「ハリウッドで映画化か…」フィギュア女子金メダルのアリサ・リュウが父親と歩んだ「激動ドラマ」
「最重要指名手配リスト」に記載
ミラノ・コルティナ冬季五輪のフィギュア女子シングルで、坂本花織(25、銀メダル)、中井亜美(17、銅メダル)を上回って金メダルを獲得した米代表アリサ・リュウ(20)。彼女の華麗な演技や、日本選手との親交が注目を集めた。
そうしたなかアリサと、彼女をフィギュアスケートの世界に導いた父親の弁護士アーサー・リュウ氏の親子の激動のドラマが米メディアに大きく報じられて話題を呼んでいる。
アーサー氏は中国四川省の小さな山村で生まれ育った。6人兄弟で、父親は公務員、母親は農業に従事していた。アーサー氏の人生を大きく変えたのは20代のときだった。
USA TODAY(電子版)によると、アーサー氏は同紙の取材に、広州の大学に在学中に北京の学生運動と連帯して民主化運動のデモやハンガーストライキを組織したことなどを明らかにした。
そして1989年6月、民主化運動のデモを戦車も動員して武力で鎮圧した天安門事件に憤りを感じて、抗議活動を組織。後日当局に呼び出され尋問されたが
「デモの組織に参加した学生の名前を明かすことを拒否した」
ことから、「最重要指名手配リスト」に載り、刑務所行きは時間の問題だったという。だが知人男性の手助けもあり、中国から船で当時イギリス統治下の香港に脱出してその後米国に渡った。
米カリフォルニア州に移住し、カリフォルニア大学で法学位を取得して弁護士になり、インターパシフィック・ロー・グループを設立。そして匿名の卵子提供者により、代理母出産で長女のアリサら5人の娘を授かった。アーサー氏はシングルファーザーで、彼の母親が米国に移住して、アリサたちの育児を手伝ったという。
アリサは5歳の時にフィギュアスケートを始めた。アリサの天性の才能を見抜いたアーサー氏は、最高の指導を受けさせ世界中を転戦させた。アリサは今年1月4日の米CNN『60Minutes』のインタビューで、
〈13歳と14歳の頃は毎日スケートをしていました。とても特異な子ども時代でした〉
と振り返っている。
’19年、13歳の時にアリサは全米フィギュアスケート選手権で優勝。米国史上最年少のフィギュア女子・全米チャンピオンとなった。また米国のフィギュア女子選手として史上初めて3度のトリプルアクセルを成功させるなど天才ぶりを発揮して一躍スター選手になった。
’22年の北京冬季五輪出場をめぐっては異変が起きた。アーサー氏とアリサら家族は、中国に監視されスパイ活動の対象にされたという。FBIが家族を保護し大会期間中は少なくとも2人の護衛がついたという。米Fox News Digtalが報じている。
父親の管理から解放されて金メダルを
アリサは、北京冬季オリンピックで6位に終わった直後の’22年4月、わずか16歳で引退を発表し全米に衝撃を与えた。
「コロナ禍でリンクが閉鎖されたことで、離れて過ごしていた家族と一緒に過ごすようになり、スケート漬けの生活に戻りたくなくなったと当時を語っています」(スケート関係者)
だが2年後の’24年3月、アリサは自身のインスタグラムで現役復帰を発表。リンクに戻ってきた。
「以前はアーサー氏がアリサのトレーニングを厳しく管理してコーチや振付師を何度も変えるなどしていたが、アリサは復帰に当たってトレーニングなど全てに関する決定権を自身が持つことを条件にしたという。父親の管理から解放されてさらに大きく羽ばたきましたね」(前出・スケート関係者)
’25年の世界選手権で優勝、そして今回の冬季オリンピックで米代表として金メダル2個(シングルと団体)を獲得するなど、華々しいカムバックを果たした。
彼女の強さは、ファミリーが激動の歴史をくぐり抜けてきたことが一つの要因になっているのではないだろうか。
そんななか、アーサー氏とアリサの親子の激動のドラマをハリウッドが映画化する可能性も取り沙汰されている。
アリサは前出のFox News Digtalに、
〈(映画化するなら)父の物語に焦点を当てたい。父の物語は本当に素晴らしいし、すべては父の行動があったからこそ起こったことだと思うから〉
と語っている。ドキュメンタリー映画になるのか、それとも劇映画か。劇映画ならアーサー氏やアリサ役は誰が演じるのかなど成り行きが注目される。
そして、フィギュア女子は坂本選手が現役引退を表明しており、中井選手や千葉百音選手(20)ら若手選手がアリサに挑戦し、また新たなドラマが生まれることにも期待したい。
取材・文:阪本良(ライター、元『東京スポーツ新聞社』文化社会部部長)
