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●実に4時間30分、新しい発表が

LINEは6月27日、プライベートイベント「LINE CONFERENCE 2019」を開催しました。4時間半にわたるカンファレンスで語られたのは、新たなビジョン『Life on LINE』に基づいた、offline、Fintech、AIといった領域での新たな取り組みです。メッセンジャーからライフインフラへ……という思いを形にするべく、LINEは各領域における挑戦を続けていくとしています。

LINE Mini app

その冒頭、慎ジュンホ氏(代表取締役 CWO)が語ったのは、OMO(Online Merges with Offline、オンラインとオフラインの融合)について。LINEがインターネット上のサービスとリアルの世界のサービスをつなぐハブになる、と宣言します。

2019年秋には、サービスプラットフォーム「LINE Mini app」を提供する予定です。企業や店舗が、LINEの中にサービスページを開設できるのが特徴。メニューや利用料金の紹介、予約フォームの設置、クーポンの発行、ポイントカード機能なども用意できるため、消費者の利便性も高まりそうです。

例えば通知機能を使えば、クリーニング店が「お預かり完了」や「仕上がり日」のリマインドをプッシュ通知で利用者に送信できます。慎氏は「ユーザー1人ひとりの状況に合わせた最適なタイミングで、コミュニケーションを図れます」と述べました。

LINE Scoreとは?

会場が少しざわついたのが、出澤剛氏(代表取締役社長 CEO)が紹介した、6月28日に提供開始となったスコアリングサービス「LINE Score」です。AIが消費者個人のスコアを算出し、その点数によって最適なキャンペーンや特典などを提供するというもの。

運営するのは、LINEの金融事業を展開するLINE Financialのグループ会社、LINE Creditです。LINE Scoreについては、「様々なサービスを、たくさんのユーザーにより安心安全に楽しく利用していただくため」としています。

LINE Scoreは、LINE上の「LINEウォレット」から誰でも利用できます。開始前には規約に同意する必要があり、デフォルトの状態でデータが算出されたり、利用されることはないとのこと。また、連携企業へデータ提供を行う場合は、利用の都度、ユーザーの同意を求めるようになっています。会場で紹介された利用シーンは、スコアの高い人なら「憧れの車もお得にカーシェアできる」「人気旅館の予約も優先的にとれる」「借り入れの金利もお得になる」といったものでした。

LINEグループが変わる

私たちの生活に最も身近なところでは、LINEのグループ機能が拡張します。稲垣あゆみ氏(上級執行役員 LINEプラットフォーム企画統括)が紹介した「OpenChat」は2019年夏に提供する新サービス。ユーザーが自身の関心事をベースにグループを作り、会話や情報収集できるようになります。記者の中には「(2000年代に流行した)mixiでコミュニティをつくるようなイメージだろうか」という感想も聞かれました。

OpenChatではグループ機能も強化されます。トークルームごとにプロフィールを変えて会話できたり、「参加承認制」のトークルームにしたり、「ルームコード」をかけた参加者限定のトークルームを作れるほか、管理人機能も利用可能になります。これまで個々人が任意に友人を招待したり、退会させたりが可能だったグループ機能ですが、今夏以降、よりニーズに即した使い方ができるようになりそうです。現在、LINEではOpenChatの先行利用者を募集しています。

○テレビとの連携

LINE NEWSには、新機能が2つ追加されます。島村武志氏(LINE 上級執行役員 ポータル・メディア事業統括)によると、ひとつは放送局とのリプレイ動画連携「Replay Cast」で、2019年夏ごろの提供を予定。ネット上に同時放送されている番組を対象に「見どころ」をリアルタイムでLINEにプッシュ配信し、ユーザーを同番組のリプレイ動画へ送客、任意で「リプレイ動画」の視聴を可能にします。第1弾としてテレビ東京との連携が決まっています。

もうひとつは、動画クリエイターに新たな創作表現の場「VISION」を提供すること。VISIONはLINEアプリ「ニュースタブ」の中に掲出される、縦型の動画コンテンツです。ただ、この日にステージで紹介されたのは、コンセプト動画のみでした。

LINEスタンプ使い放題!

クリエイターズスタンプが使い放題になる定額制の「LINEスタンプ プレミアム」も、2019年7月に開始します。舛田淳氏(LINE 取締役 CSMO)が説明しました。300万セットを越えるクリエイターズスタンプが、月額240円(学生プランは半額の120円)で使い放題となるサービスです。舛田氏は「人気の約3億8,000万円分のスタンプが自由に利用できます」とアピールしました。

また、「LINE LIVE」は夢を叶えるライブ配信プラットフォーム。モデルや声優になりたい、という夢を持った一般ユーザーがLINE LIVER(ライブ配信者)になって活躍し、情熱的なファンと一緒に成長していく利用シーンを想定しています。

これに関連して、ファン同士が盛り上がれる空間「プレミアムチャンネル」を2019年7月に提供。月額費用を支払うことで、限定ライブ配信が視聴可能になります。

ライブ配信を見ながら買い物できる「ライブコマース」は2020年中に提供。視聴者がリアルタイムに質問やコメントをしながら、商品を購入できるサービス設計です。LINE LIVERの限定グッズを販売することも考えています。

LINE MUSIC」は2019年秋に、UIをスタイリッシュに大幅改善し、AIを活用した楽曲レコメンドなども可能になります。好みや時間にあわせて背景の色が選べる「ライト&ダークテーマ」、音質調整できるイコライザー機能も追加されます。

個人の好みに最適化したジャンルやムード別のデイリー更新型プレイリスト、シチュエーションやジャンルをテーマに自動再生するラジオ機能も搭載します。今後はAIとの連携を深め、OCR技術を活用した簡単プレイリスト移行機能や、VOICE Searchも実装予定としています。

話題のミュージックビデオも楽しめる「MUSIC VIDEO」は2019年夏に提供。このほか、新たにフリーミアムモデル「ONE PLAY(仮)」も実装されます(2019年秋)。5,400万曲が聴き放題となるサービスで、ONE PLAY(仮)ならどの楽曲でも1回ずつフル尺再生が可能。一定時間を過ぎると、再び聴けるようになります。新しい音楽に触れる機会が増えそうですね。

●金融系や支払い系も大幅強化

LINE Pay×メルペイ×NTTドコモ

国内での登録者数が約3,600万人まで増加したモバイル送金・決済サービス「LINE Pay」についても、アップデートが報告されました。長福久弘氏(LINE Pay 取締役 COO)が最初に紹介したのは、VISA・オリコとの提携。高還元のVisaクレジットカード「LINE Pay Visaクレジットカード」が発行可能になりました。2020年東京オリンピックのスペシャルエディションも用意されています(VISAは2020年東京オリンピックのワールドワイドオリンピックパートナー)。

LINE Pay、メルペイ、NTTドコモの3社連携も発表されました。モバイルペイメントにおける加盟店アライアンス「Mobile Payment Alliance(MoPA)」を通じて、国内のキャッシュレスの普及促進を目指していくとしています。

○金融が変わる、LINEが変える

Financial Platformセッションに登壇したのは、出澤剛氏。LINE Financialと野村ホールディングスの合弁会社であるLINE証券では、LINE上で展開する「LINE証券」を2019年秋から提供すると発表しました。厳選した日本のリーディング企業100社の株式を、1株につき最低で150円程度から平均で3,000円程度で購入できる内容です。

出澤氏は「シンプルで直感的な操作が可能なUI・UXにより、投資未経験者や投資初心者のみならず、投資経験者を含むすべての消費者に簡単にご利用いただける」とします。平日21時までリアルタイムで売買が可能としており、ビジネスパーソンの利用も想定しています。

先述のLINE Scoreを活用して、2019年夏には個人向け無担保ローンサービス「LINE Pocket Money」を開始します。ユーザーのスコアに応じて、最適な貸付利率(年率)と利用可能額が決定される仕組み。申し込み、借り入れ、返済までのフローが、アプリ上から即日可能となるサービスモデルを予定しています。

○飲食店がより便利に

LINEのコマースプラットフォームについて説明したのは藤井英雄氏(LINE 執行役員 O2O/コマース事業統括)。提供中の「LINEショッピング」「LINEデリマ」「LINEトラベル」がアップデートされます。

LINEトラベルでは6月27日から「おでかけNOW」を提供開始。これはLINEトラベル内で利用できる検索サービスで、今いる場所に応じて、近くの飲食店やイベント、アクティビティの検索、事前予約を行えます。グルメサイト「OZmall」や「一休.comレストラン」、レジャー総合情報サイト「asoview!(アソビュー)」、「Walker plus」など、複数のグルメ予約、アクティビティ予約サイトと提携しています。

LINEデリマには6月27日から、テイクアウトサービス「LINEポケオ」を追加しました。お店検索・注文・事前決済まで、LINEだけで完結できるという内容。

これまでのプレサービスでは、ガスト、バーミヤン、ジョナサン、松屋、松のや・松乃家・チキン亭に対応してきましたが、新たに中小規模飲食店での対応も開始。テイクアウトシステムを構築しなくても、簡単にテイクアウトサービスを開始できるオーダーシステム「LINEポケオ for biz」の申込受付を開始しています。

なお、松屋の「牛丼並盛り」やジョナサンの「和風てりたまハンバーグ」など、一部メニューが100円で楽しめるキャンペーン「100円ポケオごはん」も、6月27日から期間限定で開催中です。

○動画広告やチラシが出るように

2018年末から、LINEのトークリスト最上部に天気やニュース、災害情報などのコンテンツや広告が表示されるようになりました。池端由基氏(LINE 執行役員 広告ビジネス事業担当)はこのスペースに、新たに動画を配信する予定であると発表しました。リリースは2019年秋の予定です。

トークリストに表示されたバナーをタップすると、画面が拡大して動画で表現されたリッチなコンテンツが再生される仕組み。池端氏は「これまで自宅などで目にしていたTVCMや新商品のリリース情報などを、LINEの中で逃さず視聴できるようになります」と説明します。

LINEでは、LINEアプリや各種ファミリーサービス内で配信する広告のパーソナライズで活用しているデータを、外部サービスでの広告配信にも使えるようしていきたい考え。さらに、外部サービスにおける閲覧・行動履歴データをLINEにフィードバックして、相互に好循環を生み出すことも想定しています。この「LINE Ads Platform for Publisher」は2019年夏に向けて準備中とのこと。

このほか、チラシやDM(ダイレクトメール)をユーザーに配信する「LINEチラシ」を、2019年10月に開始します。配信されたチラシやDMは、LINEのタイムラインやスマートチャネル、LINEウォレットから開く「LINEチラシ」の画面などで確認できるようになります。具体例としては、LINE Beaconを活用し、実際に店舗を訪れたタイミングで、その店舗が実施しているお得な情報のリマインドを受け取れるとのことでした。

●この日、イチバンの驚き

○AIと複雑な会話も可能に!?

最後に、再び舛田淳氏が登壇。AIアシスタント「Clova」がリッチモンドホテルでも採用されたことを紹介しました。ホテル客室内にClova搭載デバイスを設置することで、フロントに電話することなく、近くのコンビニを教えてもらえたり、音声でテレビや照明などの家電操作を行えたりするなど、ホテル、客室内でのユーザー体験をより便利にしていきたい考えです。

また、新たなアプリ「LINEカーナビ」を発表。トヨタが持つクラウドでの高鮮度なビックデータを活用したナビゲーション基盤と、ClovaのボイスUIによる利便性を統合したものです。ドライブをしながら目的地の天気を調べる、音楽を再生する、LINEメッセージを送受信することに加えて、目的地の検索、カーナビゲーションの音声操作が可能になります。2019年9月以降に提供開始予定(無料)。

そしてこの日、イチバンの驚きがあったのは、AIチャットボット技術「LINE BRAIN CHATBOT」などを組み合わせたLINE BRAINプロジェクト「Duet」のデモでしょう。

登壇した舛田氏が、舞台上でAIと複雑な会話を成立させました。シチュエーションは飲食店の予約で、電話口のAIと「何日に」「何人で」「何時ごろ」伺いますと伝えた後で、「やっぱりその日は取りやめて、何日は空いていますか」と聞き直すなど、かなり込み入った内容でした。AIの電子音声による対応は自然で、まるで人間と会話しているような印象を与えました。

LINEでは、AIアシスタントのClovaなどで培ってきた数々のAI技術を、今後は外部企業に向けても展開していきたいとしてます。LINE BRAIN事業として2019年7月より、文字認識技術「LINE BRAIN OCR」、音声認識技術「LINE BRAIN SPEECH TO TEXT」の販売を開始します。デモで披露した、音声認識・チャットボット・音声合成の技術を組み合わせた、電話でのAI自動応答を可能にするサービスも、将来的に販売していきたいとしています。

○検索サービスにも本腰

このほか、統合検索サービス「LINE Search」を2019年7月から順次開始します。LINE上に存在しているあらゆる情報を、ユーザーに最適な形で届けることを目的にしたものです。LINEのトークだけでなく、LINE NEWS、LINEマンガ、LINE MUSICといった各サービスや、LINEが保有するデータベースを統合しての検索が可能となります。さらに、各カテゴリで人気のインフルエンサーの検索にも対応します。

1to1プラットフォーム「LINE ASK me」は2019年9月以降に提供する、弁護士とも相談可能なサービスです。検索して情報を得るだけでなく、そのまま相談や依頼などにつなぐことができます。すでに展開中の1,000人を超える占い師が在籍する「トーク占い」や、様々な専門家が在籍する「トークCARE」に加え、パートナーに弁護士ドットコムを迎え、弁護士と相談できるサービスをスタートするとしています。

飲食店やレジャー施設をレビューしたり検索したりできる「LINE STEP」は、2019年7月にスタート。LINE Searchと連動することで、検索後に、飲食店やお店の予約というアクションにつなげることも予定しています。

キーノートに登壇した慎ジュンホ氏は、WOWがLINEの価値基準であると述べました。社会に大きな変化をもたらすライフスタイルイノベーションを通じて、これからもユーザーに感動を与えていきたいとしています。24時間365日、ユーザーの生活すべてをサポートするライフインフラを目指しているLINEは、Life on LINEの取り組みを通じて、私たちの生活により密着したサービスを展開していきたいとしました。