早くも消費回復を見据える小売業界の商魂
それでも高額品や家電などは駆け込み購入が見られ、「都内の基幹店で高級時計の売り上げが前年同期比で2倍強となった」(三越伊勢丹)。
日本百貨店協会の調査でも、貴金属などの高額品の販売が好調で、8月の全国百貨店売上高は既存店ベースで前年同月比2・3%増と、5カ月ぶりに前年同月を上回った。家電量販店などでもテレビや洗濯機、エアコンなど高額品の駆け込み購入が見られた。
増税後の需要の反動減について、エコノミストらは「駆け込みが前回ほど大きくない分、反動による消費の落ち込みは小さい」と予測する。
「1年くらいで増税前の(19年)上期ごろの水準に戻る見通し」(藤田隼平三菱UFJリサーチ&コンサルティング研究員)と分析。理由として、家計の負担増を上回る規模の政府による対策に加え、雇用と所得環境が前回増税時よりも良く「家計所得面がしっかりしているので持ち直しは早い」(同)とみる。
今回、初めて導入された軽減税率は、実施前から消費者や小売業者から「わかりにくい」との声が相次いだ。例えば、コンビニエンスストアで弁当を買った場合、持ち帰りなら8%、店内飲食なら10%の税率になる。
「店内飲食の場合はお申し出ください」といった掲示があれば、店員による確認は不要で、会計時の自己申告に任せることになる。同じ商品に二つの価格が存在するため混乱は必至だが、政策としての導入効果はある。
「軽減税率が導入されなかった場合、消費者物価を1・3%押し上げるが、導入によって上昇幅を0・3ポイント抑制し、1%の上昇に抑えられる」(村瀬拓人日本総合研究所副主任研究員)と説明する。
一方、プレミアム商品券や幼児教育無償化などの政策は対象者が限定される。日本総研によると、軽減税率も含めた一連の対策効果は、2人以上の勤労者世帯(年収500万円)で年間約7万円あるのに対し、年金世帯では約3万円、単身勤労者世帯では約1万円未満にとどまる。
増税直後は買い控えが起こるとみられるが、米中対立などのリスクが顕在化しなければ「20年4―6月には元の消費水準に戻るだろう」(村瀬氏)との見方が多い。
(取材・丸山美和)
