『ジュラシック・ワールド』©2015 Universal Studios and Amblin Entertainment, LLC.  All Rights Reserved.

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 終わりを迎えたと思われた、『ジュラシック・ワールド』の物語が再び動き出す。2025年8月8日に公開を控えた最新作『ジュラシック・ワールド/復活の大地』に向けて、シリーズを復習する人も少なくないだろう。シリーズといえば、本作はあのスティーヴン・スピルバーグの生み出した歴史的傑作『ジュラシック・パーク』の直接的な続編でもあるので、パーク・シリーズの前提ありきで物語は作られている。しかし、長年のシリーズファンとしては正直なところ、もう『ジュラシック・パーク』ではなく『ジュラシック・ワールド』が主流になってきているような気もしている。それはそれで、少し寂しいものだ。

 欲をいえば、第1作から全作を観てほしい気持ちもありつつ、もし『ジュラシック・ワールド』から本作の世界観に足を踏み入れるのであれば、“ミリ知ら”でもシリーズが楽しめる前提について触れていこう。

・“企業映画”として振り返る『ジュラシック・パーク』シリーズ

 全ての始まりである『ジュラシック・パーク』は1993年に公開され、当時のCGとアニマトロニクス技術の最先端を定義するような作品として話題となった。2018年に米国議会図書館にて「文化的、歴史的、または美学的に重要」な映画と判断され、米国国立フィルム登録簿に保存された。ただの“恐竜映画”ではなく、映画史に残る歴としたマスターピースなのだ。

 物語といえば、ジョン・ハモンド(リチャード・アッテンボロー)という1人の裕福な資産家の野望――、遺伝子操作によって現代に甦らせた恐竜を柵で囲ったテーマパークを作ろうとしていた。とは言っても、映画の冒頭ではすでにパークはほぼ建設済みで、一般公開に向けて意見を聞くために専門家を招致するところから始まっていく。パーク視察者たちが実際に見学したところ、パークの“数少ない”エンジニアスタッフで、労働環境および給与に対して不満を抱えていたデニス・ネドリー(ウェイン・ナイト)が競合会社から持ちかけられたスパイ・妨害行為を行った結果パークのシステムがダウン。凶暴なT-REXやヴェロキラプトル、ディロフォサウルスなどの肉食恐竜が放たれて視察者を襲う。結果死者3名、負傷者数名の事故を引き起こしてしまった。

 こうして幕を開けた『ジュラシック・パーク』シリーズ、あまり馴染みのない方からすると「ただ恐竜が出てきて大暴れする映画」に思うかもしれないが、実のところ“企業の不祥事映画”でもあるのだ。1997年に公開された続編の『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』は、パークの事故から4年後が舞台。「島で見たことは口外しない」という秘密保持契約を結ばされた視察者一向が島に向かうところから物語は始まる。そして、それを破った数学者イアン・マルコム(ジェフ・ゴールドブラム)が本作の主人公だ。しかし、彼は世間から嘘つき呼ばわりされて大学からもクビになる始末。一方、パーク建設地の島はあくまで観光用で、実は恐竜を飼育するための島が隣接していることが明かされる。そうとも知らずに訪れた裕福な一家の子供が小型肉食恐竜に襲われ、その責任を負う形でハモンドは退陣させられ、彼の甥がインジェン社の全権を引き継いだ。

 この甥はハモンド以上の悪徳ビジネスマンで、恐竜で金儲けをする気満々。死者も出したのに、今度は「ジュラシック・パーク」を離島どころかアメリカサンディエゴに建設しようとする。猛獣ハンターなどその道のプロを引き連れた舞台で島に向かう彼らに対し、ハモンドはその野望を阻止すべく表向きには“調査隊”としてマルコムをはじめとするチームを派遣。何も知らないマルコムは結局また大変なことに巻き込まれ、最終的にはT-REXがサンディエゴに上陸。ゴジラ顔負けの暴れぶりを見せて街を破壊するも、マルコムたちの活躍によって無事島に送り返された。なお、この一件で世間に「本当に恐竜が再生された」ことが明るみとなり、飼育島はハモンドの尽力によって恐竜の自然管理保護区域に指定された。

 2001年に公開されたシリーズ第3作『ジュラシック・パークIII』は、前作から4年後が舞台。前作に登場した人間立ち入り禁止の恐竜自然保護区域付近で遊んでいた男と青年が行方不明になってしまう。そんな彼らを探すため、一般人が「ジュラシック・パーク」でマルコムとパークを視察した古生物学者のアラン・グラント博士(サム・ニール)を騙し、島に乗り込む騒動を描く。特にインジェン社が絡むストーリーではないが、これまでの物語を踏まえると、歴史的大ヒットしたこの恐竜映画シリーズが描くものが「この世の中ロクな人間が本当にいないよね」ということなのが面白い。マイケル・クライトンの書いた原作小説も、スリルやサスペンスあふれる描写が豊富ではありつつ根幹には「科学の力を使って神の真似事をした人間の愚かさ」を作品のテーマとしているので、映画シリーズもその精神を受け継いでいるのだ。

 さて、本作『ジュラシック・ワールド』の物語は、こんなに不祥事ばかりでどうしようもないパークの事故から22年後から始まる。悪名高きインジェン社はマスラニ・グローバル社に買収され、マスラニ社長に所有される。彼は亡きハモンドの大ファンで、彼が夢見た恐竜のテーマパークを実現させ(!)なんと世界中から毎日2万人の旅行者が訪れる観光施設として「ジュラシック・ワールド」の建設に成功してしまったのだ。22年前のパークに比べ、何が改善されたから建設実現に至ったのか、企業の仕掛けを見るのも楽しいし、こういったテーマパークを作るにあたって何が重要なのか、そしてやはり何が原因でその完璧なはずだったパークビジネスを崩壊してしまったのか。『ジュラシック・ワールド』にはそういうことも描かれているのだ。

・恐竜はすべてメス? 再生技術の仕組みは?

 これは『ジュラシック・パーク』で触れられている前提なのだが、実は本シリーズに登場する恐竜のほとんどは基本的に“メス”なのである。そのため、原語版では恐竜に対する代名詞が「she」として発言されている。ではなぜ“メス”なのか。

 『ジュラシック・パーク』では恐竜の血液を吸った後、琥珀の中に閉じ込められた蚊からDNAを採取し、遺伝学者がスーパーコンピューターでDNAの塩基配列を解析、欠落部分はカエルのDNAで埋めることで配列を完成させ、未受精のダチョウの卵にそのDNAを注入して恐竜を生み出していると説明されている。そして科学者は頭数の管理のため、染色体を操作。脊椎動物の胚は遺伝的には全てメスで、ホルモンなどの刺激がない限りオスにならないので、意図的にメスの恐竜だけを生み出し、繁殖の可能性を消していた。

 しかし、それでもどうして繁殖することができたのか。それは欠落している恐竜の遺伝子にカエルの遺伝子が混ざっていることが原因だった。カエルの中には、例えば西アフリカのカエルのようにメスだけの環境の中ではその一部がオスに変わることがあると本編では説明されている。実際、性別が遺伝的性質と結びつきの強い哺乳類に対し、爬虫類や魚類は環境によって性別が左右される。両生類はその中間に位置していると言われ、遺伝で決まることも環境の影響を受けて変わることもあるのだとか。実際、特定の汚染物質によってオスのカエルがメス化する現象も確認されているのだ(※)。

 それでも、パークの恐竜は施設が崩壊すれば再び絶滅するはずだった。科学者たちは遺伝子操作の際にあらかじめ体内でリジン(必須アミノ酸のひとつ)を作れないようにしたのだ。つまり、パーク内で独自に与えられるアミノ酸を摂取することで恐竜は生き続けることができるが、科学者がアミノ酸を与えない限り、恐竜は徐々にリジン欠乏による昏睡状態に陥り、最終的に死亡する。これは恐竜が脱走した時のための安全装置として科学者が遺伝子に取り込んだシステムであり、それに伴ってパーク崩壊後は恐竜も自然淘汰されるはずだった。

 しかし、『ロスト・ワールド/ジュラシック・パーク』ではパーク事故から4年後、飼育島で恐竜が繁殖している上に自然の中で生き延び続けていることが判明。この原因を調査するために、第2作目ではマルコムの彼女であり古生物学社のサラ・ハーディングが島に向かう。そしてリジンの豊富な豆類が島に生い茂っていて、それを食べた植物恐竜の体内でアミノ酸が形成され、さらにその植物恐竜を捕食する肉食恐竜もアミノ酸の摂取に成功したことが明かされた。

 さて、そんないろいろがあっての『ジュラシック・ワールド』だが、やはり施設側が意図的に生み出す恐竜は基本的にメスである。つまり本作に登場するかっこいい恐竜たちはみんなメス、ということで彼女たちの活躍に注目してほしい。

・注目したい恐竜は?

 どの恐竜にも注目していただきたいものの、特に目を向けるべきはやはりT-REX(ティラノサウルス・レックス)とヴェロキラプトル4姉妹、モササウルス、そして本作の“ヴィラン”でもあるインドミナス・レックスだろう。

 『ジュラシック・ワールド』に登場するT-REXは実は『ジュラシック・パーク』に登場したものと同じ個体で、その証に1作目のクライマックスでヴェロキラプトルにつけられた傷が跡になって残っているのだ。まさに、シリーズの女王の立ち位置にいる存在である。彼女の古傷の由来が気になる方は、ぜひ過去作を観てほしい。

 そしてヴェロキラプトル4姉妹。彼女たちは遺伝子操作と戦闘訓練によってかなり能力が高いラプトルとして、軍人のオーウェン・グレイディ(クリス・プラット)に調教されている。とはいえ、ラプトルは元々知能が高く、隙を見て飼育員を捕食してしまおうといつも目をギラつかせているのが良い。姉妹の中でも特に長女の「ブルー」と呼ばれる個体は、オーウェンの相棒的な存在として大活躍する。なんといっても『ジュラシック・パーク』3部作ではティラノサウルス以上に人間を恐怖に陥れる“ヴィラン”的な存在として描かれてきただけに、『ジュラシック・ワールド』でそんな彼女たちが人間の味方として奮闘する姿が泣けて、泣けて仕方ない。その“エモさ”をより感じたい方は、ぜひパーク・シリーズを観てラプトルに沼落ちしてほしい。

 また、圧倒的に本作で人気なのがモササウルスだ。実はモササウルスは恐竜ではなく、肉食海棲爬虫類である。これまでのシリーズで登場した恐竜以外の古代爬虫類は翼竜であるプテラノドンだけで、モササウルスはシリーズ初の海棲爬虫類として大きな存在感を発揮する。

 最後に、本作の目玉でもあるインドミナス・レックスを紹介しておこう。彼女は本シリーズに初めて登場する“架空の”恐竜で、ティラノサウルスDNAをベースにヴェロキラプトルやカルノタウルス、ギガノトサウルス、テリジノサウルスなど様々な恐竜や生物のDNAを加えて遺伝子組み換えにより誕生した大型肉食キメラ恐竜なのだ。混じり混じった遺伝子の中にはコウイカのDNAも含まれており、それによってカモフラージュ能力があったり、アマガエルのDNAによって赤外線放射抑制能力を持っていたりと、とんでもないチートキャラだ。しかも劇中で暴れるこの個体は、姉妹として孵化したのに共食いで妹を食べた姉であることがわかっており、そういったところからも残虐性や凶暴性が伺える。この極悪恐竜に対し、かつて『ジュラシック・パーク』で死闘を繰り広げたティラノサウルスとラプトルという因縁のタッグが共闘するクライマックスシーンは圧巻そのもの!

 登場する恐竜や施設の歴史など、過去シリーズとなる『ジュラシック・パーク』トリロジーを深ぼれば深ぼるほど深みや面白みが増す『ジュラシック・ワールド』。ぜひ、本作から世界で最も人気で有名な恐竜映画シリーズの魅力に触れる冒険に、足を踏み入れてほしい。

【参照】https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/19/032500178/

(文=アナイス)