びびどる・生稚くれあ&庭咲ぴよ

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 2025年11月5日、VTuber事務所「Vivid V」の運営企業・株式会社LinkUpは倒産手続きと、事務所解散を発表した。

【画像】突然の“事務所解散”に巻き込まれる……「びびどる」として独立を決めたVTuberたち

 これだけなら特に珍しい話ではない。しかし、この事務所の倒産/解散には「会社代表が会社資金を横領した」というセンセーショナルな理由が絡んでいた。所属タレントたちの告発ともいえる報告も相まって、Vivid Vの解散は大きな話題となった。2025年にはアメリカのVTuber事務所大手・VShojoが似た理由で解散に至っており、それも合わせて拡散していったと考えられる。

 しかし、Vivid Vはよくよく調べてみると、所属VTuberが全て個人勢出身者で構成されており、一般的なVTuber事務所とはやや異質な要素も目立つ。目を疑うような倒産理由とともに、「この事務所はなんだ?」と疑問に思った人も少なくないはずだ。

 本記事では、元Vivid V所属で、現在はVTuberグループ「びびどる」に所属する個人勢VTuberの生稚(いきち)くれあと庭咲(にわさき)ぴよを招き、インタビューを行った。そもそも、Vivid Vとはどのような事務所だったのか。解散の舞台裏で何が起きていたのか。びびどるとして再スタートを切った現在の状況と合わせて、赤裸々に語ってもらった。(浅田カズラ)

■VTuberがスタッフとして参加? Vivid Vに加入した経緯

--まずは、みなさんの自己紹介からお願いいたします。

生稚くれあ:びびどるのわがまま担当、吸血鬼アイドルの生稚くれあです!

庭咲ぴよ:びびどるのぴよっこ担当、庭咲ぴよです!よろしくお願いします!

――ありがとうございます。そもそも、びびどるのお二人はどのような経緯でVivid Vに所属されたのでしょうか?

生稚くれあ:私は個人勢として活動していたのですが、VTuber事務所の運営に興味がありました。そんな中、たまたまXで事務所立ち上げの投稿を見かけて、どうやって立ち上げたのか、どのぐらいお金がかかるのか、など話を聞いて見たいと思い、当時の社長とお話しをする機会を得ました。そこから「じゃあうちでスタッフやってみない?」と打診され、スタッフ兼タレントとして加入が決まりました。

--スタッフとしても所属されていたのですね。どのような役割を担っていたのでしょうか?

生稚くれあ:基本的には、スカウトがメインでした。1期生の一部と全体の半分くらいは、私がスカウトした方たちです。さらにそこから、びびどるの立ち上げとプロデューサーも担当していました。

庭咲ぴよ:私も、もともとは個人勢として活動していて、くれあちゃんからスカウトされました。

――ちなみに、そのほかの所属メンバーも、もともと個人勢だったのでしょうか?

生稚くれあ:そうですね。もともと個人勢だった人がそのまま所属していたと思います。私を含めたびびどるのメンバーは、今回の倒産騒動を受けても活動に大きな影響はなかったです。

■Vivid Vの実態と、「なんとかしよう」と奮戦していた矢先の解散

--Vivid V所属後、なにかよかったことや、逆によくなかったことはありましたか?

生稚くれあ:よいことはあまり……(笑)。とにかく、報連相がなっていないとすぐに感じましたね。企画などもいきなり決まって伝えられることが多かったです。

庭咲ぴよ:加入直後から組織としては不安定だなと、割とすぐにわかりましたね。それでも、いま親しくさせてもらっているメンバーと出会えたことや、新しいリスナーさんと出会えたことは、よかったなと思っています。

--率直にお聞きしますが、Vivid Vは事務所としてどんなことをしてくれたのでしょうか……?

生稚くれあ:ミーティングはしてくれましたが、びびどるを活用してなにか企画を生み出すようなことはしていなかったですね。個人はもちろん、びびどるの企画も全部自分たちで考えていました。

 スタッフさんが月一でお話をしてくれる時間があったのが、事務所としてやってくれた一番大きなことだったと思います。

--そんな中、Vivid Vは先日解散・倒産手続きを発表しました。所属事務所の解散はVTuberにとってなかなかレアな経験だと思いますが、解散直後はどのようなタスクが生じていましたか?

生稚くれあ:解散してから、個人宛にいただくお仕事の連絡は多少増えました。ただ、先ほどお話ししたようにそれまでも基本的には個人で対応していたので、解散後も大きな変化はなかった、というのが実情です。

--解散のお話は突然伝えられたのでしょうか?

生稚くれあ:タレント向けには当時、説明会が実施されましたが、気になることは少し前からたくさんあったんですよね……。それを会議で確認して、何度か「次回へ持ち越し」と先延ばしされた記憶があります。

庭咲ぴよ:徐々に判明してきた感じだったよね。

--なにかしらの兆候があったというより、全体的におかしい状況が生じていたと。

庭咲ぴよ:所属した時点で、いろいろおかしいかも? と感じることが多くて、それを「みんなでなんとかよくしよう!」と意気込んで活動していたのですが、いつの間にか……。

生稚くれあ:スタートアップだったので、運営自体はみんな手探りで頑張っていました。所属VTuberも運営スタッフの方々も、協力してなんとかしようと、いっしょに努力はしていましたね。

--なるほど。「もっとよくしよう」という思いは、逆に結束力を生みそうですね。1周年記念のリアルイベントは、どのような内容だったのでしょうか?

生稚くれあ:ライブやグッズ販売などを行う、一般的なリアルイベントです。当時の所属メンバー26人が参加していました。

庭咲ぴよ:その準備も、スケジュールがギリギリだったような。

生稚くれあ:参加メンバーも多い中で企画プログラムを組んでいたのですが、初のリアルイベントにも関わらず、キャパシティ100人規模の会場だったのも大変でしたね。ソールドアウトしたのですが、人手不足で物販に長蛇の列ができちゃって、時間もかなり押してしまったので、ファンの皆さんに辛い思いをさせてしまいました……。

庭咲ぴよ:楽しんでくれた人もいましたけど、不満も出てしまってましたね。

生稚くれあ:時間もかなり押しちゃいました。

■事務所解散に巻き込まれたVTuberの身に起きること

--Vivid Vの解散は、その内容も相まって広範囲で話題になりました。その渦中にいた当時の所属タレントのみなさまには、解散後どのようなことが起こりましたか?

生稚くれあ:これが全然分からないんですよね。自分たちもよく分からないままニュースになっていたので、「周りがすごく騒いでるぞ」くらいにしか思わなかったですね。

庭咲ぴよ:逆に、「解散したし、今まで通りがんばろっか!」みたいな雰囲気でしたね。

--ちなみに、他の事務所から引き抜きの連絡などはあったのでしょうか?

生稚くれあ:お誘いをいただいたこともありますが、事務所はしばらくトラウマというか、そんな事情をお伝えして、お断りしました。

--X上でのファンの反応はいかがでしたか? 励ましの言葉が多そうですが、なかにはこれまでの運営不手際から、不満を口にする人もいそうかなと思いまして。

庭咲ぴよ:全体を見れば、不満を言っている方もいたと思うんですけど、自分のリスナーさんは静かで、すごく平和でしたね。明らかになった後でも「まあこれはしょうがないよね」「ぴよちゃんは悪くないから」といった反応がほとんどで、気を使ってもらっていたのかなって。

生稚くれあ:私も同じく平和でしたね。2022年から活動して3年目ですし、どこか親目線のファンも多いのかなと思います。

--解散後、Vivid Vの他の所属メンバーとは、現在もつながりがあるのでしょうか?

生稚くれあ:仲が良かった人たちとは、いまでも交流があります。Vivid V所属メンバーは「もともと個人勢として活動していた」以外の共通点があまりなかったのですが、ジャンルが近い人とは話す機会は多かったので。

--不祥事による事務所解散を経験し、所属中もあまりメリットに恵まれなかったお二人から見て、個人VTuberが事務所に所属する際に、気をつけるべきだなと実感したことはありますか?

生稚くれあ:自分たちでも予測のつかなかった出来事ではあったので、なにに気をつけるべきかは、なんとも言いにくいですね。そもそも、VTuber運営は軌道に乗せることが難しい事業だと思いますし、倒産や解散はよく耳にする話です。「所属前によく考える」は大前提ですが、こうしたトラブルは意外と誰にでも起こり得るので、関係ないと思わず、常に意識しておくことに越したことはないと思います。

庭咲ぴよ:あえて気をつけるポイントがあるとしたら、気になることがあれば最初にしっかり確認することが大事だと思います。私も所属時に説明を聞いた際、よく確認しなかったことは反省点です。特に、どう収益化していくかの計画については、ちゃんと踏み込んで質問したほうがいいかなと思いますね。

■独立した「びびどる」はどんなグループ?

――ここからは、現在も続くびびどるの話に移っていければと思います。まず最初に整理したいのですが、びびどるはどのような経緯で立ち上がったグループなのでしょうか?

生稚くれあ:びびどるは、私がVivid Vのスタッフを辞めた後に立ち上がり、同時にプロデュースを依頼されて始動したグループです。その後、事務所側はほとんど運営に関与しなかったので、自然と独立して今に至ります。

--グループとしては所属メンバー7人とかなり大所帯ですが、どのようなコンセプトなのでしょうか?

生稚くれあ:いわゆるバラエティアイドルも目指すグループで、歌だけでなく企画やトークなど幅広く力を入れています。

--Vivid V解散後、びびどるを独立・活動継続しようと思ったのはなぜですか? 事務所と合わせて解散する選択肢もあったと思うのですが。

生稚くれあ:やりたいことがまだ残っていたのと、イベント『びびどる文化祭』の開催が決定済みだったからですね。準備はしっかりしていたので、ちゃんと成し遂げておきたかったんです。そして、びびどるとして様々なイベントに出演してきたことで、「このグループいいね」といろいろな方から言ってもらえていたのも大きいです。

 とはいえ、私は続けたいけれど、誰が残ってくれるかは分からない状態でした。それでも、一人でも二人でも残ってくれるならば、びびどるは続けるつもりで、色々と準備をしていました。

 事務的な話をすると、びびどる独立を考えていた際、グループ名が独立後もそのまま使えるのか、立ち上げたばかりのYouTubeチャンネルやXアカウントが持ち越せるのか、といった部分で悩んでいたので、当時のスタッフさんにサポートを依頼しました。

■「ファンの信頼を取り戻す」――事務所解散を経験したからこそ意識したいこと

--大所帯のグループとなると、運営にはかなりしっかりと取り組む必要があると思います。いざ自分が運営に関わることになって、大変だと思ったこと、落とし穴になりうると感じたことなど、発見はありましたか?

生稚くれあ:VTuberグループの運営は、とにかくやることがたくさんあるので大変ですね。特に、Vivid V解散が発表された11月は、6時間の大型配信企画「びびどる文化祭」を控えていたので、その準備や公式ホームページ作成、ファンクラブ作成などを急ピッチで進めていたので本当に大変でした。動きは早い方がいいと判断して、休止期間も設けずに独立を進めたので、なおさらでしたね。

 グッズもVivid V時代はあまり出せなかったので、独立後すぐに販売し、想定以上の注文をいただきました。所属していた時はグッズの発送ミスでファンの方々にもたくさん心配をかけてしまっていましたから、同じミスが起こらないよう、気をつけたいです。

--前事務所の負債まで引き継いでしまうのは結構厄介ですね。不祥事の多かった事務所出身者ならではの課題感と言えそうです。

生稚くれあ:そうですね。そういう意味では、ファンの皆さんにもトラウマがあると思うので、信頼を取り戻していかないといけない、と感じています。とはいえ、初めてのグループ運営なので、温かい目で見守ってくれると嬉しいですね。

--Vivid V時代の経験を踏まえて、びびどるではどんなことに気をつけているのか、反面教師的に「これはやらないように」と意識していることはありますか?

生稚くれあ:Vivid Vは、トラブルが起きた時の対応が、所属VTuberに対してもファンに対してもかなり遅かったので、いまはもしトラブルが起きたときは、なるべく早く対応しようと心がけています。真摯に対応していきたいと思っています。

庭咲ぴよ:びびどるでは細かく連絡を取り合ったり、何かあったらすぐ連絡するように心がけたいなと思いました。

生稚くれあ:あとは、透明性のある運営がしたいですね。当時は、事務所の方向性がよくわからないまま所属していたところがあるので、いまは意識して「今はこれをやってるよ」とメンバーやファンにこまめに伝えるように心がけています。

--生稚さんは、VTuber事務所の運営を経験したことで成長を感じたことはありますか?

生稚くれあ:視野を広げるいいきっかけになっていると思います。もともと自分は少し抜けている方なので、運営に取り組むにあたって自分自身の課題と向き合う時間も増えました。

 あと、人数が多ければ多いほど、運営に必要な作業が増えることにも気づきました。自分のVTuber活動もあるので、並行して取り組むことは課題になりそうです。

--逆に言えば、いきなり大人数で動かそうとしている事務所に勧誘された際は、少し警戒した方がいいのかもしれませんね。

生稚くれあ:そうですね。大人数の運営は相当な人員を抱えていないと厳しいと思います。

--一方の庭咲ぴよさんは、運営としてもかんばっている生稚くれあさんを、どのように見ていますか?

庭咲ぴよ:いろいろな作業を全部くれあちゃんがやってくれていて、本当に手が回らなそうで、毎日忙しそうだなと見ていて実感しています。いまふと気付いたのは、グッズ発送や会議などはメンバーでもお手伝いできるところなのかな、と。グループを束ねるのも大変だと思うので、メンタルケアも兼ねて、なにかお手伝いができたらなって思いました!

生稚くれあ:それは嬉しい! ありがとう!

--実際、企業運営では運営とVTuberとで一線を引かれがちなところもありそうですし、互いの事情をよく理解し合っている個人勢グループは気持ちよい協力体制が築きやすいところはメリットかもしれませんね。

生稚くれあ:事務所に入っていないからこそ、私がそこまでできるタイプでなくとも、みんな理解して受け入れてくれているので、頼れるところは頼れるようにしたいと思います。そのくらいフランクな関係で活動できるのはよいかなって思いますね。

■再スタート後、初のリアルイベントへ向けた意気込み

--激動のスタートを切ったびびどるの、今後の活動の展望を教えてください。

生稚くれあ:実は、2月15日にリアルイベント『びびどる Restart Valentine Party』を開催するんです。その他にも、いくつかご依頼いただいたお仕事が決まっていて、おかげさまで今のところは順調に活動が進められそうです。

--独立後にいきなりリアルイベントですか。どのような内容になるのでしょうか?

生稚くれあ:バレンタインがテーマのワンマンイベントです。会場は秋葉原エンタスをお借りして、びびどるらしく、バラエティ企画も盛り込んだイベントを目指しています。

--となると、今まさに準備中なのかなと思いますが、かなり大変でしょうか?

生稚くれあ:プログラムの内容や告知についてはVivid Vにいた時も自分たちで考えて進めていたのでそこまで変わらないのですが、ありがたいことに、このイベントは外部の制作会社さんに全面的にご協力いただいています。オリジナルグッズも制作いただけるので、とてもありがたいですね。

――直近で、お二人が取り組みたいことはなにかありますか?

生稚くれあ:まずは2月のリアルイベントの成功に力を注ぎたいです。前回のイベントは、十分に楽しめなかった人も多いはずなので、まずは前回がっかりさせてしまった分、挽回するところから始めたいです。

庭咲ぴよ:私も、くれあちゃんと同じ気持ちです。リアルイベントの成功で、ファンの信頼を取り戻して、なにより「すごく面白かった!」と思って帰ってもらえるようがんばりたいですね。

 あと、個人の活動はもちろんですけど、びびどるの知名度をもっと上げていきたいので、配信企画などでファンを増やしていきたいです。びびどるメンバーでの配信企画も、どんどんやっていきたいと思っています!

--最後に、今後びびどるとして、あるいはそれぞれお二人個人として、VTuber活動を通してどんなことを成し遂げていきたいですか?

庭咲ぴよ:びびどるとしては、みんなで3Dライブを実施したり、遊園地とのコラボを実現できたらなと思います! びびどるは個性豊かでわちゃわちゃしてるイメージがあるので、遊園地とは相性がぴったりだと思うんです。

 個人的な活動としては、私のキャラクター性を活かして、子どもが好きなコンテンツや幼稚園、あとは介護施設などとのコラボができたらいいなと思います! あと、今年中には私の3Dモデルが完成するので、いつか単独で3Dライブができたらなと考えています。

生稚くれあ:私は、びびどるとしても個人としても、メンバーの夢が叶えられる場所を作り上げていきたいですね。個人では難しくても、グループならば叶えられるよう、びびどるで様々な実績を積み上げていきたいです!

(文・取材=浅田カズラ)