慢性的な疲労や気分の落ちこみの原因は脳の不調にあった…脳にエネルギーをくれるすごく大事な5つの神経伝達物質とは?

人間の体が必要とするエネルギーを作り出すために、大量の神経伝達物質が必要なことをご存知だろうか。特に重要な物質は5つある。『回復人 体中の細胞が疲れにつよくなる』(サンマーク出版)より一部抜粋、再構成してお届けする。

「気分」で認知能力が変わる

幸せなときや悲しいとき、自分のなかにエネルギーが満ちているのを感じたことがあるだろうか? また、頭がさえて集中できているときと、頭にもやがかかったようで集中できないときの違いを考えたことはあるだろうか。

自分を取り巻く環境に対する認識や、自分の精神状態は、日常のエネルギーレベルを決めるのに重要な役割を果たす。脳の健康に不調が生じると、周囲や自身に対する認識だけでなく、自分の体を思うように動かしたいという感情や欲望にも悪影響が出る。

気分はエネルギーレベルの決定にとてつもなく大きな役割を果たしている。脳が健康でないと、不安やうつといった気分障害が起こりやすく、さらにそれが私たちの精神面や生活に重大な損害を与える可能性がある。

重度の疲労はうつを悪化させ、不安を高めるといわれており、さらに疲労はうつの経済的負担を45%増やしている。疲労を軽減することがうつの治療に効果的なことも、うつと疲労の関連を示す証拠だといえる。

体が必要とするエネルギーをつくり出すためには、脳内のニューロンが「さあ目を覚まして、気を張って、幸せを感じるためにエネルギーがたっぷり必要だよ!」という信号を出さなければならない。

そして、その信号を伝えるためには、大量の神経伝達物質が必要になる。

だが神経伝達物質が足りなかったり、信号をきちんと受け取れなかったりすると、頭がぼんやりしたり、記憶容量いっぱいまで記憶を保てなかったり、感情的に不安定になったり、エネルギーが湧いてこなかったり、という状態に陥る。

実際、そんな状態が日常化してしまっている人たちも多い。そういう人たちは、どうして自分の集中力が続かないのか、どうして記憶力が衰えているのか、どうして不安やうつにとらわれているのか、どうしてつねに疲れているのか、考えたこともないかもしれない。

体内にはさまざまな神経伝達物質があるが、エネルギーレベルを上げるのにとくに重要なのは次の5つだ。

・アセチルコリン

・ドーパミン

・セロトニン

・オレキシン

・GABA(γ(ガンマ)-アミノ酪酸)

脳伝達に特に大事な「5物質」

① アセチルコリン

疲労に関連する働きの面でいうと、アセチルコリンは脳が体に「動け」と命じるときに使う神経伝達物質だ。

研究によると、慢性疲労にはこのアセチルコリンの信号伝達の乱れがかかわっていて、とくにアセチルコリン作動系が過活動状態に陥ると、体が信号に対して適切に反応できなくなるため疲労が生じると判明している。

アセチルコリンは体内に広く存在する神経伝達物質の1つで、心筋や血管、骨格筋の筋収縮を制御すると同時に、学習能力と記憶能力を制御するのにも役立っている。

アセチルコリンの出す信号に乱れが生じると、認知機能や心血管関連の健康、身体機能など、広範囲に影響が及ぶ。

たとえば、ドラッグの使用でアセチルコリンの信号伝達が阻害された若者は、認知機能の衰えた老人と同じような長期記憶と作業記憶の低下を示すことがある。

さらに、アセチルコリンの信号伝達が減少すると、脳は酸化ストレスや炎症、外傷といったほかの悪い要因の影響を受けやすくなり、柔軟に対応することができなくなる。

② ドーパミン

ドーパミンはごく小さな分子だが、その働きは大きな意味をもつ。「動機づけ」と「報酬」だ。

私たちがケーキを食べたり、オーガズムに達したり、目標を達成したりといった経験をすると、ドーパミンが放出され、その行為をさらに補強する。ドーパミンは私たちをいい気分にさせ、喜びをもたらした行為をずっと続けさせようとするのだ。

ドーパミンがかかわる例としてよく知られているのは、「依存症」だろう。ドラッグにせよ、食べ物にせよ、なんらかの経験に対しドーパミンが爆発的に放出されて、その経験をもっと求めずにはいられなくなる状態のことだ。

そうした状態に定期的に陥ると、その心地よいドーパミンの報酬を与えてくれる経験が常習化していく。

依存症のマイナス面はきわめて大きい。常習化の行きつく先は耐性の形成だ。最初と同じ快感を得るために、必要な経験の量が徐々に増えていく。ドラッグの使用量が時とともに増えていく傾向があるのは、このためだ。

しかも耐性ができると、ドラッグの使用や快感を引き起こす行為をやめたときにドーパミンが出なくなり、動揺やイライラ、集中力の欠如、快感をもたらすもののことしか考えられなくなる、といった離脱症状が表れる。

ドーパミン系の機能を正常に働かせる必要があるのは、ドーパミンの量が少ないと無気力や意欲喪失、気分の浮き沈み、依存傾向などにつながる可能性があるからだ。

もしあなたがどうしてもやめられない悪い習慣に苦しんでいるなら、ドーパミン系の働きを正常にすれば、「『脂肪』を燃やす」(3章)や「『糖』を食べて疲れない」(5章)で説明したような、健康的な習慣を身につけやすくなるはずだ。

また、構造的および機能的神経画像研究の結果を見ても、慢性疲労にはドーパミン調節異常が大きくかかわっていることがわかる。

実際、慢性的な疲労を訴える人にドーパミン模倣薬を与えると、ドーパミンのシグナル伝達が大幅に増加し、疲労の低減につながる。

セロトニンの量とうつの関係

③ セロトニン

セロトニンは、おそらく体内で最も多様な働きをもつ神経伝達物質だ。私たちの思考や行動を制御するだけでなく、消化や腸管運動、呼吸、心血管機能、性的機能といったさまざまな生理的プロセスにもかかわっている。

また、気分や認知能力、怒り、攻撃性、食欲、記憶力、注意力といった、あらゆる行動および心理上のプロセスにも影響を及ぼす。

さらに、セロトニンは幻覚作用とも深い関連がある。幻覚と聞いてあなたが何を思い浮かべたにせよ──幻覚キノコでも、アヤワスカ【ペルーの幻覚剤】でも──そのすべてが脳内のセロトニン受容体と強く結びついてセロトニンを活性化し、意識の変容や幻覚をもたらすのだ。

一方で、気分障害の多くはセロトニンの活動が少なすぎることに関連している。いちばんよくある例が、うつ状態だ。

セロトニンの量が少ないからといって直接うつ状態が引き起こされるわけではないが、セロトニン不足は私たちが情報を認識したり処理したりする方法に変化をもたらす。否定的な思考パターンや無気力、楽しいことも楽しめなくなる精神状態へと誘導してしまうのだ。

セロトニンが適切につくられないと、気分がふさぎこんだり、以前は楽しかったことに興味がもてなくなったり、無駄な心配ばかりするようになる。

さらに、慢性的な疲労を抱える成人にはセロトニン量の低下が見られる研究も、いくつか発表されている。

④ オレキシン

オレキシンはこの5つのなかではいちばんの新参者で、発見されたのは1998年になってからだ。

それ以前は、睡眠と覚醒を制御するものが何か、まだよくわかっていなかった。だがいまでは、このオレキシンこそが、睡眠覚醒サイクルにおいて最も重要な役割を果たすことがわかっている。

ナルコレプシー【発作的に眠ってしまう病気】の原因はオレキシン不足で、おそらく自己免疫発作によってオレキシンをつくり出すニューロンが働かなくなるために起こる、と示す研究結果がある。

また、オレキシンの信号伝達を阻害する薬が不眠症の治療に効果的なことや、オレキシンの信号伝達が目覚めと覚醒状態をもたらすこともわかってきた。

発見されてからの数十年で、オレキシンが感情やエネルギーバランス、依存傾向の制御にも役立つと明らかになっている。

身体活動の低下や肥満は、オレキシン不足に結びついており、オレキシンを注射すると身体活動が自発的に増加する。オレキシンの量が少ないと、動きたいという気持ちがなくなってエネルギー消費が減り、体重増加につながるのだ。

・GABA(γ-アミノ酪酸)

GABAは脳内で最も強力な抑制系神経伝達物質であり、リラックスするのに必要な沈静作用の多くを制御している。

また、ニューロン間の連絡や、認知能力、感情、記憶の制御にも欠かせない。

GABAの量が多いと、集中力が切れることが少なくなり、よりすばやく反応したり判断したりできるようになるという研究結果がある。

さらに、健康な若い成人にGABAを補うと、注意力やタスク切り替え能力が向上したという研究結果もある。

一方で、GABAの量が少ないと、次のような認知機能の衰えにつながるという。

・記憶力の低下

・認知能力の低下(たとえばどうでもいい細かいことにとらわれて、大事なことに集中できなくなるなど)が自分で確認できる

・視空間認識能力の低下

・共感能力の低下

・ストレス耐性の低下、うつ・不安を感じやすくなる傾向

・依存症になりやすくなる傾向

GABAが足りていないと、集中力が落ちたり、不安を感じたり、ストレスに弱くなったり、眠れなくなったりするが、これらすべてが疲労につながっている。

文/アリ・ウィッテン アレックス・リーフ

写真/shutterstock

回復人 体中の細胞が疲れにつよくなる

アリ・ウィッテン、アレックス・リーフ

2024/2/29

1,760円

352ページ

ISBN:

978-4763140104

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◎「タンパク質」が睡眠の深さを変える

◎「デンプン」は冷やすと良物質化する

◎水分不足で「脳細胞」が鈍る

◎「最初に野菜」で食べる量が自然に減る

◎卵から「魚」「野菜」並みの栄養を摂取する方法 etc

【目次より】

1章 ミトコンドリア!

エネルギーの「でどころ」を増やす

2章 「体内時計」を修復する

「深い睡眠」を体のすみずみまで効かせる

3章 「脂肪」を燃やす

毎週0・6キロ燃焼する

4章 「腸の壁」の修復

見えない「腸漏れ」。自分のお腹を強くする

5章 「糖」を食べて疲れない

「いちばんいい量」を巡らせエネルギーに変える

6章 疲労脳

脳細胞をクリアに、フレッシュにする

7章 エネルギー生成フード

身近で、簡単に摂れて、ミトコンドリアに効くものを厳選