東西それぞれ80年以上愛される老舗の「焼売」 大ぶりと小ぶり、どっちが好みか

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古今東西、美味しいグルメを追い続けてきた、東の食のジャーナリストのマッキー牧元(まきもと)さんと、西のグルメ王の門上武司(かどかみ・たけし)さんが互いに「オススメの一皿」を持ち寄って紹介します。食の達人たちが織りなす“おいしい往復書簡”をどうぞお楽しみください。今回のお題は、中国から伝わり、長い歴史をもつ「焼売」です。

焼いてないのに「焼売」

焼いていないのに焼くという字を当てる焼売。かつて中国で惣菜を作るという意味にこの字が使われていたのが理由とか、諸説は色々あるようで。

そんな焼売ですが、日本への伝わり方や、またそれを広めた人々、時代など長い歴史が育むさまざまなストーリーが詰まっているんだなと、改めて実感した今回。大きかったり小ぶりだったりサイズ感は真逆ですが、東西いずれも愛され系なのは、間違いなし!

創業以来伝承の味、姿、大きさに心をわし掴みにされる『新橋 新橋亭(しんきょうてい)』@新橋

【東の焼売】

「シンプルにいただきたいときはまずそのまま、次に酢だけか溶き辛子酢(もしくは黒酢)でいただきます。ご飯のお供にしたいときは、溶き辛子醤油がおすすめです。僕は2個頼み、両方楽しみます」(牧)

特製 大焼売330円(1個)

『新橋 新橋亭(しんきょうてい)』特製 大焼売330円(1個)

門上さん。薄皮が破れると、豚の香りが広がり、肉の旨みが現れる。僕はそんな焼売をこよなく愛しています。

サイズも大事で、『崎陽軒』のシウマイに代表される、ふた口大が理想だと、長年思っていました。

しかしその概念を覆されたのがこの店です。昭和21(1946)年、終戦後に創業した『新橋亭(しんきょうてい)』には、創業来の名物、「大焼売」があります。この大きさは、戦後でひもじい思いをしている人たちに一個でも、お腹が膨れる焼売を提供したいと考えたからだそうです。このあたり、以前ご紹介した『維新号』の肉饅と、同じ発想ですね。

注文すると、富士山型にそびえ立つ焼売が現れ、麓は小籠包のように膨らんでいる。これは豚肉から出たラードが貯まって、膨らんでいるのです。だからそれを逃さないように、普通の焼売より皮は厚い。

食べ方も普通の焼売のように横からかじりついてはいけません。山の頂上からかじりつく。すると肉の旨みが一気に口の中を満たします。次に麓の膨らみを食べる。たぷんと広がった皮が弾けると、熱熱のラードが舌に広がり、甘い香りが鼻に抜けていく。肉と脂、ふたつの魅力を楽しめる。これがまた他の焼売にはない、魅力なのですね。

門上さん、どうですか。大きな口を開けて焼売にかじりつくという、新たな幸せを体験しませんか?

『新橋 新橋亭(しんきょうてい)』

[店名]『新橋 新橋亭(しんきょうてい)』

[住所]東京都港区新橋2-4-2

[電話]03-3580-2211

[営業時間]11時〜22時(21時LO)

[休日]年末年始

[交通]JR山手線ほか新橋駅日比谷口から徒歩3分、都営三田線内幸町駅A1出口から徒歩2分

マッキー牧元

マッキー牧元

自腹タベアルキストであり、コラムニスト。『味の手帖』主幹。また、東京・虎ノ門ヒルズにある飲食店街〈虎ノ門横丁〉のプロデュースを務めるなど、ますます多彩に活躍。

長い歴史とともに多くのファンを持つ大阪自慢の味わい『華風料理 一芳亭 本店』@難波

【西の焼売】

「テーブルに届いたとき、湯気が上がっているほど熱々です。醤油と辛子の力が、生地の甘みをさらに引き出してくれます。長い歴史と経験が生み出した、これぞ銘品と呼ぶにふさわしい大阪自慢の味です」(門)

牧元さん、今回焼売で紹介する『一芳亭』は、屋号の前に華風料理と付くのです。これはご主人曰く、「最初は中華料理と名付けていたのですが、どうも馴染めず。日本人の口に合うようにアレンジし、和風というのがあるなら華風もありかと、こうしました」という柔軟な姿勢。僕はこのエピソードが大好きで、もう50年近く通っているのです。創業は昭和8(1993)年、90年以上の歴史を持つ店です。

しゅうまい350円(1人前)

『華風料理 一芳亭 本店』しゅうまい350円(1人前)

そこで必ず食べるのが焼売。まずビジュアルに惹かれます。焼売を薄い黄色の生地が包み込んでいます。これは薄焼き卵なんです。この黄色を見た瞬間に胃袋にスイッチが入ります。辛子と少しの醤油をつけて食べます。歯に抵抗がなく、焼売はスルスルと口の中でほどけるのです。豚のミンチ肉、エビ、玉ねぎのみじん切り、胡椒、醤油で下味をつけ、片栗粉でつなぎ蒸しあげたシンプルな料理。具材の分量が生み出すバランスの良さが、この唯一無二の味わいを作り上げているのです。

90年以上守り続けてきた味を求めて訪れる人、つまりファンの多さが、この焼売の実力を物語っています。定期的に食べたくなる焼売が大阪にあることを僕は誇りに思っています。日常の中にある幸せとは、こんな焼売のことだと、しみじみ感じています。

牧元さん、ぜひ、僕と一緒に日常の幸せを体感してもらえませんか。

『華風料理 一芳亭 本店』

[店名]『華風料理 一芳亭 本店』

[住所]大阪府大阪市浪速区難波中2-6-22

[電話]06-6641-8381

[営業時間]11時半〜20時

[休日]日・祝

[交通]南海電鉄難波駅から徒歩1分、大阪市営地下鉄御堂筋線なんば駅から徒歩5分

門上武司

門上武司

小誌でもおなじみの、あらゆる食情報に精通している西のグルメ王。食関連の執筆・編集を中心に、各メディアに露出多数。関西の食雑誌『あまから手帖』の編集顧問も務める。

※掲載情報は取材時のものになります。内容に変更が生じる場合があります。詳細は店舗にお問い合わせください。

文/マッキー牧元(東)、門上武司(西)撮影/鵜澤昭彦(東)、松浦稔(西)

※月刊情報誌『おとなの週末』2025年3月号発売時点の情報です。

※写真や情報は当時の内容ですので、最新の情報とは異なる可能性があります。必ず事前にご確認の上ご利用ください。

【比較画像】東西でそれぞれ愛される「焼売」の姿 むっちり巨大な東とコロッと口でほどける西(7枚)