記事のポイント
米国・イスラエル、イラン紛争でガソリン価格が約30%上昇し、1ガロン4ドル(約600円)に迫っている。
ガソリン価格20%上昇で月間63億ドルの追加コストが消費者の裁量的支出を圧迫する可能性がある。
関税の混乱やエネルギーショックが中間層にもっとも重くのしかかり、経済の二極化が拡大している。


米国、イスラエル、イランのあいだで激化する紛争には収束の兆しが見えず、その影響は世界のエネルギー市場に波及している。

ここ数日で、米国各地のガソリンスタンドでの価格は約30%上昇し、1ガロン(約3.8リットル)あたり4ドル(約600円)に向かって上昇を続けている。

燃料費の高騰により、専門家たちは米国小売業界への急速な波及効果を予測している。輸送コストへの懸念が、すでに家計が圧迫されている消費者にさらなるプレッシャーを与えるためだ。

関税に起因するインフレの影響に小売業者がいまだ苦しむなか、消費者は燃料や必需品を優先し、裁量的な支出を控えはじめる可能性がある。

経済の専門家にとって、戦争が長引けば長引くほど、こうした結果が現実になる可能性は高まる。これは特に懸念される状況だ。ガソリン価格が歴史的に高くなる夏の旅行シーズンを控えているからである。

3月17日、国家経済会議(NEC)委員長のケビン・ハセット氏は、戦争が米国の消費者に与える打撃について質問された際、「我々の懸念事項のなかでもっとも優先順位の低いものだ」と発言し、批判を浴びた。

しかし、米国人はすでにまとめ買いやガソリン割引サービスの利用など、あらゆるところで節約方法を模索しはじめている。

「すべてが高くなった」と感じる消費者心理



サンタクララ大学リービー・スクール・オブ・ビジネスの教授であるアンディ・ツァイ氏は、「燃料費の上昇はドライバーの財布に大きな打撃を与え、小売店の売り上げを減少させる」と述べた。

ガソリン価格は消費者の購買意欲を低下させる決定的な要因になるとも話し、「公式統計が何と言おうと、あるいは都合良く調整されようと、あらゆるものが以前より高くなったと感じられる」と同氏は述べた。

「ガソリン小売価格が一定の基準を超えると、人々が高額商品の購入を先延ばしにし、あれば便利なものの購入を控えるため、生活必需品は買い続けても、消費は大幅に減少する」と同氏は述べた。

ツァイ氏はさらに、「経済的な影響について議論をする際には、K字型あるいはバーベル型と呼ばれる二極化した経済の状況を認識しなければならない」と述べた。

バーベルの頂点では、高所得世帯が旅行、ラグジュアリー、体験に引き続き惜しみなく支出している一方、中間層は消費水準を下げたり、購入を完全に控えたりしている。

「関税の乱高下、移民政策、エネルギーショック、中東での長期的な不安定化の見通し。これらすべて、中間層にもっとも重くのしかかり、バーベル型の形状を広げる傾向がある」とツァイ氏は述べた。

月間63億ドルの追加コストが裁量的支出を直撃



小売業界のアナリストたちは、今回のガソリン価格高騰危機が、すでに苦境に立たされている小売経済にとって新たな打撃になると予測している。

リサーチ企業コアサイト・リサーチ(Coresight Research)のグローバルリサーチ責任者であるジョン・マーサー氏は、2025年の同時期、3月の時点で、米国の消費者はガソリンに月間約310億ドル(約4兆6500億円)を支出していたと述べた。

「ガソリン価格が理論上20%上昇し、消費者が消費量を削減する余地や意思が限られている場合、1年前と比較して月間63億ドル(約9450億円)の追加コストが消費者にのしかかることになる」とマーサー氏は述べた。

店舗への来店のためのドライブを控える傾向と相まって、これは一部の消費支出、主に裁量的な支出カテゴリーに悪影響を及ぼすだろうとマーサー氏は述べた。これには、衣料品、靴、美容、家電、家庭用品など小売カテゴリーが含まれる。

マーサー氏は、ガソリン価格の上昇は消費者の裁量支出を確実に圧迫するだろうと述べた。まず影響を受けるのは、必需品の価格上昇にもっとも敏感な低所得層の消費者としている。

一方で、高所得層の消費者のあいだでも出費を控える傾向がある。株式市場の下落が消費者心理と支出意欲を低下させるためだ。

「高所得層の消費者が2025年の小売売上成長を引っ張ったが、2026年も同様になると予想している」とマーサー氏は述べた。

コアサイト・リサーチの週次消費者センチメント指数は、低所得者層の消費者の金融信頼感の低下を捉えているとマーサー氏は述べた。

2026年はすでにインフレがなお高止まりする年と予想されており、米国の消費者物価指数(CPI)が年間平均で2%を上回る6年連続の年となる可能性が高い。

価格の透明性と税還付シーズンが救いとなるか



小売業者にとって、今後の売上を維持するうえで価格の透明性がカギとなりうるとツァイ氏は述べた。同氏は価格変動の一部が燃料費、関税、仕入れコストによるものであると説明することで、「反感ではなく信頼を築くことができる」との見方を示した。

一方、「消費行動の変化のシグナルとして、我々は(週次の)来店客数と独自の消費者調査データに注目していく」とマーサー氏は語る。

しかし、ひとつだけ明るい兆しもある。

「ひとつの緩和要因は、税金還付シーズンの好調さだ。多くの消費者にとって追加コストを吸収する緩衝材となるだろう」とマーサー氏は述べた。

[原文:Rising gas prices could be the straw that breaks consumer spending]

Gabriela Barkho(翻訳、編集:藏西隆介)