『#真相をお話しします』 ©2025 映画「#真相をお話しします」製作委員会

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 波乱に満ち溢れた原作小説を実写映画化するには、このアプローチしかなかったのではないか。そう思ってしまうほど、映画『#真相をお話しします』は複数の独立した物語を一本の映画に仕立て上げるための仕掛けが随所に施されていた。

参考:菊池風磨、いじられキャラから“実力派俳優”に 『#真相をお話しします』までの変化を辿る

 国民的ポップロックバンド・Mrs. GREEN APPLEの大森元貴と、新メンバーオーディションが大きな反響を呼んだアイドルグループ・timeleszの菊池風磨がW主演を務めることでも話題になった本作は、2023年の本屋大賞にもノミネートされた結城真一郎の同名小説が原作となっている。

 「マッチングアプリ」や「リモート飲み会」など、ここ数年で認知を得たトレンドを取り入れながら、何気ない違和感に潜む驚くべき“真相”が隠された5つの短編。それぞれの物語は個々で完結していて、エピソードごとに繋がりはない。しかし、本作では4つの短編を一挙に集結させており、そんな突飛もないまとめ方を可能にしたのが、映画のオリジナル要素でもある「バーチャル生配信チャンネル【#真相をお話しします】」だった。

 このチャンネルでは、ランダムに選択された視聴者が匿名のスピーカーとなって、まだ誰にも知られていないゴシップネタを暴露することで、多額の投げ銭を手に入れることができる。【#真相をお話しします】チャンネルの管理人を演じる岡山天音のユーモラスな芝居で観客を惹きつける前提ではあったものの、舞台装置として「生配信チャンネル」を軸に添えたことで、それぞれのエピソードの接続は明らかにスムーズだった。

 家庭教師の男が訪問することになった中学受験を目指す家族の違和感を描いた「惨者面談」、マッチングアプリを駆使して何人もの女性と密会する「ヤリモク」と、映像化によってより映える2つのエピソードを導入としてピックアップすることで、単調になりがちな短編集的な構成を飽きさせずに視聴者へと提示する。

 さらに、当事者がゴシップネタを提供する「生配信チャンネル」の形式は驚愕のラストに向けて、視聴者側の「過熱する晒し行為」を膨張させていくためには必要不可欠。ダブル主演の片割れとなるキャラクターに「三角奸計」の主人公である桐山をチョイスしたことも含めて、全体を通したストーリー構成の巧妙さが際立っていた。

 そして、登場人物も場所もバラバラな物語を繋げたのが、多種多様なキャストたちだ。スポット出演ながら猟奇的な芝居を見せつけた伊藤英明や伊藤健太郎の怪演も見事だったが、もっとも驚きだったのが主演を務めた大森元貴の表情づくりの巧みさ。前述したキャストたちが扮した役柄と同様に、どこか頭のネジが外れたキャラクターを演じた大森は、彼の根底にある熱を帯びた人間臭さがヒリヒリと伝わる芝居を披露する。映画初出演作での主演という大役にもかかわらず、菊池風磨が演じる桐山の抜けに映り込む表情もバリエーション豊かで、人懐っこさとミステリアスな雰囲気を兼ね備える謎めいた男・鈴木を鮮烈に演じきった。大森は2025年度前期の連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合)への出演も決定しており、2025年は俳優としての顔を広げる飛躍の年になることは間違いないだろう。

 大森と同じく主演を務めた菊池は、旧友たちとの「リモート飲み会」で起きた衝撃的な過去を隠し持つ桐山の変化を器用に演じ分ける姿が印象的だった。大森が要所のカットで映し出される表情の豊かさで鈴木を体現したならば、菊池は縦軸である桐山の人生をグラデーションで表現する。リアルタイムで自身の状況が刻々と変化する難しい立ち位置ながら、時系列に沿った桐山の焦りと葛藤がそれぞれのシーンから滲み出る芝居を見せてくれた。

 大森と菊池はそれぞれ異なるグループでありながらも、ステージ上ではフロントマンとして表舞台に立っている。アーティストや俳優、タレントなど、多岐にわたるフィールドで活躍するふたりの“隠れた一面”を堪能できるのは、本作の見どころのひとつと言えるだろう。

 さらに、物語は終盤にかけて思いもよらない展開を見せる。私生活の切り売りやインターネット社会を象徴する“匿名性”の功罪など、何もかもをエンタメに昇華する現代社会への警鐘ともとれるテーマを繰り出しながら、ラストまで見終えた観客に「当事者」としての2択を突きつける。

 豪華俳優陣の芝居を観るために劇場を訪れた観客にとっては、思わず狼狽してしまうほど重い一撃を喰らう作品となっているが、まずは生配信チャンネルのいち視聴者としてフラットに映像を眺めてみてほしい。きっと「当事者」としての自分を、否でも応でも実感することになるはずだ。(文=ばやし)