研究の概略図。(画像:東京大学発表資料より)

写真拡大

 アニメ『けものフレンズ』は、絶滅危惧種保護に貢献した。それを定量的に裏付けるデータを、東京大学などの研究グループが示すことに成功した。

【こちらも】絶滅危惧種の「絶滅危険度」をゲノム情報から評価 東北大などの研究

 研究発表を行ったのは、東京大学大学院の深野祐也助教、曽我昌史准教授、多摩動物公園の田中陽介氏ら。

 これまで人類は、多くの生物種を絶滅に追い込んできた。また、今も多くの生物種を絶滅に追い込み続けている。だが同時に、人間の手による絶滅危惧種の保護活動というものもまた行われている、というのもまた一面の真実だ。

 絶滅危惧種の保護において何が必要であるかというと、それは色々あるであろうが、まず第一には、資金である。このような営為はなかなか営利的には行い得ないものであるため、その資金はどうしても寄付頼みにならざるを得ない。そして、寄付はどこから来るかと言えば、普通は「絶滅危惧種の保護に関心を持った」一般市民からである。

 では一般市民はどういうところから、どうやって絶滅危惧種の存在を知り、その保護に関心を持つのであろうか。これまで、このような問題を定量的に扱った研究は行われていなかった。

 さて、『けものフレンズ』というアニメ作品がある。2017年1月からテレビ放映され、色々と大きな話題になったアニメだ。タイトルからも分かるように、実在の動物をモチーフにした多くのキャラクターが登場するのだが、その中には多くの絶滅危惧種が含まれている。

 研究グループは、このけものフレンズの放映が絶滅危惧種への関心を高め、寄付を増大させたのではないかとの仮説を立て、それを検証するために、「動物の名前での検索数」と「Wikipediaの閲覧数」を測定した。

 検証を行った結果、アニメの放映による検索数の増加は600万回を越え、Wikipedia閲覧も100万回を越える影響があった、と考えられ、けものフレンズによる寄付金増大への貢献は明瞭であるという。

 研究の詳細は、Science of the Total Environmentに掲載されている。