劇場版『チェンソーマン レゼ篇』©2025 MAPPA/チェンソーマンプロジェクト ©藤本タツキ/集英社

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 9月第3週の動員ランキングは、藤本タツキ原作、𠮷原達矢監督の劇場版『チェンソーマン レゼ篇』がオープニング3日間で動員80万7000人、興収12億5100万円をあげて初登場1位となった。その結果、『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』の連続1位記録はひとまず9週でストップ。もっとも、6月第4週に初めて1位を獲った『国宝』から始まって、これで14週連続で東宝配給(共同配給含む)作品が1位。また、『鬼滅』の9週と合わせて、これで10週連続で少年ジャンプ連載コミックのアニメーション作品が1位ということになった。

参考:『チェンソーマン』が解体したジャンプ的価値観 『レゼ編』が描くロマンスと破壊の二重奏

 そんな偏向著しい昨今の国内映画興行にあって、盤石な追い風の中で好スタートをきったようにも見える劇場版『チェンソーマン レゼ篇』だが、公開前は原作やTVアニメの熱心なファンの間で不安視する見方もあった。原作コミックの『チェンソーマン』の連載は2018年に『週刊少年ジャンプ』で始まった直後から大きな反響を呼んだが、約1年半のインターバルを経て『少年ジャンプ+』で連載中の第二部は、それまでの第一部のファンの間で賛否両論(ちなみに今回映画化されたレゼ篇は第一部の真ん中くらいに出てくるエピソード)。また、毎回新たなエンディング曲が発表されるなど話題性には事欠かなかったTVアニメも、エピソードを追うごとに、主に演出における原作からの改変について批判の声が飛び交うようになった。また、そのTVアニメが放送されたのは2022年10月期。そこから映画化まで3年近く期間が開いたことで、はたして今回の劇場版『チェンソーマン レゼ篇』が「待望の映画化」なのか「タイミングを逸した映画化」なのか、判断するのが難しい面があった。

 つまり、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』は同じように世界的な人気を誇るジャンプIP作品と言えども、映画化に際してもファンからの信頼を積み重ねてきた『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』とは状況がかなり異なる作品だったのだ。実際、ファミリー層も多い『鬼滅』の観客と比べて、『チェンソーマン』の観客は若年層が目立っている。これは一体何を意味するのだろうか?

 ここからは推論も込みだが、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』の支持のされ方は、ひと昔前までのティーン向けの恋愛映画と少なからず重なる部分があるのではないだろうか。恋愛映画というには戦闘シーンの比重が高すぎるしその描写も凄惨すぎると思う向きもあるかもしれないが、近年、ティーン層が支持するヒット作の主流がホラー映画やホラーテイストを持つ作品に移行しつつあることもふまえれば、広い意味での「ティーンムービー」のヒットの法則にも当てはまる。

 そう考えると、公開直前にリリースされてストリーミングサービスで再生数の新記録を叩き出した米津玄師のオープニング曲「IRIS OUT」に続いて、公開直後に米津玄師と宇多田ヒカルのデュエット曲「JANE DOE」が話題を集めているのも、目論見通りのシナジー効果を生み出している。大ヒット映画や大ヒットドラマの主題歌が必ずしもヒットするわけではないし、逆にタイアップ曲がヒットしても肝心な映画やドラマは一般には認知すらされていないこともある。劇場版『チェンソーマン レゼ篇』、そして「IRIS OUT」と「JANE DOE」のヒットは、近年稀なくらいすべてがうまくいっているケース。その背景には、友達や恋人と映画館に行き、ストリーミングサービスで音楽を聴く、若年世代のアクティブな消費活動があるのではないか。

(文=宇野維正)