“強さの継承”は高難度のテーマ。ジュビロ黄金期を知る服部年宏がJ3福島で専念「地域に合った方向性を模索していく」
J3の福島ユナイテッドFCで指揮を執る服部年宏監督が、かつて在籍したジュビロ磐田も現在はJ2で戦っている。2000年前後はJ1優勝争いの常連で、圧倒的な強さを誇ったクラブだが、輝かしい時代は長く続かなかった。「強さの継承」というのがいかに難しいのかを我々は改めて痛感させられる。
「今は選手の入れ替えがものすごく多いですよね。昔は移籍がほとんどなくて、主力選手が1つのチームで何年もプレーするというのが普通だった。僕がいた頃のジュビロもそうですけど、同じメンバーと長くプレーすることで阿吽の呼吸が生まれ、強固な組織が形成されていたんです。
だけど、時代が進むにつれて、移籍が活発化した。若い選手の海外移籍も一般化してきて、継続性のあるチーム作りがすごく難しくなりましたよね。
過去5年間くらい圧倒的に強かった川崎にしても、鬼木(達)監督が志向するサッカーに合った選手を強化部が大学や高校、他クラブから連れてきたり、アカデミーから育てることで戦力を保っていたけど、三笘(薫=ブライトン)や田中碧(デュッセルドルフ)のような突出した存在が次々と抜かれてしまったら、やっぱり簡単じゃないですよね。『強さの継承』というのは本当に難易度の高いテーマなんですよ」
鹿島の名物GMである鈴木満元強化部長も同じようなことをコメントしていたが、鹿島や横浜のような名門クラブが壁にぶつかっているのだから、選手の個人昇格が当たり前のJ3はより深刻。毎年毎年メンバー編成が大きく変わるという前提のなかで、クラブは歩んでいかなければならないのである。
「より厳しい環境にいるからこそ、チームのスタイル、クラブの哲学を明確にしなければいけないと僕は思います。地域密着とか、選手育成、アカデミーの底上げ、スポンサーとの関係を密にするとか、やることは沢山ありますけど、その地域に合った方向性を模索していくことが、福島を筆頭にJ3クラブに求められているテーマなのかなと感じます。
僕らの場合、昨季の序盤戦で首位に立っても観客が1500人しか集まらないという厳しい現実を突きつけられました。スタジアム整備の課題に直面していますし、もし秋春制導入となったら、練習場やアクセスなど解決しなければいけない問題は数え切れません。
資金力のない我々は、そもそもオフシーズンもキャンプに長期間行けていませんし、冬場は雪が降るたびにボランティアの方がスタジアムや練習場の雪かきを手伝ってくれて、何とかトレーニングができている状況なんで、本当に大変ですよ(苦笑)。
そういうなかでも現場は魅力あるサッカーをして勝つことを追い求めなきゃいけない。今は早く上位にチームを引き上げることが監督である自分の一番の仕事なんです」
改めて気合を入れる服部監督。気温の上がるここからの夏場が大きなポイントになるだろう。
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福島は5月27日に上位の愛媛FCと戦ったあと、6月はY.S.C.C.横浜、FC大阪、ヴァンラーレ八戸、FC岐阜と中位から下位に位置するクラブとの対戦が続く。ここで連勝できれば、先々への希望が見えてくる可能性が高いのだ。
「ここまで10試合を戦って嫌だなと感じる相手は、縦に早くなった長野と、能力の高い外国人選手がいる今治あたりかな。でも上位と下位の力の差はそれほどないと思いますし、1つきっかけを掴めれば上に行ける可能性は大いにある。選手たちに前向きなマインドを持たせつつ、頑張っていきたいと思います」
5月14日のカターレ富山戦を0−1で落としたのは痛かったが、天皇杯1回戦でノースアジア大学に4−0で勝利。樋口寛規や森晃太らがゴールを奪うなど、明るい兆しも見えつつある。
今、彼らが改善しなければいけない最大のポイントは得点力不足だ。今季10戦で総得点6はリーグワーストタイ。服部監督が開幕前から期待していた長野星輝らアタッカー陣に勢いが生まれ、ゴール数が伸びてくれば、浮上の糸口は掴めるはず。
服部監督が目ざす「楽しく厳しいサッカー」を選手が実践し、福島スタイルを具現化させるのは果たしていつなのか。指揮官の手腕に期待を寄せたいものである。
取材・文●元川悦子(フリーライター)
