「声は福山雅治」「経歴は完璧」なのに30社落ち…40代ハイスペ会社員が転職面接で使っていた"よさげなNG口癖"

■非の打ちどころがないキャリアなのに…
「ご経歴も申し分ないですね」「完璧です」と評価されるのに、なぜか一社も内定が出ない――。意外に思われるかもしれませんが、転職市場では珍しいことではありません。
「どうしても転職が決まらないんです」
アナウンススクールの運営と並行して、転職コンサルタントをしている筆者の元に相談に訪れたのは、48歳の男性Aさんでした。彼は大手メーカーで研究開発や事業戦略に携わり、現在はコンサルタントとして企業の戦略支援に取り組む実力者。誰が見ても“即戦力”のキャリアです。履歴書も職務経歴書も非の打ちどころがなく、面接の受け答えも整然としています。
さらに、見た目の印象も端正でスマート。スーツ姿もよく似合う。声は俳優の福山雅治を思わせる落ち着いた低音ボイス。第一印象から「デキる人」という雰囲気を漂わせています。まさに非の打ち所がない人材に映ります。
にもかかわらず――。
「先日の最終面接でも、『完璧ですね』『話がまとまっていますね』などと言われたんですが……結局、落ちてしまいました」とのこと。面接官からの評価は高いのに、なぜか結果は不採用。30社近く落ち続けていたのです。彼の困惑と落胆は深まるばかりでした。
なぜ内定がもらえないのか。実は、彼が“全社落ち”してまっていた理由は、「面接中の口癖」に隠されていました。
■模擬面接で見えてきた“違和感”
転職面接コンサルでは、私が面接官役となり、本番さながらの一問一答を1回15分の面接を想定して行います。短時間の中で質問を重ねる中で、回答の癖や言葉の使い方を丁寧に確認していきます。
実際にやってみると、確かに受け答えは非の打ちどころがありません。
「これまでの成果は?」「リーダーとして大事にしてきたことは?」など、どんな質問にも、Aさんは整然とロジカルに答えることができました。思わず「完璧ですね」と口にしたくなるほどの滑らかさです。
しかし、15分の模擬面接を終えてみて、彼が内定を貰えない理由が分かったのです。
「これまで印象に残ったプロジェクトは何ですか?」
「ありがとうございます。印象に残ったプロジェクトは……」

「海外への出張もかなり行かれているようですが、どのような国に行きましたか?」
「ありがとうございます。アメリカに、カナダに……」
そう――彼はほぼすべての質問への応答で、機械的にこう答えていたのです。
「ありがとうございます」
私は尋ねました。
「Aさん、すべての答えるときに必ず“ありがとうございます”と言ってますよね。それはご自身で気づいていますか?」
「はい、意識的に言っています」
「それはなぜですか?」
「丁寧な印象に思われたいからです。おかしいでしょうか?」
■「ありがとうございます」の多用はNG
「ありがとうございます」と伝えることは、一見すると礼儀正しく、誠実に思えます。しかし、質問のたびに条件反射のように繰り返すと、面接官にはこう映ります。
「きれいすぎて人間味がない」
「用意された答えを並べているだけ」
つまり、誠実に見えるはずの言葉が、逆に“壁”を作っていたのです。私はさらに問いかけました。
「もしかしたら、“ありがとうございます”と言いながら次の言葉を考えていませんか?」
「……はい、そうですね。すぐに話し出さないと印象が悪いと思いまして。だから『ありがとうございます』でワンクッション置いています」
そう、彼にとって「ありがとうございます」は沈黙を埋めるための“安心材料”にもなっていたのです。
しかし本来なら、多少の間を置いてから話す方が、自然で人間らしいのです。ラリーのように即答すると、かえって「作っている」「本音が見えない」と受け取られてしまいます。
■「オウム返し」は意外と効果的
では、どうすればよいのか。
面接での受け答えにおいて、つい「ありがとうございます」と言ってしまう方におすすめなのが、Yes/承認テクニックとオウム返しテクニックです。
まず、Yes/承認テクニックですが、これは、質問を受けたときに「はい」「承知しました」と短く承認してから答えに入る方法です。たとえば「志望動機を教えてください」と問われたら、「はい、私は……」と答える。ほんの一言を添えるだけで、質問をしっかり受け止めている印象を与えられますし、会話の流れも自然です。

次に、オウム返しテクニック。これは、質問の一部を言い換えて答え始める方法です。たとえば「あなたの強みは?」と聞かれたら、「私の強みは……」と返す。質問をそのまま引き取ってから話し出すことで、違和感のない自然なスタートが切れます。
この二つを身につけるだけで、「ありがとうございます」を機械的に繰り返す癖は解消できます。小さな一言の工夫で、会話のテンポは大きく変わり、面接全体の印象もぐっと良くなります。
【すぐ使える「NG→OK」言い換え例】
NG:「ありがとうございます。志望動機は……」
OK:「はい。私が志望した理由は、○○事業に共感したからです」
NG:「ありがとうございます。私の強みは……」
OK:「私の強みは、初対面でもすぐに打ち解けられることです」
ワンクッションを「ありがとう」ではなく、短い承認+具体に置き換えるのがコツです。すると、自然な会話の流れが生まれ、面接官に「誠実に答えている」という印象が伝わります。
■ひと言を添えるだけで“物語”になる
しかし、Yes/承認やオウム返しといった工夫は、あくまで“入り口”にすぎません。
面接で本当に大切なのは、自分の経験と思いを語ることです。それにより、相手の心を動かす「共感」が生まれます。面接官は履歴書や経歴の優劣だけで候補者を判断しているのではありません。
「この人と一緒に働きたいか」「この人なら困難を共に乗り越えられるか」を見ています。
だからこそ、ただ整った答えを並べるのではなく、自分だけのストーリーと、そのときに感じた思いを語ることが欠かせないのです。
たとえば、
「その視点は自分では気づけなかったです」
「実はそこが前職で一番苦労したところなんです」
こうした一言に体験や感情を添えるだけで、答えは単なる情報から“共感を呼ぶ物語”へと変わります。
「数字を伸ばした」という成果を語るときも、なぜ取り組んだのか、どんな壁に直面し、どう気持ちを切り替えたのかを一言加えるだけで、聞き手に伝わる温度はまったく違ってきます。
共感される話し方とは、「事実+自分の思い」を組み合わせることなのです。小さな失敗や迷いを交えて語っても構いません。むしろそのほうが、相手は人間らしさを感じ、「この人と一緒に働きたい」と思うのです。
■共感を得られなければ完璧でも意味がない
冒頭の男性Aさんも、「ありがとうございます」をやめ、Yes/承認とオウム返しを意識しながら、自分の経験やそこに込めた思いを交えて面接で話すようにしました。すると面接官の表情が変わり、会話が弾み、外資系コンサルや銀行などから一気に3社の内定を得ることができました。
面接で必要なのは、完璧な答えではありません。
経歴やスキルを並べるだけでなく、「どんな経験をし、何を感じ、どう行動したのか」を語ること。そこにこそ、人を惹きつける力があります。
少し勇気を出して、自分の言葉で思いを添えるだけで、面接官の心は動きます。そして、その小さな変化が、内定への扉を開く大きな一歩になるのです。
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松下 公子(まつした・きみこ)
元アナウンサー、アナウンススクール代表
STORYアナウンススクール代表/STORY代表。1973年茨城県鹿嶋市生まれ。25歳フリーターでアナウンサーに内定。テレビラジオ4局のステップアップを果たす。その後、共感で選ばれるプレゼン手法「共感ストーリー」としてメソッド化。STORYアナウンススクールでは、志望動機、自己PRの作成を指導。面接における伝え方の指導も行い、NHKキャスターや地方民放局アナウンサーの内定に導いている。現在は、一般企業の転職など、選ばれる人になるサポートや講演活動を行っている。著書に『「たった1人」に選ばれる話し方』、『転職は話し方が9割』(ともにstandards)がある。
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(元アナウンサー、アナウンススクール代表 松下 公子)
