この記事をまとめると

■教習所を卒業しただけで公道をスムースに走ることは難しい

■そこで今回は免許取りたての人がやっておきたい練習方法を解説

■“ド田舎のだだっ広い駐車場”へ行くのがおすすめだ

免許取り立ての人には「自主練」が必要

 調理師学校を卒業したからといって、すぐにどこかの一流レストランでシェフ(チーフ)が務まるわけではないということは、あらためて言うまでもないだろう。

 だがクルマの場合は教習所を卒業したあとにしかるべき免許を取得すれば、その日のうちに最高出力400馬力超の一流スポーツカーを運転しても構わないというのが、少々難しいところである。

 まぁ免許を取得したその日から何にどう乗ろうがご自由ではあるのだが、教習所で取得した技術だけで街なかをスイスイ安全に走ろうと思っても、実際はなかなか難しいものだ。免許取り立ての人は「自主練」をそれなりに重ねない限り、ハードコアな一般道をスイスイ安全に走れるようにはならないだろう。

「そしてその自主練は、たとえば夜中の峠に走りに行ったり、空き地でとりあえずABSを利かせてみたりするのがいいと思うのですが、どうでしょう?」と、WEB CARTOP編集部のI氏は言う。

 ナンセンスである。

 いや峠を走ってみるのも、安全な空き地でABSを利かせてみるのも、決して悪いことだとは思わない。だが免許取り立ての初心者というのは、もっと手前の段階でつまづいたりビビったりしているわけである。そんな初心者に対して「とりあえず夜中の峠に行け」「空き地でフルブレーキングして『ABSが作動するということ』を体験してみよ」と言うのは鬼の所業であるだけでなく、意味もほとんどナッシングだと思われるのだ。

 ならば、免許取り立ての運転初心者はどうすればいいかというと――私に言わせれば「ド田舎のだだっ広い駐車場へ行け」である。

 そこで、まずは「路肩への幅寄せ」「お尻から入れる駐車」「縦列駐車」「目標とするラインまでの前進または後進」等々を、だだっ広くてガラ空きな駐車場内でひたすら練習するのだ。

 まぁ最初はあまりうまくいかないだろう。だが何事も大切なのはトライ&エラーである。そしてトライ&エラーを重ねるなかでしか、人は成長しないものだ。で、その運転技術習得のためのトライ&エラーを東京の大手町とか大阪の道頓堀とかでやるとちょっと大変なことになるので、まずは「ド田舎のだだっ広い駐車場」に行くのである。

 シミュレーションしてみよう。

 休日の朝、クルマに乗って家を出る。車種は何でもいいが、超初心者による暗い道での運転はリスクが高いので、明るくなってから出発したほうがいいだろう。今の季節でいうと5時ぐらいだろうか。新聞配達さんの原チャリなどに注意しながら、走り出そう。

 そしてえっちらおっちらと近隣の高速道路入口を目指す。ド初心者の場合はそれだけでもちょっと大変で、ちょっとビビるかもしれないが、早朝のうちは交通量も少ないので、ロープレッシャーな環境下での良い練習となるだろう。

 そして高速道路を法定速度ぐらいで走り(このセクションはじつに快適で、じつにローリスクであるはずだ)、メジャーな観光地ではないエリアのランプで高速道路を降りる。で、あらかじめGoogleマップなどで目星をつけておいた「だだっ広い駐車場」へ行く。予想に反して意外と混んでいることもあり得るので、何カ所かの候補をあらかじめリストアップしておいたほうがいいだろう。ちなみに駐車場までの山坂道での運転は決して簡単ではないので、抑え気味の速度で慎重に走らねばならない。

「だだっ広い」「ほかにクルマがほとんど停まっていないため迷惑になりづらい」という条件に合致する駐車場に入ったら、ペットボトルのお茶か何かで水分補給をしたのち、さっそく特訓だ。

3回か4回ほど行えば「ドが付く初心者」からは脱却できる!

 まずは、路肩から10cmぐらいの場所に真っすぐビシッと停める練習からだろうか。要するに「運転席から遠いサイドの車両感覚をつかむ」ための練習である。これがおおむねつかめれば、シビアで狭い都会の裏道においても焦らず運転できるようになる。

 で、この練習課程において左側のホイールをガリッとやってしまうこともあるだろうから、やはり昭和のおっさんが言っていた「最初のクルマはボロい中古車にしときなさい」というのは正しかったのかもしれない。

 路肩から10cmぐらいの場所におおむね真っすぐ停められるようになったら、次は「目印とする白線の位置まで、正確に前進または後進する」という地味な特訓だ。

「こんなもんかな?」と思ったら、まだまだ白線まで1mぐらい余裕があったり、逆に白線をオーバーランしてしまうことの繰り返しだろうが、「目標とするラインと、運転席から見える風景の関係性」を何度も確認しながら(途中でクルマを降りて、位置関係を車外から確認してみよう)、おおむね正確な位置まで前進または後進できるように練習を繰り返すのだ。とはいえ我々は天皇陛下が乗る御料車のドライバーになるわけではないので、正確さは「おおむね」で大丈夫である。細かすぎることを気にする必要はない。

 これと同様のニュアンスで「お尻から入れる駐車」の特訓を繰り返し、その後は「縦列駐車の猛練習」も行ったら、そろそろ集中力と体力は限界かもしれない。ひと休みしてペットボトルのお茶を飲み、買っておいたコンビニのおにぎりか何かを食べて腹ごしらえをしたら、自宅へ向かおう。

 その日の練習の成果はイマイチだったかもしれないが、気にすることはない。最初は誰もがそんなもんであるし、繰り返し練習すれば、よっぽど鈍くさい人でない限り、必ずある程度は上手くなる。少なくとも「普通ぐらい」には絶対になる。

 帰り道はおおむね午後1時とか、そんなもんであろうか。早朝よりは交通量が増していてプレッシャーを感じるかもしれないが、焦る必要もビビる必要もない。車間距離を普通に取りながらおおむね法定速度ぐらいで慎重に走れば、交通事故というのはそう簡単には発生しないものだ。

 で、いろいろと合流したり合流されたり、交差点での右直事故に注意したりしながら自宅近くにたどり着いたら、その日の特訓の成果を見せるべくしかるべき場所に駐車しよう。その後は風呂に入るなりビールを飲むなり、お好きになさればいい。

 そしてこういった流れの自主練を──おそらくは3回か4回ほども行えば──あなたはもう初心者ではない。いや初心者ではあるのだが、「ドが付く初心者」からは脱却できているに違いないのだ。

 その後は、安全意識を自身に徹底させながら必要に応じて場数を踏んでいけば、気がついたらけっこう上手くなっているはずであり、上手くなっていない場合でも「普通ぐらいのドライバー」にはなっているだろう。

 結局のところ運転初心者が不安を感じ、また実際うまくできないのは「車両感覚を把握すること」と「合流や交通の流れにまつわるエトセトラ」である場合が多い。今回筆者が提唱する「ド田舎の空いてるだだっ広い駐車場まで遠征しての自主練」を行えば、現地での車両感覚把握特訓と、行き帰りの道中における実地訓練により、そのあたりのことが自然と身につく結果になるはずなのだ。

 まぁそのほかにも「ちょっと運転できるようになると調子をこいてカーブ手前での減速が不十分になり、冷や汗をかくか、そのままガードレールに突き刺さって死ぬ」みたいなこともあるわけだが、それはまた別の問題である。

 まずは「車両感覚」と「合流および流れのエトセトラ」を克服すれば、多くのことはなんとかなる。だから、がんばってほしい。いや別にがんばらなくてもいいのだが、とにかく、自分に対しても他者に対しても「無事」であることこそを至上命題とするドライバーに、ぜひなってください。