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金曜改革も大失敗!?

 ツイッターで「アニメ 左遷」と検索してみると、相当数のツイートが表示される。近年、少子高齢化を背景に多くのアニメ番組がゴールデンタイムから消え、歎き悲しむ声が少なくないということだ。

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 特に今年はテレビ朝日が、誰もが国民的アニメと認める「ドラえもん」と「クレヨンしんちゃん」の放送時間を変更したことが大きな話題になった。

 9月6日までは「ドラえもん」は金曜の午後7時、「クレヨンしんちゃん」は午後7時半から放送されていた。この時間帯がゴールデンタイムにあたることは言うまでもない。

 ところが10月5日から、前者は土曜の午後5時、そして後者は、より早い午後4時半からの放送となった。

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 テレ朝は、金曜夜のゴールデンタイムで視聴率が低迷している「ドラえもん」と「クレヨンしんちゃん」を左遷。代わりに「ザワつく!金曜日」(19:00)、「マツコ&有吉 かりそめ天国」(20:00)、「ミュージックステーション」(21:00)の3本をぶち込み、視聴率を上げる戦略を選択した。

 視聴者の年齢層を上げ、アニメ2番組の後に「ミュージックステーション」が始まるミスマッチを解消。悲願の「視聴率三冠王」、「打倒日本テレビ」を実現させようと、金曜改革の大なたを振るったのだ。

 だが、テレ朝の目論見は、今のところは失敗に終わっているようだ。ライバル民放キー局で番組制作に携わるスタッフが解説する。

「ドラえもん」と「クレヨンしんちゃん」の視聴率低下

「前提として、テレ朝の日テレ超えは決して夢物語ではありません。『ナニコレ珍百景』(日・18:30)、『ポツンと一軒家』(同・19:58)、『相棒』(水・21:00)、『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』(木・21:00)と高視聴率番組が多く、朝の『モーニングショー』(平日・8:00)や、午後の『相棒』の再放送も手堅く数字を稼いでいます。金曜改革は練りに練った戦略だと思うのですが、『マツコ&有吉 かりそめ天国』と『ミュージックステーション』の2本が誤算でした」

 午後7時からの「ザワつく!金曜日」は好評で視聴率は2ケタ。ところが続く「かりそめ天国」は深夜番組の良さが失われて8%台に低下し、「ミュージックステーション」が5%台に甘んじている。例えば11月8日に放送された「Mステ」の視聴率は5・3%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)だった。

「それでも3番組をテコ入れしたり、最悪の場合は新番組をスタートさせたりすれば、とりあえず何とかなるものです。ところが土曜に移した『ドラえもん』と『クレヨンしんちゃん』の視聴率低下はさらに深刻で、作品の“ブランド価値”が暴落する可能性が出てきました。何しろ10年前は金曜夜で20%台を稼いでいた2番組が、土曜の夕方になってからは3%とか2%という数字も出ているわけですからね」(同・制作スタッフ)

 ビデオリサーチの公式サイトに掲載されている「週間高世帯視聴率番組10.」を元に、金曜夜だった8月における「ドラえもん」と「クレヨンしんちゃん」の視聴率と、土曜夕方に左遷された10月の視聴率を比較してみた。表にまとめてみたので、ご覧いただきたい。

 少なくとも夏までは6%台が中心であり、あと少しで7%に届く数字をキープしていたことが分かる。そして土曜に“左遷”されてからは、3%や2%台に下落してしまったことも一目瞭然だ。

アニメ事業は経営の根幹

 ところで、テレ朝の視聴率が下がることを、実は他ならぬ視聴者が“予言”していたことをご存じだろうか。

 デイリー新潮は9月1日、「『ドラえもん』『クレヨンしんちゃん』は土曜日に左遷 苦肉の“抱きつき作戦”」の記事を公開した。2番組を左遷するにあたり、ライバルの日テレが放送する人気アニメ「名探偵コナン」(土・18:00)に着目。それより前の時間帯に放送することで、“抱きつき視聴”を狙ったという内容だった。

 この記事がYAHOO!ニュースにも掲載されると、コメント欄に「生活習慣と合致しない」という多くの苦情が書き込まれたのだ。代表例をいくつか引用させていただく。(註:引用時にはデイリー新潮の表記に合わせた、以下同)

《ドラえもんとクレヨンしんちゃんの曜日変更は本当に困ります…我が家では金曜日、学校から疲れて帰ってきた子供が楽しみにしてるアニメだったので》

《土曜は、土日休みの家庭の場合は出掛けてる事が多い。実際、コナンって車の中でかかってる事が多いですよね。金曜の夕飯時に、週末のワクワク感を感じる今までの時間が良いのに》

 最後はツイートをご紹介しよう。

《土曜日夕方って、子供は塾、予備校、習い事、遊びに出掛けてて、家にいないんじゃ?》

「実はテレビ朝日は“引っ越し”の理由を『金曜夜は塾などで『ドラえもん』と『クレヨンしんちゃん』を見ていないので、土曜夕方に移します』と説明していました。ところがネット上では『土曜の夕方は習い事や外出、外食があるからリアルタイムは見られない』という意見が大勢を占めました。実際、引っ越し後の視聴率を見ると、視聴者の苦情の方が正しかったということでしょう」(放送担当記者)

 ご存じの方も多いだろうが、確かに現在の「ドラえもん」と「クレヨンしんちゃん」は視聴率が低いのかもしれない。だが、これが映画版になると、年間興行収入のベスト10は常連といっていい。

 今年は3月に「ドラえもん のび太の月面探査記」(東宝・八鍬新之介監督)が公開され、興行収入は約50億円。4月には「クレヨンしんちゃん 新婚旅行ハリケーン 〜失われたひろし〜」(東宝・橋本昌和監督)が公開され、こちらも約19億円を稼いだ。

「興行収入だけでなく、ソフト化に伴う利益や、物販もあります。アニメコンテンツはテレビ局の経営を左右するほどの収入源です。例えばテレビ局の株価ですが、日テレは1400円台、テレ朝が1700円台なのに対し、テレ東は何と2300円台。これはアニメ事業が好調なことを投資家に評価されているからです。テレ朝は『ドラえもん』と『クレヨンしんちゃん』の放送日を変えて視聴率を下げました。この悪い流れが映画にまで伝播すると、テレ朝の屋台骨は揺らぎます。番組改編のミスどころか、経営判断ミスと言われてもおかしくないですね」(同)

週刊新潮WEB取材班

2019年11月23日 掲載