浜野まいかインタビュー(前編)

 昨夏、コスタリカで行なわれたFIFA U-20女子ワールドカップで準優勝ながらゴールデンボール(大会MVP)を獲得し、アンダーカテゴリーでその名を確かに刻んだのが浜野まいかだ。


自分に合う最高のチームで多くのことを吸収している浜野まいか

 セレッソ大阪堺レディースではユース世代からの叩き上げとして大きく成長し、2021年3月にはなでしこジャパン候補合宿に招集された。実際は1年延期されたが、東京オリンピック前の"秘密兵器"探しの一面もあったこの候補合宿。シュート練習などでも実力を垣間見せながらも浜野の東京オリンピックメンバー招集は叶わなかった。

「本気で東京オリンピックのメンバー入りを狙っていたから、すごく悔しかったです」と浜野は、この頃を振り返る。この負けん気の強さが、彼女を支えていることがこのあと、徐々に証明されていく。

 WEリーグ開幕時にはINAC神戸レオネッサへ、チーム史上最年少でのプロ契約で完全移籍。しかし、この逸材を海外のビッグクラブが見逃すわけがない。2023年1月、今や世界最高峰リーグと目されるほど勢いのあるスーパーリーグ(イングランド)のチェルシーFCと4年半の契約を結び、同時に身体的成長の場としてハンマルビーIF(スウェーデン)にレンタル中だ。

「もともと海外志向はあって、イングランドは行きたいと思っていたリーグでした。一旦はヨーロッパに慣れる、そしてスーパーリーグに立てるポイントをしっかり重ねていくこと、今はとにかく成長したいです」

 このハンマルビーが、浜野のインテリジェンスを刺激するにはピッタリのチームだった。チーム内には各国の代表選手も多く、つなぎ所もしっかりとイメージできる。それでいて強度が日本よりも断然高く、メンタル面サポートなども充実している。日本女子サッカーで育った浜野の長所が潰されることなく成長できる環境なのだ。トレーニングを見れば、浜野がチームに受け入れられていることが一目で理解できた。メニューの理解が乏しいと感じた選手たちが浜野に優しく補足する姿は日常だ。

「めちゃくちゃみんな優しいです。トレーニングのあとは提携しているホテルで食事が出るのでみんなで移動します。そのあとまた戻ってジムの日もあればメンタルミーティングがあったり、もちろん2部トレーニングも頻繁にあるので結構忙しいんですよ(笑)」

【自分に合ったチームカラー】

 すっかりスウェーデンの暮らしには慣れたようだ。あまり機会はないが、INAC時代に自炊も経験済みで生活に不安要素はない。何よりチームカラーがオンオフともに浜野に合っている。

「日本って少人数のグループに分かれがちですけど、ここはチーム全体で動くんです。オフはひとりで過ごしていても『ここで集まってるよ〜よかったらどうぞ』ってグループメッセージが回ってきたりもします。バランスよくみんなとコミュニケーションが生まれる雰囲気はありますね」

 浜野は3節目で今季リーグ戦初ゴールを含む2ゴールをマークした。ホームスタジアムであるハンマルビーIPは大盛り上がり。この声援だけでもサポーターに愛されていることが伝わってくる。チームメイトもしかり。浜野のパスセンスを理解しているからこそ、彼女にボールが入ると見つけてもらおうとそれぞれがすばやくフィニッシュポジションを奪い合う。浜野自身、試合だけでなくトレーニングでも楽しそうだ。

「楽しいですよ!日本だとパスがズレると凹んでたんですけど、ここではみんな足が長いから届いちゃう。日本は守備もコンパクトでスペースがないから見ただけで(攻めるのが)難しいなってわかるんですけど、こっちは見てのとおりスペースが結構あるように見えるじゃないですか。でもスピードがあるからパスを受けたときにはそのスペースがカバーされて埋まってるんです。だから無謀と思えるパスも必要だし、それを出せるし、出してもらって走ることもできるから楽しいです!」

【研究熱心な一面も持つ】

 スウェーデンは冬が長く、寒さのため芝が育たないので、トレーニングも試合も基本的に人工芝が多い。


海外でも楽しくサッカーができていると語り、順応性の高さを見せる

「2月の(なでしこジャパンの)アメリカ遠征では、まだスウェーデンに来て1カ月くらいでの参加だったので、そこまで感じなかったんですけど、今回のヨーロッパ遠征では人工芝でのプレーに慣れてしまっていたので、1日目の練習でポゼッションやパスの強度とかミスが多くてちょっと焦りました。初めての感覚だったから、それを戻すのに必死で......少しわかってきたので次からはもっと早く合わせられるようにしたいです」

 今、彼女は吸収期。それに加えて研究熱心な一面が伺える。それはセレッソ時代から培われてきたものだと言う。

「セレッソの時はトレーニングしすぎて、いい加減やめろって怒られてました(苦笑)。チームトレーニングの2時間前には自主練をしていて、終わったあとも2時間やっていました。あれはさすがにやり過ぎでしたね。でも、そこで身についたこともあるので必要な時間だったと思っています」

「ポン、ポン、パーンって感じです」と、プレーを独特の表現で説明することがしばしばある浜野の印象が少し変わった。実践を積み重ねた上に成り立った感覚派なのだ。その典型とも言えるのが、U-20 女子ワールドカップ準決勝のブラジル戦で決めた決勝ゴールだ。DF裏へ出されたふわりとしたボールに相手よりも速く反応し、GKが触る手前でフィニッシュに持ち込んだ値千金のゴールだった。

「ふいに出てくるんです。普通にパスを受けてトラップしてパン!と打つんじゃなくて、あんなシュート......やろうと思ってもできないです(笑)。一瞬のひらめきでもなくて、頭で考えてるわけでもなくて、GKが出てる!って思ったらもう勝手に足が出ていた。ああいう、ふいに出てくるプレーって何回も練習でやってるからやと思うんです。『いつそんな練習したっけ?』って感じですけど、きっと遊びのなかでいろいろやってるからだと信じてます(笑)」

【より強い相手と戦いたい】

 アンダーカテゴリーで代表として戦った経験はやはり大きい。外の世界を知ったことで、よりサッカーへの欲が沸き上がった。

「上には上がいるとわかってワクワクしました。逆に上がいないと燃えないんです。世代別のワールドカップで戦っていなかったら外の世界を知らないまま、国内のスピードでプレーしていたと思います。昔から相手チームに大人のコーチが入ってくれると燃える!っていうタイプ(笑)。勝負にはどんなことでも負けたくないです」

 組織的なサッカーを展開しつつも強度が高いスウェーデンのリーグで浜野は、その世界を確実に広げている。その貪欲さは英語理解度にも反映し、渡欧3カ月である程度のヒアリングは可能。練習前の1時間、ロンドンの講師とのオンラインレッスンを重ね、意思を細かく伝えるための勉強も欠かさない。チェルシーが目をつけたその才能は花開く準備を着々と進めている。

【後編】浜野まいかの最終目的地は?>>