「鹿島アントラーズは勝たなければならないクラブです。今年も残る試合にすべて勝ち、タイトル獲得を全力で目指していきます」とは、鹿島の岩政大樹新監督のコメントだ。

 無理を感じずにはいられない。岩政監督はご承知のように、先日解任されたレネ・ヴァイラー監督の下でコーチを務めていた元コーチだ。今季初頭、ヴァイラー監督の来日がコロナ防疫対策のために遅れたとき、4試合ほど代行監督として采配を振った経験はあるとはいえ、監督としてはほぼ素人。コーチとしての経験も1年しかない。「勝たなければならないクラブ。今年も残る試合にすべて勝ち、タイトル獲得を全力で目指す」と言われても、その具体的な術は見えてこない。自信の根拠はどこに存在するのか。どんなサッカーをしたいのか。勝つサッカーがしたいという言い方では、伝わってくるのは気力ばかりだ。精神論ありきの非論理的思考と言われてもしかたがない。

 その気力にしても「残る試合をすべて勝つ」は、大言壮語で嘘臭い。大真面目でそう言っているのだとすれば、逆に心配になる。実際に、目標を問うと「Jリーグ優勝です」と答えてしまうJクラブの監督は少なくない。非論理的な精神論を口走る輩は、鹿島の新監督に限った話ではない。日本サッカーあるあるになるが、岩政監督の放言を放置しては、業界に浸かったライターと化してしまう。

 そもそも「アントラーズは勝たなければならないクラブです」に、違和感を覚える。2021年の営業収支はリーグ3位。それは翌シーズンの年間予算額に値する数字で、2020年、2019年はそれぞれ5位だった。鹿島は予算から見ると4位、5位が妥当なチームである。だが岩政新監督は、鹿島は勝たなければならないクラブ、すなわち常勝軍団だと主張する。理由はJリーグでこれまで、最も数多くのタイトルを獲得してきたクラブだからだろう。

 よくやってきたことは確かである。鹿島がこれまで様々な努力で予算規模を上回る費用対効果に優れた成績を挙げ続けてきたことは事実。そこは称賛しなくてはならない。しかし常勝軍団ではない。フロントなどの努力で結果的にJリーグNo.1になっただけで、Jリーグを代表するビッグクラブではない。スペインにおけるレアル・マドリーではない。バルセロナでもない。せいぜいアトレティコだ。セビージャ、バレンシアあたりが妥当な線だろう。

 2万人に届くかどうかという1試合の平均観客で見れば、4、5番手どころかJ1リーグの平均的なクラブになり下がる。

 常勝軍団と周囲からおだてられ、鹿島自身もファンも含めてその気になってしまった。その歪みに苦しんでいる。現在の成績は5位。予算的に見れば問題のない順位だ。しかしそれでも監督交代に迫られた。自己評価が高すぎるとの見方は確かにできる。サッカーの中身に問題があるのなら、しかるべき人が前に出て来て説明する必要があるが、それはない。なぜ解任するのか。理由は不透明だ。岩政新監督が口にした「鹿島は勝たなければならないクラブ」で、皆が納得しようとしている。長いものに巻かれたがっているというか、思考停止状態に好んで陥ろうとしている。

 こうした場合、外国ならば地元メディアが活躍する。理由や背景を暴こうとするが、鹿島に限らず日本の地方メディアにはそうした意気地がない。Jリーグのエンタメ性が、低次元で落ち着いてしまっている大きな理由でもある。

 昨季も鹿島は、ザーゴ監督の首を切っている。それを引き継ぎ、5位でフィニッシュさせた相馬直樹監督(現大宮アルディージャ監督)とも、それっきりの関係になった。その結果、ヴァイラー監督が招かれたわけだが、それも上手く行かず、現状5位で岩政新監督に引き継ぐことになった。