公務員へのお歳暮やお年賀は「賄賂」になる? 感謝の気持ちが違法とされる境界線は
御歳暮や御年賀など贈り物をする機会が多い時期です。日頃お世話になっている公務員の方に、感謝の気持ちを込めてお歳暮やお年賀を贈ろうと考える人もいるかもしれません。
しかし、公務員への贈り物は「賄賂」になってしまうかもしれない、という不安になる方もいると思います。どのような場合に「賄賂」となってしまうのか、どこまでが許されるのかを整理してみました。
●賄賂の定義と「職務に関し」の意味
刑法上の「賄賂」(197条以下)とは、公務員の職務行為の対価として授受される一切の利益をいいます。金銭や物品だけにとどまらない非常に広い概念です。したがって、お歳暮やお年賀のような贈答品も当然これに該当します。
次に、「職務に関し」贈った場合でなければ、贈賄罪(刑法198条)は成立しません。
「職務に関し」は、公務員がその地位に伴い公務として取り扱うべき一切の職務を意味します。法令上の職務だけでなく、密接な関係を有する行為や抽象的な職務権限に属する行為も含まれるため、比較的広い範囲で適用されます。
たとえば、日頃の業務上の関わりに対する謝礼として贈答する場合には、この要件を満たす可能性があります。
●社交儀礼と賄賂の境界線
では、一般的な社交儀礼としてのお歳暮であれば問題ないのでしょうか。この点について、判例には2つの考え方の流れがあります。
1つは、社交上の儀礼と認められる程度の贈り物であっても、公務員の職務に関連して受け取られた以上、賄賂罪が成立するという立場です。こちらが主流と考えられています(大審院昭和4年[1929年]12月4日など)。
もう1つは、社交儀礼の範囲内であれば対価関係が否定され、賄賂罪は成立しないとする考え方です。
たとえば、公立中学校の新任教師に対する贈答用小切手5000円について、教育上の特段の配慮などを期待する趣旨があったと疑われるような事情もない場合には、慣行的な社交儀礼であり職務自体に対する対価的給付とは断定できないとして、賄賂罪の成立を否定したもの(最高裁昭和50年[1975年]4月24日)などがあります。
社交儀礼として対価関係が否定されるかどうかは、当事者の主観のほか、公務の職種、公務員の地位や身分、当事者の親しさの程度、財物の種類や価格、社会の一般的な慣行などを総合的に考慮して判断されます。
日本の法律において具体的な金額の目安は明示されていませんが、これらの事情を踏まえて慎重に判断する必要があります。
●率直にいっておすすめはできない
個人的には、そもそも公務員の方への贈り物は変な疑いを持たれかねないので、避けた方が良いのではないかと思います。
どうしても贈りたい、という方もいらっしゃると思いますが、贈答の必要性を慎重に検討し、職務との関連性が疑われかねない場合には避けるべきです。
仮に贈答する場合でも、高額の商品はできるだけ避けるべきです。
身も蓋もない回答になってしまいましたが、賄賂の罪では、贈った側(贈賄罪。3年以下の拘禁刑または250万円以下の罰金)だけでなく、受け取った側(※1)も逮捕されたり起訴されたりするリスクがあります。
つまり、贈られる側の公務員にもリスクがあるため、率直にいっておすすめはできません。
なお、国家公務員倫理規定では、職員が利害関係者から金品などを受け取ることは禁止されています(同規定3条1項1号)。
また、各地方公共団体では、お歳暮などの贈答品の贈与を明示的に禁じている場合があります(「京都市職員と関わりのある事業者の皆様へ」京都市行財政局コンプライアンス推進室、令和5年(2023年)9月発行、京都市印刷物第054552号など)。
刑法に触れずとも、禁止行為に触れる場合にはお世話になった公務員が懲戒されるなどの不利益も予想されます。
(※1)受け取った側に成立する「収賄罪」にはいろいろな種類がありますが(197条〜197条の4)、基本類型である単純収賄罪(197条1項前段)で5年以下の拘禁刑となります。
(参考文献)
・「刑事事実認定重要判決50選(上)〔第2版〕」(小林 充、植村 立郎/立花書房、2013年10月)
・「大コンメンタール刑法 第3版 第10巻」(大塚仁ら/青林書院、2021年3月)
監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)

