予約困難店「くろぎ」の味を京都・東山で、近代日本画の巨匠晩年の邸宅でいただく滋味深い和食
日本画の先駆者と称された竹内栖鳳(せいほう、1864〜1942年)。「西の栖鳳・東の大観」と称され、東京の横山大観(たいかん、1868〜1958年)とともに近代日本画をリードした巨匠だ。栖鳳が晩年の13年間を過ごしたという旧邸宅『東山艸堂(そうどう)』を改築した複合施設、『THE SODOH』は、京都・東山の人気スポットのひとつだ。その中のメインダイニング『くろどう』が和食レストランとして、2025年9月にリニューアルオープンしたと聞きつけ、おじゃましてきた。
舞台は1700坪の庭園に囲まれた、築約100年の日本家屋
2003年に誕生した、レストラン・カフェ・結婚式場からなる『THE SODOH』は、1700坪(約5600平方メートル)の敷地を誇る広大な複合施設だ。ベースとなる建物は1929年に建築された竹内栖鳳の私邸で、西に八坂の塔、北に高台寺(こうだいじ)を望む場所に位置する、観光スポットからアクセス抜群のスポット。かつては各界の著名人が集う文化芸術交流の場となっていた場所だ。敷地内からは5重の塔も見える。

京都の代表的観光地・清水二寧坂の入口に位置する『THE SODOH』
自然に包まれた石畳の道を進むと、『くろどう』の入口が見えてくる。もともとイタリアンレストランとして親しまれていたが、2025年9月を機に和食レストランへとリニューアル。芸術家のこだわりが詰まった日本家屋は、できるだけ当時のデザインを継承しながら改修したことで、モダンな雰囲気を纏いながらも、ノスタルジックで趣のある建築となっている。

緑に囲まれた『くろどう』の入口
中に一歩入ると、ウッディなアンティーク家具が並ぶ、高い吹き抜けの空間が広がる。まるで、アジアンリゾートのような空間だ。料理は東京の予約困難な和食の名店『くろぎ』を担う料理人、黒木純(くろぎ・じゅん)氏が監修したメニューが味わえる。黒木氏は日本最高峰の割烹であり、和食の神とも言われる西健一郎氏(2019年、81歳で死去)の『京味』(東京・新橋、2019年に閉店)など、名だたる名店で修業を重ね、『くろぎ』のオーナーシェフとなった人物だ。現在は、日本料理研鑽会の一員でもあり、和食文化発展の一翼を担う。

アジアンリゾートのような空間が広がる内装
”和食の神”のもとで修業を重ねたシェフが監修する魅力的な料理の数々
庭の木々のライトアップが楽しめるディナータイムは、コースのほか“本当に好きなものを、好きな調理方法で、好きなだけ。” という想いをかなえる、アラカルト料理を展開。ランチタイムには、3つのコースを提供しているが、今回は全5品の「YASAKA」(3800円)をオーダーしてみた。

ほっとするやさしい味わいの「お豆腐と豆乳」

甘酸っぱいイチジクがコクのある鴨の味わいを引き立てる「京鴨と無花果のサラダ」
熱したアツアツの高温の陶板の上に、熟成した胡麻豆腐が乗って登場する「謹製 胡麻豆腐」は、思わず食欲そそる一皿。最後にスタッフが目の前で醤油を回しかけるパフォーマンスがあり、料理が完成するのだが、香ばしく焼き上げた豆腐から湯気が立ち上り、この臨場感もたまらない。表面に箸を入れると、やわらかな豆腐が顔を出し、こんがりサクッとした外側と、とろりとした内側の食感のコントラストが楽しめる。胡麻の豊かな風味に添えられた山葵(わさび)の爽やかな辛味が絶妙にマッチ!

こんがり焼き上げた「謹製 胡麻豆腐」
京都の食材を使った主菜 ここでしか味わえない京都版『くろぎ』
主菜は「京丹後地鶏 チキン南蛮」や「甘鯛 鱗焼き」など5種から選べ、今回は「京丹波高原豚 角煮」をチョイス。主役の京丹波高原豚(きょうたんばこうげんとん)は、京都府の豊かな自然と寒暖差の激しい環境で育つ、甘みとコクのある脂身が特徴的なブランド豚。非常にやわらかで、その口どけと、コク深い旨みを感じるタレが病みつきになること間違いなしだ。

「京丹波高原豚 角煮」

〆には滋味深い味わいの「鯛茶漬け」が登場。「白ご飯 赤出汁」・「くろどうカレー」などから選べる

甘味として登場した「本日のジェラート」見た目にも美しい

窓側席から見える、自然あふれる庭の景色
大正元(1912)年からの歴史を受け継ぐ建築と、自然美を愛した日本画家の美意識を継承しつつ、現代のゲストを最大限にもてなすための空間として誕生した『くろどう』。東京で3年先まで予約が取れない『くろぎ』の味を、風情あふれる京都らしい空間に酔いしれつつ、味わってみては。
『くろどう』
[住所]京都市東山区八坂通下河原東入る八坂上町366
[電話]075-541-3331
[営業時間]平日 ランチ11時半〜14時/ 16時
平日 ディナー 17時半〜20時/ 22時
土日祝日17時半〜20時半/ 22時半
[休日]不定休
[交通]バス停「東山安井」から徒歩3分
京阪「祇園四条駅」出口1から徒歩10分
文・写真/中村友美
フード&トラベルライター。東京都生まれ。美術大学を卒業後、出版社で編集者・ディレクターを経験し、現在に至 る。15歳からカフェ・喫茶店巡りを始め、食の魅力に取り憑かれて以来、飲食にまつわる人々のストーリーに関心あり。古きよき喫茶店や居酒屋からミシュラン星付きレストランまで幅広く足を運ぶ。休日は毎週末サウナと温泉で1週間の疲れを癒している。
