「鉄人になってもらいたい」現役プロレスラー諏訪魔がJ1名門クラブで輝く息子に望むアスリートとしての生き方は?「サッカーが上手いだけじゃダメ」
横浜F・マリノスアカデミー出身の幸成は、今年3月に筑波大蹴球部を退部し、クラブとプロ契約。186センチ・85キロ。父親譲りのがっしりとした体格、当たり負けしないフィジカルを武器に、CBとして先発出場を続け、堂々のパフォーマンスを披露している。
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小学生時代にサッカーを始めた幸成は、5年生で横浜F・マリノスの小学生を対象とした選抜チームであるスペシャルクラスにセレクションで入団。そこからジュニアユース、ユースと階段を順調に駆け上がっていった。ステップアップしていく姿に、あまりサッカーに詳しくない父も驚いたという。
「小学校5年生でセクションを親戚と一緒に受けた。そうしたらなんか受かっちゃったんだよ、息子だけ(笑)。中学は分からないけど、ユースは結構大変だというのは分かった。周りにも入れない子がいたから。『ユースって、お前すげえな』って。何となくすごさがやっと分かり始めましたのがこの頃でした」
横浜F・マリノスのアカデミー時代には、幸成の父がプロレスラーとあって、サッカーとプロレスの競技の垣根を越えたクラブとの交流もあった。
「コーチにも恵まれていたと思う。俺もコーチと話しさせてもらいましたから。スペシャルクラス、ジュニアユースの時に。俺はレスリングしか知らないから、アスリートとして何が必要なのか、サッカーには何が必要なのかなとかを訊かせてもらった。
そのなかでジュニアユースの子たちかな。全日本プロレスの道場に練習に来て、俺がレスリングの指導をしたり、そういう交流もありました。サッカーと共通する部分があって、レスリングは体幹が重要で、柔軟性や適応能力、瞬時の状況判断とか、そういうのってサッカーも同じだと思う。コーチにもそういう意図があったんでしょうね」
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様々なサポートを受けて成長していく過程のなかで、父が気にかけていたのは、幸成の涙もろさだった。「これは俺が一番、モヤモヤして衝撃的なことだったんだけど」と切り出し、こんなエピソードを明かしてくれた。
「F・マリノスで小学生の時、山梨の大会で(幸成にとって)初めての試合で、PK戦があった。嫁さんと観に行っていたんだけど、PK戦が5−5までいってサドンデスになったら、俺の息子の番になって、蹴ったら止められて負けたんだよ。山梨まで行って、あれはもう忘れられない。そしたら大泣き、人生が終わったかのように。お前泣くなって思うんだけど、初めての試合で、責任を感じたんだろうね。
レスリングの神奈川県の大会で負けた時もべーべー泣いていた。そしたらこないだの日産スタジアムでのホームゲームでも、みんなの前で泣いていたんだよ。もう、また見せられたと思って…感情をもろに出すからさ、嬉しい時に出せよって思うんだけどね」
サッカーもプロレスも、プロになればファンからどう見られるかが重要。だからこそ幸成には涙などではなく、プレー以外の場面で自分をアピールするパフォーマンスを見せてほしいと常々、話しているという。
「プロなんだけど、エンターテイナーでいなければいけないのがプロレスラーではあるとは思うんですけど、サッカーでも技術だけじゃなくて、人間性が伝わるようなことはやって欲しいと言ってますね。気持ちを絶対見せなきゃ駄目だよって。マスコミさんには特にそうだからねって。
個性を見せてほしい。プロレスは特に、キャラクタービジネスなので。『ただサッカーが上手いだけじゃダメだぞプロは』と言っていますね」
幸成はこれまで世代別代表も経験。U-19日本代表ではスペイン遠征、U-20日本代表ではU-20アジアカップに出場した。父は海外での経験も重要だと強調する。
「海外はね、どんどん行けって言ってるんだよ。どれだけ海外に行くかは大切だと思うんですよね。
僕もレスリングをやっていた時、海外にいっぱい行かせてもらったんですよ。遠征もそうだし、合宿もそうだし、1人でカナダへずっと行ったりとか。結構いっぱいアメリカのほうとかも行かしてもらって、すごく視野が広がったイメージがあるんです。
だから、『お前も海外はいっぱい行けよ』とは言ってるんだけど、お前が行ってるところは良い国ばっかだなって。良い国ばっかで、飯とかすげえ良いもの食ってんじゃねかよって(笑)。本当はもっと庶民の生活の部分を見てほしいけど、団体行動だからそうはいかないんだろうね」
2023年に行なわれたU-20アジアカップでは、日本代表のDF高井幸大とともに戦った。幸成と同年代で大きな注目を集める高井について話が及ぶと、同じアスリートとして“ライバル”の重要性も語ってくれた。
「フロンターレの子だよね。A代表までいくんだからすごいよね。でもライバルがいるのは良いことだと思う。俺もずっと現役のときにライバルがいた。こいつに勝ちたいと思うライバル。そういうやつを1人見つけておくのは、ものすごく大事なことで、そいつに勝つことだけを考える。一方的なライバル視っていうのは大事だと思います」
まだ幸成は、A代表に招集されるまでには至っていない。ただ大きな目標をもつのは大切。父は「怪我しない良い選手になってもらいたい。鉄人と言われるぐらいの選手になってもらいたいなって。そして、少しでも長くやってもらって、A代表を目標に頑張ってもらいたいですね」と願う。
続けて、「最後まで、勝つまでやり続ける。これは俺の信念。やり続ける、そしたら絶対勝つから。いろいろ工夫して、いろいろ努力してやり続ければ、間違いなくいける」とさらなる高みを目ざし続ける息子にエールを送った。
取材・構成●手塚集斗(サッカーダイジェストWeb編集部)
