなければ刑事手続きに移行する可能性もあり、とうぜんながら軽視はできない。

 もっとも、これらの行為は従来から道路交通法で禁止されていたものであり、今回は実効性を伴って取り締まる仕組みが整備されたに過ぎない。背景には、自転車事故の多さ、とりわけ歩行者との衝突事故の増加と、ルール無視の常態化があるとみられる。

スマホ対策グッズに爆発的な需要

 この制度変更は、単なる交通ルールの強化にとどまらず、利用者の消費にも大きな影響を与えると筆者は考えている。“軽い乗り物”だった自転車が、責任ある“車両”へと位置づけられることで、利用者の意識は大きく変わり、違反を避けるための具体的な対策が求められるようになるからだ。その中でも特に重要になるのが、手に持たない、耳を塞がない、両手が自由であるという環境づくりだろう。

 売れ筋として明確に浮上する商品群がある。まず中心になるのがスマートフォン対策関連であり、これは爆発的な需要が見込まれるだろう。スマホを利用したナビゲーション需要そのものは消えない一方で、手に持つ行為のリスクが急激に高まるため、ハンドルにしっかり固定できるスマホホルダーは、今後の定番装備になる可能性が高い。また、音声ナビを活用するための片耳対応イヤホンや、耳を塞がない骨伝導タイプのデバイスも注目度が上がる。さらに、ハンドルに設置する専用ナビデバイスのように、そもそも手に持つ必要がない機器の存在感も増していくとみられる。

 中でも存在感を高めていくと思われるのが、耳を塞がない新しいデバイスとしてのオーディオグラスだ。OWNDAYSとHUAWEIが展開するEyewear2のような製品は、日常に溶け込むメガネ型でありながらナビ音声や音楽を楽しめる点が特徴で、第三者機関の評価でも高い支持を得ている。メガネという形状ゆえに違和感が少なく、ながらスマートフォン対策としても自然に取り入れられる点は大きな強みだろう。

意外と盲点?“雨の日”消費

 もう一つの大きな変化は、雨天時の行動だろう。先述のとおり傘さし運転は違反の対象となる。雨の日に傘を使えない状況が当たり前になるわけだ。

 少し古いデータになるが、「傘調査2022」によると、日本人の傘の所有数の平均は4.2本だという。出先で雨に降られてしかたなく買う……というケースでこれだけの本数になっているわけだが、そんな「緊急購買」の購入先として最も多いのがコンビニである。

 今回の自転車の青切符制度導入で、レインコートやレインポンチョ、レインパーカーといった雨具の緊急購買需要が高まることは必至だろう。そこで注目したいのが、コンビニが扱う雨具だ。

 たとえば、ファミリーマートが展開する人気ブランド、コンビニエンスウェアのレインポンチョ(税込2,435円)は、軽量でたたみやすく持ち運びに優れた仕様となっており、日常使いに適したアイテムとして支持を広げる可能性がある。ローソンも、4月14日よりアウトドアブランドのコールマンと共同開発したはっ水防水レインパーカー(税込3,980円)を4月14日に発売。テント技術を応用した背中のムレ対策や収納機能を備え、より本格的な用途にも対応できる設計となっている。

 緊急購買に限らず、軽量でコンパクトに持ち運べるモデルや、防水性と通気性を両立した機能性雨具は、今後、より求められるようになる。コンビニも、自転車利用を前提とした機能性を強調する商品ラインアップの拡充が進むとみられる。単なる雨具ではなく、自転車ユーザー向けの必需品として位置づける動きが強まる可能性がある。

便利グッズから「実用品」へ

 制度の影響は特に都市部で顕著に現れる可能性が高い。通勤や通学で自転車を利用する人が多い東京などでは、駅周辺や交差点、交通量の多い道路を中心に取り締まりが強化されると考えられる。

 このような環境変化の中で、スマホホルダーや音声デバイス、オーディオグラス、そして機能性レインウェアといった商品は、単なる便利グッズではなく、違反を回避するための実用品として認識されるようになる。中長期的には、安定した需要が見込まれる分野へと変化していくはずだ。

 青切符の導入によるその変化は交通安全の向上だけでなく、消費行動や市場構造にも影響を及ぼす。利用者にとっては早めの対策が重要であり、事業者にとっては手に持たない、耳を塞がない、雨でも快適といった価値をどのように商品として具体化するかが問われる局面に入ったといえる。制度変更を前向きに捉え、安全で快適な自転車利用を実現できるかどうかが、今後の大きな分岐点となりそうだ。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
流通アナリスト。コンビニジャーナリスト。1967年静岡県浜松市生まれ。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務など幅広く活動中。フジテレビ『FNN Live News α』レギュラーコメンテーター、TOKYO FM『馬渕・渡辺の#ビジトピ』パーソナリティ。近著に『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(馬渕磨理子氏と共著、フォレスト出版)がある。

デイリー新潮編集部